年収300万円台の会社員が年間配当収入800万円超でFIREを実現。自称「株コレクター」が資産を築けた理由

20歳から株式投資を続けてきたRicky氏は、投資歴も30年を超え、現在は年間800万円超の配当収入を得て夢のFIREを実現している。しかし、元々は年収300万円台の会社員であり、短期売買で思うように資産を増やせなかった苦しいときを経て、「増配が期待できる株を買ったら、基本的に売らない」という独自の投資スタイルに辿り着いたという。自身を「株トレーダー」ではなく「株コレクター」と称する同氏が、なぜ「売らない」ことを選んだのか――。長年にわたる投資経験から見えてきた、増配株を長く持ち続けることのメリットを深掘りした。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人
16時間労働のなかで強まった「不労収入を得たい」という思い
――Rickyさんは、年収300万円台の会社員だったときに株式投資をはじめ、現在は配当金によるFIRE生活を送られています。投資をはじめてから現在に至るまでの歩みを教えてください。
Ricky:投資に興味を持ったのは、周囲と比べるとかなり早かったと思います。小学生の頃、母がつくってくれた銀行口座にお年玉を定期預金していたのですが、当時はバブル前の高金利の時代です。1年〜2年後に通帳記入をしたら、びっくりするほど利息がついていた。「働いて稼ぐ以外にも、お金を増やす方法があるんだな」と、10歳くらいだったわたしは感動したのです。
それで、大学2年生の20歳のときには証券口座をつくり、株式投資をスタート。ただ、当時は「株は安く買って高く売るもの」と考えていました。証券会社の担当者にすすめられるまま頻繁に売買していたわけですが、当時はアジア通貨危機などもあって相場環境はあまりよくなく、資産が大きく増えたという記憶はありません。
その後、就職氷河期のなかで中小企業の貿易商社になんとか滑り込み、何度か転職も経験しました。転職先が倒産したこともありますし、若い頃は仕事についても、なかなか恵まれなかったですね。
なかでも強烈だったのが、創業間もない頃の某大手総合ディスカウントストアに勤めていた時期です。投資家として見たときに「この会社は伸びそうだな」と思って入社したのですが、従業員としては過酷そのものでした。勤務時間は1日16時間くらいで月の休みは2日ほど……。結局、心身の調子を崩して辞めることになりました。
そんな状況でしたから、株式投資自体は続けていたものの、当時は売買する時間もありませんでした。結果として、買った株を長く持ち続けるかたちになった。資産はそれほど増えませんでしたが、「働かなくても収入が入ってきたらいいな」という思いは、そうした苦しい会社員生活を経験するなかで少しずつ大きくなっていったのです。
――その後は台湾で日本語教師をされることになったそうですね。
Ricky:体を壊して仕事を辞めたあと、学生時代から好きだった台湾へ旅行しました。「ここで働けたらいいな」と思って、日本語塾にアポなしで「教員を募集していますか?」と聞きに行ったのです。たまたま枠が空いていて、そこで働けることになりました。
台湾での日本語教師の仕事は本当に楽しくて、「ずっとこの仕事を続けたい」と思っていました。ただ、現地で結婚し、子どもが生まれたことをきっかけに日本へ帰国することになります。その後は通訳や翻訳の仕事をしていたのですが、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災で仕事が激減……。家族も増えていたので、最終的には、多少なりとも言語能力を活かせる老舗のシティホテルに就職しました。
でも、そこも決して楽な仕事ではなかったですね。当時はもう30代後半でしたが、当然ながら新人ですし、上下関係も厳しい。夜勤もあって、体調も崩しがちでした。「この仕事を定年まで続けるのは無理だな……」と思ったのです。
そこで、あらためて「株式投資で生きていきたい」という気持ちが強くなりました。ちょうど日本企業の株主還元や増配が加速していく時期とも重なり、わたし自身も配当金を増やすことに本腰を入れるようになったのです。
売買が苦手だったからこそ辿り着いた「株コレクター」という投資法
――そこから、現在の「株コレクター」という投資スタイルに辿り着いたということでしょうか。
Ricky:そうなのですが、最初から現在のような投資法を確立していたわけではありません。台湾で暮らしていた2000年代初頭には、ネットで投資情報を調べるなかで「バリュー株投資」を知り、短期的な売買から、割安な株を比較的長く持つスタイルへ少しずつ移行していきました。
そうなった大きな理由は、自分にはトレードが向いていないと気づいたからです。利益が出るとすぐに売りたくなる一方、損失が出ると「いつか戻るかもしれない」と持ち続けてしまう。つまり、利益は小さいうちに確定して、損失はどんどん膨らませてしまうということです。「これはおそらく性格的なものだから、簡単には治らないだろうな」と思っていました。
そこで考えたのが、自分の苦手なことを無理に克服しようとするより、そもそも売買をしない投資をすればいいのではないかということです。基本のトレードは「買う」と「売る」がセットですが、わたしの場合は増配が期待できる株を買ったら、基本的に売らない。株をコレクションするように少しずつ増やしていくのです。
――株をコレクションする、まさしく「株コレクター」ですね。
Ricky:もちろん、絶対に売らないわけではありません。大きな不祥事があったり、TOBがあったりすれば売却することもあります。ただ、それ以外は基本的に保有し続けます。
一般的なバリュー株投資では、株価が割高になったら売却し、別の割安株へ乗り換える方法もあります。でも、それすらやりません。わたしの場合、「この株は高くなったから売ろう」ということをはじめると、むかしのトレーダーとしての悪い癖、つまり利益が小さいうちに確定して損失は膨らませてしまうという癖がまた出てきそうだったからです。
実際、株の乗り換えは非常に難しいものです。「割高だから」と売った株がさらに上昇することもあるし、「こっちのほうがよさそうだ」と乗り換えた先の株が伸びないことも珍しくありません。そうであれば、買った株は売れないものだと考えて、ひたすら保有し続ければいい。そのほうが自分には合っていました。これが、わたしのいう「株コレクター」です。
「売らない」と決めることで増配の力を丸ごと味方にする
――「株コレクター」という考え方の最大のポイントは、やはり「売らない」ことでしょうか。
Ricky:そうなりますね。わたしの場合、売買益ではなく、配当金を増やすことが投資の目的です。もちろん、株を売って利益を得る投資が悪いというわけではありません。むしろ、それこそが株式投資の王道だと思います。ただ、売買益を継続的に得るには、やはりある程度の才能や適性も必要だと感じています。
一方、配当金は、株を保有していれば企業から受け取れる収入です。増配を続ける企業の株を持ち続ければ、例えば買ったときには1株あたり年間25円だった配当が、数年後には30円、50円、さらにそれ以上になっている可能性も十分にあり得ます。
実際、日本株は長期的な増配の流れが続いています。わたし自身、銘柄選びの能力が特別に優れているから配当金を増やせたとは思っていません。銘柄の選び方も大切ですが、日本企業全体で株主還元を強化する流れがあったことも大きいでしょう。
それでも、その恩恵を受けるには、しっかりと買った株をホールドし続けなければなりません。要するに、「握力」が必要なのです。含み益が出ると、どうしても「いったん売って利益を確定したい」と思いますよね? でも、増配を続けている企業の場合、売却後に安く買い戻すのは簡単ではありません。増配によって配当利回りが株価を下支えすることもありますし、企業の成長や増配への期待から株価そのものが上昇してしまうこともあるからです。
投資家仲間と話していても、「あのとき売らなければよかった」という話は本当によく聞きます。一方、「あのとき売って本当によかった」という話はあまり聞かないのです。わたし自身も、売ってよかったケースより、売らずに持ち続けてよかったと思えるケースのほうが圧倒的に多かった。だから、「売らない」と決めたのです。
FIREを実行するための目標も、総資産額ではなく、年間の受取配当額で設定していました。資産額は株価によって大きく変動しますが、配当金を増やすことを目標にすれば、売却することは自分の目標から遠ざかる行為になります。わたしの場合、「配当金を年間800万円まで増やしたら仕事を辞める」と決めていました。目標が明確だったからこそ、途中で株価が上がったからといって簡単に売らずに済んだのだと振り返ることができます。
暴落時こそ配当金に目を向けてメンタルを保つ
――しかし、株価が大きく下がる暴落時には、不安になって売りたくなる人も少なくないと思います。
Ricky:暴落は、本当にメンタルを削られるものです。わたしも30年間投資を続けるなかで、何度も大きな下落を経験してきました。リーマンショック、チャイナショック、ブレグジット、トランプ政権発足時のショック……そしてコロナショックなどです。
ただ、資産額と配当金は必ずしも同じようには減りません。例えば、コロナショックのときには資産額は大きく減少しましたが、受取配当金の減少幅はそれほど大きくありませんでした。もちろん減配した企業もありましたが、株価の下落ほど配当金は大きく動かなかったのです。
ですから、暴落時こそ資産額ではなく、配当金に意識を向けるようにしています。株価が下がって資産が減ると、どうしてもつらくなる。でも、そこで増配が期待できる企業を買い増せば、「資産は減ったけれど、今日の買いつけによって年間の受取配当は増えた」と考えを変えることができます。
――暴落時に買い増すことには、資産形成という意味だけでなく、メンタルを支える効果もあるということですね。
Ricky:そのためには平時から資金を準備しておく必要があります。株価が上昇しているときに資金の多くを投じるのではなく、ふだんは打診買い程度にとどめておき、暴落時に大きく買えるよう現金を確保しておくのです。
大きな下落局面で買った株は、配当利回りがかなり高くなっているものも少なくありません。だからわたしは、「平時は無理に大きく買わない」「大きく下げたときに買う」という考え方を基本にしています。
そう言葉にすると簡単なのですが、株価が暴落しているときに売らないことは簡単ではありません。資産額だけを見ていると不安が大きくなるので、「配当金はどうなっているか」「この買いつけで将来の配当収入はいくら増えるのか」という別の基準を持つことをおすすめします。
トレードの才能がなくても資産形成はできる
――現在は見事に目標を達成してFIRE生活を送られています。あらためて感じる、配当収入の強みとはどのようなものでしょうか。
Ricky:やはり、安定性ではないでしょうか。世の中では、短期間で大きな利益を挙げた投資家の話が注目されやすいものです。実際、トレードで大きく成功している人もたくさんいますし、そうした投資にはドラマがありますから、魅力的に映るのも当然なのでしょう。
ただ、わたしはそういった投資家の本を読んで、「これは自分には真似できないな」と思うことも多いのです。本人にとってはあたりまえにできていることでも、他の人にとっては難しい場合がほとんどです。集中投資や信用取引、相場の流れを読んだ売買などには、やはり向き不向きがあるでしょう。
一方、わたしの投資法は、その対極にあるものです。企業を調べて株を選ぶ必要はありますが、買ったあとは基本的に持ち続けるだけ。トレードが苦手でも、資産形成を目指すことはできるのです。
とはいえ、この投資法には時間がかかるというデメリットもあります。わたし自身、FIREまでには株式投資をはじめてから30年近く、バリュー株を意識するようになってからでも20年以上かかっています。そう考えると、なかなか長期的な戦略です。高収入の人ならより多くの資金を投資に回すこともできるわけですが、それほど収入が高くなかったわたしのような場合、これが現実といえます。
――一部の高収入の人以外の一般的な人の場合、やはり長く握り続けることが最大のポイントになりそうです。
Ricky:増配株投資は長く続けるほど力を発揮します。例えば、1株あたりの年間配当が25円の銘柄が、毎年12%のペースで増配するとします。増配したといっても、翌年の1株あたりの年間配当は28円程度。1年だけを見れば、「たった3円増えただけ」と感じるかもしれません。でも、その増配が10年続けば、配当は約3倍になる可能性を秘めています。
増配の力は最初こそ地味なものですが、時間が経つほどその威力は増していきます。ですから、若い人にこそぜひ実践してほしい投資法だと思っています。トレードの才能がなくても、株をコレクションするように少しずつ増やしながら、配当金を育てていくことは誰にだってできるのです。
Rickyさんの書籍のご紹介
Ricky(りっきー)
1976年生まれ、東京都出身。1996年、大学2年の20歳のときに投資をスタート。割安・増配・財務良好な日本株を中心に投資を続け、2023年に配当金生活FIREを達成。買った株は決して売らない「株コレクター」として知られる。暴落時には「大人買い」を信条とし、長期的視点で資産を築く。妻と2人の息子と暮らす。2026年、著書『年収300万円から年配当804万円をもらう「激・増配株」投資入門』(KADOKAWA)を出版。Xでは「Ricky投資研究所」として情報発信中。

