不動産×ITの活用で遊休不動産の収益化を推進――株式会社アズーム 代表取締役社長 菅田 洋司
株式会社アズーム
証券コード 3496/東証マザーズ
代表取締役社長 菅田 洋司
Youji Sugata
都心のマンションなどで増えつつある空き駐車場。そんな駐車場をはじめとした遊休不動産に着目し、ITを活用してオーナーとユーザーをマッチングしている企業がアズームだ。成長を続ける同社の菅田洋司社長に今後の展望を聞いた。
取材・文/小椋 康志 写真撮影/和田 佳久
駐車場情報をデータベース管理しユーザーのニーズに応える
──御社の事業内容についてお聞かせください。
菅田 収益の大半は月極駐車場に関するビジネスです。大きく2つあり、月極駐車場の仲介をインターネット上で行う紹介サービスと、空き駐車場をオーナー様から一括で借り上げて第三者に転貸するサブリースサービスです。
紹介サービスでは、月極駐車場のポータルサイト「カーパーキング」を運営しています。これまでは月極駐車場のデータベースというものが存在していなかったので、ユーザーが駐車場を探す場合、現地に行き看板を見て電話するという方法がほとんどでした。当社は創業期からデータベースの重要性を認識して積極的に取り組んでおり、サイトから利用者のニーズに合った駐車場を効率的に探すことが可能です。
サブリースサービスですが、都市部では大規模な建築物の駐車施設の附置について、条例などで定めています。こうした附置義務駐車場が全国に300万台分以上ありますが、都内のマンションなどで空きの多い状態が続いています。その借り手がつかない空き駐車場を当社が賃料保証して一括で借り上げて転貸しています。駐車場というのは月単価数万円の事業ですが、新規募集や契約、滞納者への催促、鍵紛失の対応など、非常に煩雑な業務があります。それらも当社ですべて請け負いますので、オーナー様は面倒な管理業務から解放されます。
──サブリース契約後に借り上げ条件を変更したことがないとお聞きしましたが。
菅田 当社はお客様からの問い合わせが累計で30万件を超えており、どのエリアでどういう問い合わせが多いのかを、すべて独自のデータで管理しています。それらを視覚的な情報に落とし込み、引き合いの多いエリアを表示する“駐車場ヒートマップ”というシステムを作りました。紹介サービスでの仲介情報も豊富に保有しており、それぞれのエリアにおける適正な賃料を正確に算定することが可能です。
これまでの不動産事業者は、オーナーサイドに寄っていた傾向があります。しかし、物件を借り上げた後に募集をかけ、想定より借り手が少ないと保証賃料の値下げをお願いしたり、短期間で解約したりと、結局はオーナー様に迷惑を掛けてしまうことがありました。当社はユーザーサイドに寄り添って事業を展開しています。質の高いサービスを提供し、不動産の最終消費者であるユーザーをたくさん確保できているため、借り手をキープしながらサブリース事業を展開できています。ユーザーのニーズを反映したヒートマップを確認して価格交渉をしていますから、結果として当社から借り上げ条件の変更や解約をしたことは一度もありません。このことがオーナー様からの信頼につながっていると思います。
人IT化による効率的な業務運営で月極駐車場のプラットフォーマーへ
──数ある遊休不動産のなかで、駐車場を選んだのはなぜですか?
菅田 当社は創業当時から不動産×ITという不動産テックを展開してきました。住宅の場合ですと、インターネットで検索してこの物件が良いと思っても、内覧しないと決められません。ところが駐車場は、拠点からの距離と賃料がわかれば、現地を見なくても意思決定ができます。つまり、ITとの親和性が高いのです。
現在の主力サービスである「カーパーキング」では、今期の問い合わせ件数が、第3四半期時点で昨年通期の件数を超えました。サイトでの駐車場の掲載件数と問い合わせ件数は連動していて、掲載件数を増やせば問い合わせ件数が増え、受注台数も増えます。これまでは社内で物件を探していましたが、今後はクラウドソーシングを導入していきます。主婦や学生の方にお住まいの地域の情報収集を外注する仕組みを社内で独自に構築しました。人材をゼロから集めるのは大変なので、「シュフティ」というサイトを運営している株式会社うるると提携して、遠隔地の調査を依頼していく計画です。これも不動産とITの融合のひとつです。
──今後の成長イメージについて教えてください。
菅田 データベースが増えれば空きができて困っている物件の情報も増えますので、そこにサブリースの提案をすることによって、ストック型の収益につなげていく考えです。不動産事業においてITを活用し、データベースを重視する運営を行っている会社は今のところ当社だけだと思っています。サブリースの1番の激戦区である東京で結果を残せていますので、このやり方を全国の各地方に横展開していく方針です。当社は月極駐車場のプラットフォーマーを目指しています。将来的には当社のサイトを見れば全国の月極駐車場がストレスなく探せる環境を実現したいと考えております。
今回の上場によって調達した資金は、増加する問い合わせに対応する人員とエンジニアの拡充に当てていきます。エンジニアを増員することで、基幹システムをゼロから再構築したいと考えています。日本は人口減のフェーズに入っていますが、仮にGDPが横ばいになろうと遊休不動産をターゲットにしている限り、当社の対象マーケットは拡大し続けます。
今後は空き家や屋外広告などへも事業領域を拡大し、遊休不動産全般への収益機会を拡大していく方針です。投資家の皆様が納得するような利益を出しながら、事業に必要な投資資金を確保していきたいと考えております。