「金融をコアとする総合サービスグループ」として、ムーンショット目標のさらにその先を見据えた挑戦を重ね、沖縄の未来を切り拓く(株式会社おきなわフィナンシャルグループ 代表取締役社長 山城 正保)
株式会社おきなわフィナンシャルグループ
証券コード 7350/東証プライム
代表取締役社長
山城 正保
当社グループを取り巻く事業環境
沖縄は豊かな自然、独自の文化、そして地理的な優位性を持つ地域であり、将来性に溢れています。特に、現在進行中の「GW2050 PROJECTS※1」は、沖縄の未来を大きく変える可能性を秘めています。この計画では、2050年度までに名目県内総生産を現在の約2.2倍となる11兆円程度に引き上げることを目指しており、観光関連産業をはじめとする地域経済の活性化が期待されています。さらに、返還予定の米軍基地800ヘクタールを活用することで、新たな産業基盤を構築し、県民所得を約2.5倍にするという目標が掲げられています。
その反面で、沖縄が抱える課題も見過ごすことはできません。人口が減少に転じる中で、貧困問題が依然として深刻であり、全国的に見てもワーストの状況から早期脱却を図る必要があります。また、離島地域は、人口減少や高齢化、経済基盤の脆弱性など、多岐にわたる課題を抱えています。
当社グループ(以下、OFG)は、「GW2050 PROJECTS」という壮大なビジョンがもたらす成長の波に乗りつつも、その影に潜む社会課題から目を背けることなく、金融をコアとする総合サービスグループの総力を結集してこれらの課題解決に貢献します。
※1 那覇市、浦添市、宜野湾市、沖縄県内の主要企業が中心となって2024年8月に発足したプロジェクト。「那覇空港の機能拡張と、3市の基地跡地開発を2050年までの25年間で一体的に実施し、国際競争力を高める」ことを目指している。詳細はhttps://www.gw2050.okinawa/
沖縄の成長をともに創るOFGの挑戦
OFGは2024年4月にスタートした第2次中期経営計画で「ムーンショット目標」の達成を目指し、重要課題(マテリアリティ)の解決と経営理念「地域密着・地域貢献」の実現に取り組んでいます。
私の経営者としての信念は、「挑戦を是とする」姿勢にあります。1982年の沖縄銀行入行以来、数々の困難を経験しました。特にバブル経済が崩壊した1990年代は、資金需要の急激な縮小や不良債権の増加、沖縄県経済の深刻な不況に直面しました。経済の混乱により、お客さまである企業が次々と倒れる中、眠れない日々を過ごしたことを鮮明に覚えています。この未曾有の危機を通じて、経営の厳しさを痛感するとともに、短期的な利益だけを追求するのではなく、先を見越して行動することが、危機を回避し、未来を切り拓く鍵であると学びました。この教訓は、現在の経営判断においても重要な指針となっています。
例えば、中小企業の事業承継支援や再生可能エネルギーへの投融資といった取組みは、単に目の前の課題を解決するだけでなく、持続可能な社会の実現という長期的な目標を見据えたものです。また、私はこれまで、貧困問題の根本的な原因の一つである金融リテラシーの低さに、特に強い課題意識を抱いてきました。どんなに経済的な支援策が講じられても、お金との向き合い方や未来への貯蓄、投資の知識が不足していれば、その効果は限定的になってしまいます。この課題を解決するため、OFGでは金融経済教育の充実を目指し、J-FLEC(金融経済教育推進機構)と共催で「第2回金融経済教育シンポジウム」を開催するなど、年間を通じて多くの教育活動を展開し、「安定的な資産形成」の浸透を支援しています。
これらの活動は、地域社会の未来を形づくる挑戦であり、沖縄という地域の発展に寄与する重要な役割を果たしています。OFGは、沖縄の未来の共創パートナーとして、金融の枠を超えた新たなサービスや価値を提供することを使命としています。社会課題の解決に向けた具体的な行動を起こし続けることこそが、私たちの存在意義を確かなものにしていると信じています。
持株会社移行後の成果と課題
2021年10月に持株会社へ移行したOFGは、「グループシナジーの発揮」と「グループガバナンス強化」を主目的に掲げ、着実に成果を積み上げてきました。「グループガバナンスの強化」に関しては、「OFG情報交換会※2」や「グループ経営戦略会議※3」の開催によって、課題認識を共有し円滑な意思疎通を図ることでグループ全体の方向性を一致させています。同時に、グループ全体の重要事項がグループ各社の視点も踏まえて議論されるため、より実効性の高い経営判断につながっています。
一方で、「グループシナジーの発揮」に関しては、人的交流の促進やノウハウ共有、連携強化を進めてきたものの、連単倍率を向上させるという目的は未だ果たせていません。その背景には、長年の慣習や成功体験が新たな挑戦や変化への抵抗を生み出し、結果として保守的なマインドが組織に停滞感をもたらしているという課題があります。こうした現状を打破するため、戦略的な人員配置や新規事業参入などによる収益源の多様化を図ることでグループシナジーを最大限に発揮し、連単倍率の向上、ひいては地域社会の持続的な発展に貢献していきます。
※2 OFG常勤役員とグループ各社社長が参加する情報交換会(週1回開催)。
※3 中期経営計画の進捗状況等を報告/ 議論する会議(各部/ 各社単位で3か月毎に開催)。OFG及び沖縄銀行の常勤役員、各部部長/グループ各社社長等が参加。
第2次中期経営計画の進捗
第2次中期経営計画の進捗は非常に順調であり、1年目を終えた2025年5月には、ムーンショット目標の上方修正を行いました。計画の実現可能性がさらに高まり、OFGの目指す未来が、各種施策の実行によって着実に近づいていることを実感する1年となりました。この1年で特に印象深い出来事として挙げられるのは、10離島町村における地方創生への取組みが評価され、2025年3月に地方創生担当大臣賞を受賞したことです。離島地域は、人口減少や高齢化、経済基盤の脆弱性など、多岐にわたる課題を抱えています。こうした地域の課題に対し、OFGはそれぞれの離島へ行員を派遣し、銀行員としての経験やノウハウを活かしながら、地域の課題解決を支援してきました。実際に離島へ出向した行員たちが地域の課題解決に貢献している姿は、銀行員としての新たな役割を示しています。
また、沖縄電力様や沖縄セルラー様との提携が2年目を迎え、具体的なシナジーを発揮し始めたことも重要な進展として挙げられます。例えば、地域のエネルギー効率化を進めることで環境負荷を軽減しつつ、住民の生活コストを抑える取組みが進行しています。
さらに2025年7月には、後継者不在率が高い沖縄県における事業承継を強化するため、沖縄銀行が株式会社日本M&Aセンターホールディングス様と合弁で「株式会社おきぎんサクセスパートナーズ」を設立いたしました。地域経済の活性化と中小企業の持続的な発展に一層貢献していきます。
地域金融機関としての競争力を高める取組み
OFGは、地域金融機関としての競争力を一層高めるため、顧客満足度の向上、人的資本経営の実践、そしてDX推進に特に注力しています。
● 顧客満足度の向上
沖縄銀行では、「お客さまの資金ニーズへの迅速対応」を最大の差別化戦略と位置づけ、法人営業担当者が融資業務に専念できる環境を整備するため、「エリア分室制度」を導入しています。この制度により、営業担当者は煩雑な事務作業から解放され、より高度な融資業務やお客さま対応に集中できる体制が構築されています。また、集中的なOJTを実施し、実務を通じてスキルを磨く機会を提供しています。さらに、「高度融資人財育成プログラム※4」を通じて、専門性の高い人財を育成し、融資業務の質を向上させる取組みを進めています。
併せて、グループ各社の営業力強化とグループ会社間の連携強化にも注力しています。お客さまに対してワンストップでコンサルティングサービスを提供する体制を整備し、金融サービスの幅を広げています。例えば、融資だけでなく、資産運用や保険、事業承継など、幅広いニーズに対応することで、顧客満足度の向上を図っています。
※4「高度な融資人財」を育成するための体系的な研修・OJTプログラム(2023年度より実施)。
● 人的資本経営の実践
第2次中期経営計画では、ムーンショット目標達成に向けて、経営戦略と人財戦略が連動した「人的資本経営」の各種施策を実施しています。
貸出金利息の増強に向けた法人営業担当者の倍増をはじめ、女性活躍推進については、OFGの未来を形作る重要な施策と位置付けています。女性がリーダーシップを発揮できる環境を整えることで、OFGの持続的な成長を支える基盤を強固にしていきたいと考えています。また、OFGでは、職員が安心して長く働ける職場環境の整備に力を入れています。特に、ワークライフバランスの向上を重視し、その取組みの一環としてESOP信託を導入しました。この仕組みにより、離職率の低下を図るとともに、OFG職員が経済的な効果を株主の皆さまと共有し、オーナーシップに満ちた企業文化を醸成することで、企業価値の持続的な向上を図っていきます。
● 健康経営の推進
OFGが「地域社会の価値向上に全力を尽くし、沖縄の未来を切り拓く存在となる」ためには、グループ会社で働く職員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境作りが重要です。特に職員とその家族の健康は、働きがいやエンゲージメント向上に繋がり、企業の持続的な成長と地域社会の価値向上、さらには県民全体の健康増進にも波及する重要な要素だと考えています。社会的ニーズの多様化に応じた進化・変化を加えながら、地域社会とともに歩む企業グループを目指してまいります。
● DXの推進
OFGはICTを活用したDXによりお客さまの利便性向上を図ることで、新しいCX(カスタマーエクスペリエンス)の実現を目指しています。その競争優位性の一つとして、自社開発力を活かしたアプリ開発が挙げられます。沖縄銀行は1970年代から、行内にシステム部門と技術者を擁し、自前でシステム開発を行ってきた長い伝統を持っています。この「自前主義」により、外部環境の変化に迅速に対応できる柔軟性と、システムの内情を熟知した堅牢な運用を可能にしてきました。クラウド環境の導入に際しても、外部の開発ベンダーの協力を得ながら短期間で開発ノウハウを習得し、現在では自社でクラウド環境を利用したシステム開発を行える体制を確立しています。このような強みを活かし、お客さまの利便性を向上させるアプリケーションの開発を積極的に推進しています。これらの取組みは、システムエンジニアの育成にもつながっています。行内で育成されたエンジニアが、お客さまニーズを的確に反映したシステムやアプリを開発することで、金融サービスの質をさらに高めています。この自社開発力はOFGのDX推進を支え、将来的なビジネスモデルの深化を可能にする重要な基盤となっています。
一方で、デジタル化の進展に伴い、サイバーリスクは当社グループにとって最も重要なリスクの一つとして認識しています。現在、グループ会社間のセキュリティ体制強化を喫緊の課題として捉え、これを解消するための具体的な対策に取り組んでいます。全社的なセキュリティ強化を推進するとともに、リスク管理体制を再構築し、顧客情報やシステムの安全性の確保に努めています。
DX推進は、経営理念の実現に向けた変革のプロセスそのものです。OFGは地域で最もデジタル化が進んでいる総合サービスグループとして、地域のDXもけん引していきます。
後継者育成計画
沖縄の未来を共創していくためには、絶え間ない挑戦が欠かせません。この挑戦のバトンを受け継いでいくために後継者育成計画にも取り組んでいます。グループ指名・報酬諮問委員会で議論を重ねており、理想的な人物像としては、将来を見据えたバックキャスティングの能力、斬新なアイデアを考案する力、周囲からの信頼を得る人間性、そしてリーダーシップを発揮できる資質が挙げられます。
2025年度は、グループ指名・報酬諮問委員会の中で、候補者に関するディスカッションを進めており、その基盤となる部長クラス以上の人財育成についても注力しています。具体的な施策としましては、経営塾を年2回開催しており、経営の本質を学び、実践的なスキルを磨く機会を提供することで、次世代のリーダーとしての成長を促進しています。
ステークホルダーの皆さまへ
私にとって沖縄は、単なる事業のフィールドではありません。沖縄の未来を切り拓くことは、私自身の使命であり、強い思い入れを持っています。この地が抱える課題をOFGが解決し、持続可能な発展を実現することは、地域の人々の生活を豊かにするだけでなく、日本全体の成長にも寄与するものと確信しています。
当社グループにかかわるすべてのステークホルダーに共感していただけるよう、これからもサービスの質の向上や企業価値向上に努めてまいります。これからも格別のご支援、ご愛顧を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
※本記事は、「株式会社おきなわフィナンシャルグループ 統合報告書 2025」より転載しております。
