黒俣の大イチョウ

写真・文/高橋 弘(巨樹写真家)
※この記事は2025年10月25日発行のジャパニーズインベスター127号に掲載されたものです。
静岡市葵区黒俣は南アルプスへと連なる山々の麓、静岡でも山間地域のエリアで、地元ではオクシズとも呼ばれる地域です。安倍川の支流である黒俣川の谷に沿って清笹峠へ向かう県道32号線沿い、峠手前最後の集落である黒俣にひときわ大きなイチョウの木が立っています。かなり山奥の集落といった印象ですが、県道32号線が東海自然歩道の一部ともなっており、訪問する人の数は意外と多いのかも知れません。それを証明するかのようにイチョウの傍らにはしっかりとした東屋が整備され、くつろぐことができる小さな空間が整備されています。
イチョウは小さな尾根上に位置し、周囲を遮る物がなく黒俣の集落を見下ろすかのように立っています。四季折々に美しい姿を見せてくれますが、やはりイチョウといえば秋の黄葉が最高の見どころで、12月初旬には息を飲むような素晴らしい黄葉を見ることができます。古い時代に主幹が折損した痕跡があり、その折れた高さ5mほどの所から多数の枝が生長。ほぼ半円形の樹冠を作り出しており、遠方より眺めた際の雄大さは息を飲むことまちがいなしでしょう。
綺麗に色づいたイチョウはやがて葉を落とし、オクシズに冬の訪れを告げることとなります。
【DATA】
静岡県静岡市葵区黒俣字田島沢
幹周/9.24m
樹高/20m
樹齢/推定500年
静岡県指定天然記念物
【著者プロフィール】
1960年山形県生まれ。巨樹を撮り始めて38年目。出会った巨樹の数は3,400本にのぼり、出版、写真展、ホームページなどにより、巨樹の魅力を発信している。著書に『巨樹・巨木をたずねて』(新日本出版社)などがある。
著者ホームページ
