千本公孫樹(せんぼんいちょう)
写真・文/高橋 弘(巨樹写真家)
※この記事は2023年10月25日発行のジャパニーズインベスター118号に掲載されたものです。
JR本八幡駅から徒歩数分の所、あたりの喧噪から隔離されたように葛飾八幡の社叢が生い茂っています。社殿に向かって右側にそびえるのが関東でも有数のイチョウの巨樹、千本公孫樹です。このイチョウは雄株で、銀杏は実らせません。
古い時代に受けた落雷のため6mほどの高さで主幹が失われており、折れた主幹を囲むように数え切れないほどの支幹が成長しています。その多数の幹がびっしりと寄り集まり成長する様から、千本公孫樹と呼び親しまれています。幹が寄り添って支えあう姿をしていることから、縁結びの御利益もあると伝えられています。また、このイチョウには白蛇が棲むと伝えられており、その姿を見た者は幸福になれるとの言い伝えもあるのだとか。
古くから全国でも有数のイチョウの巨木として知られ、かつては遮るものがなく遠くからも眺められたそうですが、現在は高層ビルが林立し、遠方からは見られなくなってしまいました。市街地のほぼ中心部にありながら、まったく衰えを見せないこの樹を眺めていると、イチョウの生命力のたくましさが伝わってきます。毎年黄葉の見頃にはライトアップが行われ、大勢の見物客で賑わいます。
【DATA】
千葉県市川市八幡4-2-1 葛飾八幡宮
幹周/12.0m
樹高/20m
樹齢/推定1200年
国指定天然記念物
【著者プロフィール】
1960年山形県生まれ。巨樹を撮り始めて36年目。出会った巨樹の数は3,400本にのぼり、出版、写真展、ホームページなどにより、巨樹の魅力を発信している。著書に『巨樹・巨木をたずねて』(新日本出版社)などがある。
著者ホームページ
バックナンバー