山抱きの大樫
写真・文/高橋 弘(巨樹写真家)
※この記事は2023年1月25日発行のジャパニーズインベスター116号に掲載されたものです。
山抱きの大樫は、JR五日市線終点の武蔵五日市駅より約3km、およそ都内とは思えないような大自然の真っ只中に育つ都内最大のウラジロガシの巨木です。石灰岩からなる痩せ尾根の先端に根を張って立っている様が、山全体を抱えているような印象を与えることから、「山抱きの大樫」と呼ばれるようになったと言われています。
かつては獣道のような踏み跡を行くしかなかったのですが、地元深沢地区の人々の手によって案内板と散策路が整備されたことにより、山抱きの大樫へのアクセスも格段に向上。口コミやインターネット上でも数多く紹介されることとなり、大樫を見に来る訪問客も飛躍的に増加しました。現在では都内でも有数のパワースポットとしても知られ、ハイキングがてらに訪れる人も多いのだとか。
山抱きの大樫が生長する痩せ尾根上にだけ石灰岩が露出しており、何を思ってか、あえてこの過酷な環境の中で生長し、現在見られるような巨木にまで生長したようです。尾根上のため、周囲には生長を邪魔する樹木もなく、自由奔放に伸ばす雄大な枝ぶりは見る者を圧倒します。地元の住民が畏敬の念を持って接してきたことで、伐採からも逃れられたのであろうと思われます。
【DATA】
東京都あきる野市深沢472
幹周/6.5m
樹高/20m
樹齢/300年以上
あきる野市指定天然記念物
【著者プロフィール】
1960年山形県生まれ。巨樹を撮り始めて36年目。出会った巨樹の数は3,400本にのぼり、出版、写真展、ホームページなどにより、巨樹の魅力を発信している。著書に『巨樹・巨木をたずねて』(新日本出版社)などがある。
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