羽黒山の爺杉
写真・文/高橋 弘(巨樹写真家)
※この記事は2025年1月24日発行のジャパニーズインベスター124号に掲載されたものです。
随神門から始まる羽黒山の表参道は、全長約2km、2446段もの石段が続き、その参道の両側には樹齢300~600年といわれる杉並木が続いています。その数は400本以上あるといわれ、昼なお暗い神秘的なスギ並木独特の雰囲気を醸し出しています。表参道全体が国指定特別天然記念物となっており、日本を代表する景観のひとつといっても過言ではないでしょう。杉並木を登り始めて約10分程、ちょうど足もこなれて周囲の景色を見る余裕が出てきた頃、平将門が創建したと伝えられる国宝の五重塔が杉木立の奥に見え隠れします。
その五重塔の手前、まるで五重塔を守るかのような位置にどっしりと根を張っているのが「羽黒山の爺杉」と呼ばれる大スギです。明らかに周囲のスギよりも一回りも二回りも巨大で、重量感豊かな姿で空高く天を突く姿は、見るものに深い感動を与えます。かつては近くにもう一本、婆杉と呼ばれる大きなスギがあり、夫婦杉の大木として羽黒山の神域を護っていたと伝えられています。しかし1902年の台風で一方のスギは倒れてしまい、突然相方を失った悲しみからか爺杉は3日3晩泣きつづけたと語り伝えられています。冬の厳しい自然のまっただ中、静寂の中に凜として立つ大スギに会ってみるのもお勧めです。
【DATA】
山形県鶴岡市羽黒町手向
幹周/8.3m
樹高/48.3m
樹齢/1000年
国指定天然記念物
【著者プロフィール】
1960年山形県生まれ。巨樹を撮り始めて36年目。出会った巨樹の数は3,400本にのぼり、出版、写真展、ホームページなどにより、巨樹の魅力を発信している。著書に『巨樹・巨木をたずねて』(新日本出版社)などがある。
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