確立した収益基盤をもとに、新たな成長領域を創出し、着実に企業価値を向上させていきます。(テクマトリックス株式会社 代表取締役社長 最高執行役員 矢井 隆晴)
テクマトリックス株式会社
証券コード3762/東証プライム
代表取締役社長 最高執行役員
矢井 隆晴
お伝えしたいこと
1.社長就任1年目は、業績面では過去最高を更新し、幸先の良いスタートを切ることができました。
2.当社の強みである「目利き力」と「業務ノウハウ」に対する確信を更に深めた1年となりました。
3.将来を見据え、海外M&Aを含む各事業の基盤強化を推進しました。
4.サステナビリティ情報の開示に取り組み、「FTSE Blossom Japan SectorRelative Index」に選定されました。
5.ストック型収益の積み上げと成長分野への戦略的投資を通じ、エコシステムの循環を加速させています。
6.AIの活用を含め、医療、教育、CRMといった得意分野におけるソリューション領域を更に拡大します。
7.成長機会の大きい海外市場への積極的な展開を図ります。
8.お客様からご評価いただいている「手厚いサポート」を引き続き大切にしていきます。
9.新しいことに挑戦する企業文化を継承し、挑戦意欲の高い人材の育成に注力します。
就任1年目は過去最高業績を更新するなど、幸先の良いスタートを切ることができました
社長就任1年目を振り返りますと、様々な方に支えていただきながら、何とか幸先の良いスタートを切れたのではないかと感じています。特に業績面では23期連続増収とともに過去最高業績を更新することができ、あらためて当社の強みである「目利き力」や「業務ノウハウ」に確信が持てた1年でもありました。また、大型の海外M&Aをはじめ、各事業の基盤強化に向けた投資でも一定の成果を残すことができました。
まず、2025年3月期業績のポイントから申し上げますと、情報基盤事業が好調に推移し、全社業績の伸びを牽引しました。旺盛なサイバーセキュリティ対策ニーズをしっかりと取り込めたことに加え、ストック比率が80%を超え、積み上げ型の収益構造となっていることも、増収増益基調を継続できた要因と言えます。
一方、アプリケーション・サービス事業並びに医療システム事業については、利益面で計画を下回る結果となりました。アプリケーション・サービス事業は教育分野(EdTech)における減損処理、医療システム事業については積極的な開発投資に伴う費用増が主因です。ただ、ビジネスの立ち上げ期にある教育分野については、公立校への校務支援システム「ツムギノ」の導入が計画よりも遅れてはいるものの、2024年12月に締結したベネッセコーポレーション(以下、ベネッセ)との業務提携は今後に向けて大きな前進となりました。「ツムギノ」がベネッセの高等学校(中高一貫校含む)向けに提供する「ベネッセ校務クラウド」として正式採用され、2025年4月より提供が開始されています。医療システム事業についても、主力の医用画像管理システム(PACS)のクラウドシフトや医療情報クラウドサービス・PHRアプリ「NOBORI」の普及に向けた活動など、将来の成長に向けた投資を実施できました。
したがって、全体を俯瞰して捉えれば、足元好調な情報基盤事業で稼いだ収益を、社会課題の大きい医療分野や教育分野などへ戦略投入し、将来の収益の柱を育てるエコシステム(資金循環)が順調に回っていると考えています。
強みを活かしたソリューション提供
活動面での成果に目を向けると、当社の強みである「目利き力」を発揮し、情報基盤事業において優れた新商材を継続して発掘する体制を整えることができました。これまではビジネスを進めながら属人的に行っていたところもありましたが、組織的に新商材を探し出し、評価して提供するといったR&Dのようなやり方を導入し、それがうまく機能し始めました。
生成AIの活用についても新たなソリューションを提供することができました。当社はコンタクトセンターの業務効率化と顧客体験向上を支援するソリューションを提供しています。コンタクトセンターはお客様からの多くの問い合わせに対して効率よく迅速に対応しなければなりません。2025年1月に発表した生成AI機能の搭載により、対応履歴を自動的に分類・保存するとともに、問い合わせに対して該当するFAQを導き出す機能も充実し、オペレーターや管理者の負担を大幅に軽減することが可能となりました。特定分野で蓄積してきた「業務ノウハウ」に強みを持ち、多くのデータを扱ってきた当社だからこそ、AIを業務のどこにどう適用すると業務効率化につながるかを的確に理解していることが、当社の強みであると考えています。生成AIの活用はまだ緒についたばかりですが、ポテンシャルが大きい医療分野でも既に成果を上げており、業務プロセスに革新的な変化をもたらしています。この強みにより、当社のソリューション提供によるビジネスの質・量ともに大きく広げていくことができると信じています。
海外M&AやESGインデックスの採用にも成果
2024年11月にマレーシアの大手サイバーセキュリティ会社であるFirmus Sdn.Bhd.(以下、Firmus社)をM&Aし、約50億円で完全子会社化しました。当社にとっては過去最大規模の投資となります。「海外での事業拡大」は中期経営計画の重要戦略のひとつに掲げており、情報基盤事業においても、将来の国内ICT市場の成熟化を見据え、経済成長の著しいASEAN市場を中心にパートナーを探していました。Firmus社は大手金融機関をはじめとする有力な顧客基盤を持ち、ペネトレーションテストをはじめとする自社開発のセキュリティサービスに強みがあります。Firmus社に当社の強みである最先端テクノロジーの発掘及び販売するノウハウ、すなわち「目利き力」を導入することによりASEANでの事業拡大を図る一方、当社のお客様に対してはFirmus社のセキュリティサービスを提供することにより、強固な補完関係に基づくシナジー創出が可能であると判断しました。加えて、Firmus社はシンガポールに子会社を有するほか、他のASEAN地域への展開にも地の利がありますので、海外戦略を進めるにあたってのハブのような役割にも期待を持っています。すでに当社のサイバーセキュリティの事業で経験を有する人材を現地に派遣しており、人材交流を含めて、連携に向けた動きを進めています。
持続可能な社会の実現に向けたサステナビリティへの対応についても、これまでの取り組みや情報開示が評価され、ESG投資の代表的なインデックスである「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に選定されました。社会課題の解決は当社事業の原点であることから、今後も社会価値の創出を通じた企業価値向上を目指していきます。
Firmus社の完全子会社化について
Firmus Sdn. Bhd. の株式取得 (子会社化) に関するお知らせ
社内外に向けた発信力の強化が課題
一方、課題として認識したところもいくつかあります。特に強く感じたのは、社内外への発信がまだ足りていないのではないかということです。当社では、社員向けにエンゲージメントサーベイを実施し、企業理念や行動指針などに対する浸透度を測定しています。それによると、認知や共感は高いものの、実践になると比較的低い結果となっています。要するにスローガンとして認知・評価されているものの、各社員が自分ごと化して、日々の業務の中に落とし込めていないということです。その原因はどこにあるのか。社長である私の発信力がまだ十分ではないという考えに至りました。
例えば、企業理念である「より良い未来を創造するITのプロフェッショナル集団」とは一体何か、という問いにどう答えていくかということだと思います。全社的なビジョンや目指す姿の話になると、どうしても抽象度が上がってしまうのは仕方がない部分もありますが、各事業部に展開するときに、事業部の責任者とともにもう少しかみ砕いて浸透させていく努力や工夫が必要なのではないかと反省しています。また、社外に対する発信においても、企業認知やブランディングの観点から十分とは言えません。IR活動を含めて、当社事業の価値観や特徴、目指す姿などをもっとプロアクティブに伝えていきたいと考えています。
人材の確保も大きな課題です。新卒採用のほうは概ね計画どおりに進んでいますが、今後の事業拡大に向けてまだ十分とは言えません。社外への発信力にもつながる話となりますが、新しいことに挑戦する当社の企業文化や成長機会を知っていただき、キャリア採用を含めて意欲のある人材を確保していきたいと考えています。
また、IT技術者向けの教育を手掛けるグループ会社との連携や独自の研修プログラム、リスキリングの仕組み、海外派遣などを通じて新しいことに挑戦したい人材を育てるとともに、エンゲージメントの向上にも努めていく必要があります。
事業間連携においても強化すべき余地があります。当社の事業構造は社名の由来にもなっているように、特定の垂直市場・領域を縦軸、インフラやミドルウェア、アプリケーションなどITテクノロジーのレイヤーを横軸とするマトリックスになっています。例えば、コンタクトセンターや医療、教育など、各市場・領域向けに特化したソリューションを提供していますが、クラウド基盤を利用してサービスを提供している点は共通です。したがって、クラウド基盤はもちろん、当社が取り扱っているアプリケーションのテスト領域やサイバーセキュリティ対策も共通するテクノロジーとしてプラットフォーム化していけば、もっと効率よく事業を展開し、付加価値を提供することが可能になるはずです。サイバーセキュリティ対策が、コンタクトセンターや医療、教育分野など個人情報を扱う市場・領域向けに重要であることは言うまでもなく、すでに情報基盤事業との連携がお客様に対する安心・信頼にもつながっています。今後は更に共通するテクノロジーのプラットフォーム化を進め、事業間連携を強化していきます。
業務ノウハウとテクノロジーの組み合わせにより、ソリューション比率を高めていく
当社はどのような会社を目指していくのか、将来の「ありたい姿」をどう描いているのかについてお話します。まず、事業ポートフォリオの観点からは、自社で創造するソリューションの比率を高めていきます。なぜなら、私たちの生み出す価値の本質はまさにそこにあり、蓄積されていくものだからです。そのためには、特定市場・領域を更に深掘りし、単にシステムを提供するだけでなく、その先の業務や運用の部分もカバーし、事業領域を広げていきたいと考えています。言うまでもなく、AIを含むテクノロジーをいかに活用していくのかがポイントであり、お客様の業務を自動化・効率化も含めた業務ソリューションパッケージとして提供していくことが重要になると考えています。例えば、サイバーセキュリティにおけるテクノロジーを導入していただくにしても、お客様が沢山あがってくるアラートをどう処理するかというセキュリティの運用部分も提供するソリューションとしてカバーしていく。そうすることで、お客様は本業の競争力や自社の付加価値に直接結び付く部分にリソースを集中でき、結果として、当社がお客様のビジネスそのものの成功を支援することになります。お客様のリソースを注力したい業務に最適に配置できることが、本来のDXの第一歩と私は考えています。
したがって、業務ノウハウとテクノロジーの組み合わせがより重要になりますが、その一方で、当社がこれまでお客様からご評価いただいている「手厚いサポート」も大事にしていきたいと考えています。お客様に寄り添えばこそ得られる知見や気づきがありますし、何よりもお客様との信頼関係を築くことにつながります。お客様にご導入いただいたソリューションがお客様のお役に立つことが、当社の価値提供そのものだと考えています。
新たな成長の軸ということでは、海外展開とM&Aを加速していきます。海外事業はこれまでCRM事業で先行し、タイの現地法人を軸に営業力を強化してきました。今回のFirmus社とのM&Aをトリガーとし、ASEAN市場を中心とした海外での事業展開を進めてまいります。
M&Aの目的は、課題となっている人材確保をはじめ、当社の持つソリューションを補完する新たなテクノロジーの獲得、(旧)PSP株式会社と(旧)株式会社NOBORIとの合併(2022年4月)のような水平統合による規模の拡大、海外における事業基盤の拡充などが挙げられますが、M&Aの対象企業と当社が強固な補完関係を構築し、シナジー効果の最大化を図れることが、今後もM&Aをする際の重要なポイントになると考えています。
社会課題の解決を通じて企業価値向上を目指す
中期経営計画の2年目は、まさに事業ポートフォリオの「ありたい姿」に向けた先行投資期間に位置付けられます。したがって、医療システム事業を中心に先行費用を積極投入する計画となっていますが、需要が拡大している情報基盤事業の伸びが想定以上であるため、初年度終了時点で上方修正することとしました。
ただ、我々の目線はその先に向けられています。先ほどお話したようにソリューション比率を高めることで、社会課題の解決に貢献するとともに、トップラインの拡大と収益性の改善の両方を目指していきます。また、収益を拡大することで、株主様への還元も積極的に取り組みます。これからも長期的な目線で当社の進化する姿にご期待いただきたく、よろしくお願いします。
「ありたい姿」の実現に向けた課題認識
1.社内外への発信力の強化
2.人材の確保及び育成、エンゲージメント向上
3.ソリューション比率の向上と事業間連携による付加価値の提供
※本記事は、「テクマトリックス株式会社 統合報告書 2025」より転載しております。
