西善寺のコミネカエデ
写真・文 高橋 弘(巨樹写真家)
※この記事は2014年10月25日発行のジャパニーズインベスター83号に掲載されたものです。
西善寺は寛政元(1460)年に開山した長い歴史を持つ寺院で、武甲山のなだらかな裾野の北側に位置し、秩父盆地を見下ろすことのできる清々しい高台にあります。秩父札所の一つとしても知られ、八番の札所として数多くの巡礼者で賑わいを見せていますが、この寺には札所としてよりも、コミネカエデの名木があることで一般には広く知られています。コミネカエデは山門をくぐると目の前に現れ、本堂前の庭いっぱいに枝を広げており、とてもモミジとは思えないような広大な樹冠を誇っています。寺の作りもモミジを優先して建てているかのような作りで、本堂正面にモミジが正対し、四季折々の景色を本堂から眺められるようになっているのも素晴らしい計らいです。
春には新緑に包まれた若草色、梅雨時には全身に纏った苔がしっぽりとした雰囲気を醸し出しており、秋も深まり11月に入ると武甲山から徐々に紅葉が降りてきて、中旬にはコミネカエデも紅色に葉の色を変化させ見頃となります。全身が真っ赤に染まるのではなく、一部に黄色い色づきの葉が混じるため、素晴らしいグラデーションが楽しめるモミジでもあるのです。巡礼者とともに、モミジを観賞する観光客や大勢のカメラマンなどで、一年でもっとも大いに賑わいを見せる時期です。冬には積雪も多い地域ゆえ、特徴ある屈曲した枝に降り積もった雪が見事なモノトーンの世界を演出してくれます。何時間見ていても飽きのこない、本当に素晴らしいモミジの巨木で、まさに関東有数のモミジの名木といえそうです。
所在地 埼玉県秩父市横瀬町横瀬598
幹周 3.8 m
樹高 7.2 m
樹齢 600 年
埼玉県指定天然記念物
【著者プロフィール】
1960年山形県生まれ。巨樹を撮り始めて36年目。出会った巨樹の数は3,400本にのぼり、出版、写真展、ホームページなどにより、巨樹の魅力を発信している。著書に『巨樹・巨木をたずねて』(新日本出版社)などがある。
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