株式会社第四北越フィナンシャルグループ 信頼されるグループとして 地域の持続的成長に 貢献し続ける
株式会社第四北越フィナンシャルグループ
証券コード 7327/東証プライム
代表取締役社長 殖栗 道郎
はじめに
平素より格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。また、令和6年能登半島地震により被災された皆さまに対しまして、心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。
2017年4月に第四銀行と北越銀行の経営統合に向けて基本合意を締結した当時、統合後の5~6年程度で経営統合コストを収れんさせ、各種のシナジー効果を発現させて到達したい姿として経営陣が強く意識した数字が、連結当期純利益200億円、連結OHR65%台でありました。
それから7年、経営統合からは5年経過した当社の2023年度の連結当期純利益は当初描いた水準を上回る212億円、連結OHRは65.1%となりました。
2023年度は、10月に当社設立5周年、また、11月に第四北越銀行創立150周年という大きな節目の年でありましたが、この節目の年に経営統合決断当初に描いた姿に到達できたことは、当社にとって極めて意義深いことであります。
この結果を導くことができましたのは、株主さまをはじめとするステークホルダーの皆さまからのご支援のもと、経営統合、そして両行の銀行合併を経て、グループ経営体制へ移行するなどの態勢整備をグループ役職員が一丸となって、愚直に計画通りに遂行したこと、同時に企業価値向上に向けてサービスレベルの向上に全力で取り組んできたことの成果と捉えています。しかしながら、私が描いている当社の価値創造ストーリーの道筋における現在地は、ここまではいわば準備期間、ここからいよいよ本領を発揮してさらなる高みを目指すフェーズに入ったところと位置づけています。
今年度スタートさせた「第三次中期経営計画」において引き続き、志を一つに、強い熱意をもって地域・お客さまと当社の輝かしい未来へ挑戦することによって「勇躍」し、その果実をステークホルダーの皆さまに還元してまいります。
経営理念の実践
-地域と当社グループのサステナブルな成長に向けて-
当社の経営理念はサステナブルな価値創造ストーリーの大原則となるものであり、いかなる環境下においても、この経営理念に則った行動を実践していくことが不可欠です。「信頼」なくして人間関係は成り立たず、ましてビジネスの世界ではあらゆる取引が常に「信頼」が大前提となって成立しています。
第四北越銀行では、1873年の創立以来、150年以上にわたり刻々と変化する環境に対応しながら、地域金融機関としての役割・使命を果たすことで、地域の皆さまとの信頼関係を築き、深めながら、地域とともに成長してきました。
この信頼関係を礎に「みなさまの期待に応えるサービスを提供し、地域社会の発展に貢献し続ける」ことが当社の最大の使命、存在意義、つまりは当社のパーパスであり、これから10年、20年経っても、どのような経営環境になろうとも、この使命はいっさい変わることはありません。
そこで、私をはじめとする役員全員は、職員に向けて次のように繰り返し、繰り返し説き続けています。
すなわち「我々は『信頼される金融グループ』であり続けるために、倫理観の醸成と人格形成に努めるとともに、新潟県を代表する金融・情報サービスグループの一員として、地域から寄せられている大きな期待に全力でお応えしていくとの気概と矜持を持って自己研鑽に努め、『変化に果敢に挑戦し、新たな価値を創造』して、当社の使命を果たしていく」、そして「役職員のすべての事業活動は常にこの経営理念に整合的で、経営理念を目指すものでなければならない」という考え方であります。
第三次中期経営計画
当社グループを取り巻く経営環境は、少子高齢化を伴う人口減少が想定を上回るスピードで進行しているほか、生成AIに象徴されるデジタル技術の革新と相まった異業種による金融分野への参入も増加し、業態の垣根を越えた競合が一層激化しています。さらには、脱炭素をはじめとした地球環境への対応が不可逆的な潮流となっているほか、地政学的リスクの顕在化による国際秩序の変容も新たな脅威となっています。加えて、長年続いた我が国のデフレ経済や超低金利政策が転換期を迎えているなど、複雑性や不確実性を増しながら加速度的かつ多面的に変化しています。
こうした経営環境のもと、4月からスタートさせた第三次中期経営計画(以下、新中計)では、取り組む経営課題の視点として、従前からの「財務的課題」に加え、地域社会が抱えるさまざまな課題のうち優先して取り組む「環境・社会課題」を設定し、この2つを当社グループが克服すべき最重要経営課題「ダブルマテリアリティ」といたしました。
「財務的課題」には「収益力の強化」、「生産性の向上」、「健全性の維持・向上」の3点、「環境・社会課題」には「地球環境問題への積極的な取り組み」など、E(Environment:環境)、S(Social:社会)、G(Governance:ガバナンス)の各分野で課題を特定しています。
これらの課題の同時解決に向けて、「グループ総合力の発揮」「生産性向上の追求」「人的資本価値の向上」「リスクマネジメントの深化」の4つの基本戦略に取り組み、あらゆる分野において、「イノベーション加速のメインエンジン」である「TSUBASAアライアンス」や「群馬・第四北越アライアンス」の連携を最大限活用していきます。
施策の検討にあたっては、計画対象期間は3年ですが、長期的視点に立ってサステナビリティ経営を一層深化させるべく、経営理念やガバナンスにはじまり、人的資本、ノウハウ、ブランド、デザイン、顧客・従業員満足度、アライアンスといったさまざまな非財務資本の価値を高め活用していくとの考え方に立って策定しています。
また、「財務的課題」「環境・社会課題」それぞれの課題に対して目標を設定していますが、各目標は相互に因果関係を持っており、これらの目標達成に向けた活動全体がサステナブルな価値創造ストーリーとなります。そしてその集積としての最終結果である連結当期純利益は2026年度に270億円、連結OHRは61%台と一段高いレベルにチャレンジしていきます。
第三次中期経営計画に込めた想い
私は、新中計を「グループ全役職員が志(=経営理念)を一つにし、強い気持ちで変化に挑戦し、勇ましく飛躍するステージ」と位置づけ、「一志勇躍」を新たな合言葉(スローガン)として掲げました。
当社が三大シナジー(合併シナジー、グループシナジー、TSUBASA連携シナジー)の発揮によってこれまで成長してきたことは、全役職員が「一志団結」で努力し続けたことによる大きな成果であります。
しかしながら、冒頭申し上げたとおり、現在の当社は、経営統合、銀行合併を経て、一つの組織体として態勢が整ったところ、いわばようやくスタートラインに立ったところであり、ここから真価を発揮してさらなる高みへ「勇躍」します。
その基本的な方針は次の3点です。
①既存業務をさらに深掘りしていくグループ経営の「深化」と、新しい分野へ挑戦する「探索」の両面から取り組んでいきます。また、②当社グループの強みである非金利収益分野などへ大胆に経営資源を集中させていくほか、③「探索」にあたってはトライ・アンド・エラーを基本に、まずやってみることに重きを置いて、検討に時間をかけ過ぎずに繰り返し「挑戦」し成功を模索していきます。
最重要経営課題の解決に向けて取り組むグループ経営の「深化」と「探索」
私は、この基本方針を終始一貫し、一切ぶれることなく種々の決断を行いながらグループをリードして新中計を貫徹します。
推進態勢としましては、2024年7月にグループの労働生産性向上に向けて私を委員長とする「生産性向上・DX推進委員会」を新たに立ち上げたほか、前中期経営計画からの「サステナビリティ推進委員会」は引き続き私が委員長として、脱炭素をはじめとした地域のサステナビリティに向けた諸施策を推し進めていきます。
このほかにも、後述する「人的資本価値向上」や「地域創生」といった重要テーマに取り組む委員会を組成しているほか、部門や会社をまたいだ組織横断的なプロジェクトを随時に立ち上げてPDCAを実践しています。
これまでの経験から、このような組織横断的な推進体制とすることにより、当社グループが有する金融機能やIT技術、情報マッチング機能や外部ネットワークによるノウハウをコーディネートし、法人・個人のお客さまのライフプランアドバイザーとしてお客さまごとに最適な形で、ワンストップでサービスをご提供していくことが可能になっていくことがわかりました。
同時に、日々サービスレベルの向上を図るとともに、中長期的視点に立ったお客さま本位の業務運営の重要性を組織内に浸透させることによって、既存事業の「深化」を図っています。加えて、新たな推進領域の「探索」に向けて2024年7月に新設した「新事業企画室」や、銀行に設置した、マーケットの拡大と県内経済活性化に資する県内・県外連携の強化を担う「東京営業本部」や、お客さまの海外展開等をご支援する「海外事業戦略室」などの各機能を最大限発揮させて、イノベーションを創出していきます。
この「深化」と「探索」のアプローチは、当社の持続的な成長に向けた鍵となりますので、TSUBASAアライアンスや群馬・第四北越アライアンスの枠組みを最大限活用しながら、取り組みをさらに加速させていきます。
人的資本価値の向上に向けて
当社グループでは、これまでも人材の材を財産の「財」と表現し、人財育成への投資額を毎期継続的に増やしているほか、職員が能力を最大限発揮できる職場環境の整備を進めるなど、人的資本の強化に向けて積極的に取り組んでいます。
人財こそが持続的な価値創造や競争優位を生み出す源泉であり、新中計においてもさらに取り組みを強化していきます。
体制面では、2024年7月に私を委員長とする「人的資本価値向上委員会」を新設し、環境とともに変貌しつつある必要な人財像を明確にしたうえで、グループ全体での人的資本価値を向上させる計画の立案と、当該計画に基づく各種施策の組織横断的なPDCAを実践していきます。このほか、人事企画部を「人的資本戦略部」へ改称するとともに、同部内にグループ全体の人的資本価値の向上に向けた「人的資本戦略室」、人財基盤の多様性のさらなる確保に向けた「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)推進室」、グループ職員の能力開発に向けた「人財育成室」を新設しています。
また、多様性の確保の観点では、2024年6月に当社においてグループ内から初となる女性取締役が誕生しました。女性の取締役については、社内で育成することを第一に候補者の育成に取り組んでおり、銀行では女性の部長や支店長が多数活躍しているほか、グループ会社においても女性の社長や役員が就任しています。経験者採用も積極的に実施しており、証券会社出身者がグループ会社社長に就任するなど、当社グループの人財の多様性は着実に進んでいます。
インフラ整備の面では、「人的資本の可視化」によるタレントマネジメントの実践に向けて銀行に「キャリアサポートシステム」(人財情報基盤システム)を導入し、当社グループ全体での運用に向けて準備を進めています。
このほか、職員のエンゲージメント向上や健康経営・職場環境整備にも継続して取り組み、ES(従業員満足度)とCS(顧客満足度)、そして業績(含、リスク管理)の三面を好循環させる仕事の在り方を研究し、これを実現する仕組みの構築に
も取り組んでいます。
企業価値の向上に向けて
引き続き当社では、PBR(株価純資産倍率)の改善に向けた具体的な取り組みを進めていきます。PBRはROE(自己資本利益率)とPER(株価収益率)の積で表されるため、この2つの要素の向上の観点から企業価値の向上に取り組んでいます。
まず、資本効率を示すROEの向上については、一義的には資本の厚みを維持・向上させつつご説明してきた各種の施策によって収益力を高めることに尽きますが、収益と対になるリスクテイクの適切性を確保していくため、RORA(リスクアセット※1対比収益率)の改善に向けて、RAF(リスクアペタイト・フレームワーク)※2の構築に取り組んでいます。
新中計では、この取り組みをさらに深掘りして、ROEを早期に5%以上に引き上げたうえで、さらに高い水準を目指していきます。
もう一つの要素、将来成長への期待値であるPERの向上に向けては、当社の収益力向上の蓋然性や株主還元水準を高めていく各種の取り組みを正確に理解していただくべく、本誌のような媒体の整備に努め、IRやSR活動等によって広くアナウンスしてまいります。
加えて、人口減少の中でも当社の基盤となる新潟県経済を活性化させ、営業地盤である地域の魅力を高めることもPER向上につながります。
当社は、新潟県を代表する金融・情報サービスグループとして、TSUBASA連携に加え、国内外で築いてきた多くのネットワークなどを活かして、関係者による座組みの構築をリードするなど、エコシステムの黒子役として、観光振興をはじめとする面的な地域創生に全力で挑戦しています。
「地域創生推進委員会」は、当社グループを地域における「ヒト・モノ・カネ・情報」の結節点と位置づけ、新潟県内各地における地域創生プロジェクトに相応の経営資源を投入して地域の課題克服に取り組んでいます。
現在、新潟県内では洋上風力発電事業やリゾート開発などの大型開発プロジェクトが複数計画されています。また、「佐渡島の金山」が新潟県にとって初の世界文化遺産として登録されました。このような特に地域に大きな影響・波及効果を与えうるプロジェクトには、銀行関連部と当社グループ横断的な「人的資本価値強化プロジェクトチーム」が深く関与して、果実の最大化に取り組んでいます。
このほか、行政と連携しながら地域企業のデジタル化を推進する「DX全店運動」や、脱炭素経営の実現をご支援する「GX全店運動」の推進、さらには事業承継や新事業の創造を推進する「エクイティビジネスライン」の新設など、地域全体の生産性向上や付加価値の維持・拡大に向けた活動は当社グループ役職員が最優先すべき重要テーマと捉えて取り組んでいます。
資本政策・株主還元
当社では、2024年5月と7月に、資本・財務戦略の一環として、健全性の維持と収益性のさらなる向上のバランスを勘案しつつ、株主還元の充実により企業価値の向上を図ることを目的に株主還元方針の見直しを行い、「株主還元率は40%を目処としつつ、1株当たりの配当金は原則として累進的とし、配当性向は35%程度を目指す」方針といたしました。この株主還元方針に基づき、昨年度の年間配当金は前期比25円増配の1株当たり145円とし、今年度、2025年3月期はさらに同35円増配となる1株当たり180円(株式分割考慮前)を予定しています。
今後も、収益基盤の強化に向けた内部留保の充実を考慮しつつ、この方針に沿った株主還元を継続していきます。また、政策保有株式については、資本効率のさらなる向上および財務体質の強化を図るため2024年5月に、銀行が保有する政策保有株式を2021年3月末比で、2027年3月末(新中計の最終年度末)までに従前の100億円縮減からさらに100億円縮減し、合計200億円(簿価)縮減する目標へ上方修正しました。引き続き、コーポレートガバナンス・コードの趣旨を踏まえた政策保有株式の縮減を一層進めていきます。
未来にむけて
冒頭申し上げましたとおり、2023年度は、10月に当社設立5周年、また、11月に第四北越銀行創立150周年を迎えることができました。これもひとえにステークホルダーの皆さまのご支援のおかげであり、心より感謝申し上げます。
近年の経営統合・銀行合併の間に体制・意識・行動の三面において変革を進めた結果、当社は環境に適した戦略・戦術の立案と実行、その後の臨機の修正と実行を行うPDCAを確実に推進していく「遂行力」と、全体最適とは何かを明確にしたうえで組織横断的に追求する「組織総合力」、この二つの「力」を着実に高めてまいりました。
引き続き、この二つの「力」の向上に取り組み、合言葉「一志勇躍」のもと、強い気持ちで激しい変化の時代、いわゆるVUCAの時代に挑戦し、地域の発展に貢献し続けてまいります。
ぜひとも、今後の当社グループの活動にご期待ください。
※本記事は、株式会社第四北越フィナンシャルグループ「統合報告2024」より転載しております。