学生が語る企業価値!学生投資連合(USIC)主催「第10回大学生対抗IRプレゼンコンテスト」開催レポート【次世代の眼】

2026年2月13日、日本取引所グループ(JPX)東京証券取引所・東証2階大ホールにて、第10回「大学生対抗IRプレゼンコンテスト」が開催された。主催は学生投資連合(USIC)。全国33大学で構成される、日本最大の金融系学生団体だ。当コンテストは、学生が「企業のIR担当者」になりきり、個人投資家へ向けて上場企業の魅力を13分間でプレゼンする、真剣勝負の舞台である。評価基準は、財務分析や市場評価、株主還元姿勢に加え、企業成長への独自提案など7項目に及ぶ。審査員3名による定量・定性評価を経て、優勝、準優勝、第3位、審査員特別賞が決定される。
トップバッターからラストまで、13分で企業像を立ち上げる
プレゼンテーションの本番は11時にスタートした。トップバッターの中央大学Cチームは、カナミックネットワーク(3939)を担当。「人生を抱きしめるクラウド」を掲げ、超高齢社会における地域包括ケアの重要性を説いた。統合報告書でのストーリー詳細化を提案するなど、実務に近い構成を見せた。
続く慶應義塾大学Bはバリュークリエーション(9238)を取り上げ、解体市場のDX化というニッチな強みを分析。一橋大学はトレイダーズホールディングス(8704)の収益構造を分解し、初心者向けの学習コスト低減を成長戦略として提示した。明治大学Bはイード(6038)の戦略をAI事業と絡めて提案。午前の最後、早稲田大学はデータ・アプリケーション(3848)のEDI事業を寸劇のスタートで再現。社会インフラとしての重要性を体感させる導入から、オルタナティブデータ活用の鋭い分析へとつなげ、会場を沸かせた。
午後は同志社大学がLib Work(1431)の3Dプリンター住宅事業を、中央大学Aは蝶理(8014)の繊維・化学・機械にわたるグローバルニッチ戦略を詳述。その後も明治大学Aのタナベコンサルティンググループ(9644)、東京大学のTAKARA&COMPANY(7921)、愛知工業大学のフェイスネットワーク(3489)と続く。
終盤、慶應義塾大学Aはアドバンスト・メディア(3773)の音声認識技術を、小樽商科大学は和田興産(8931)の地域密着型モデルを、中央大学Bは日本取引所グループ(8697)の市場インフラとしての安定性をプレゼン。最後を締めた横浜国立大学は、クボタ(6326)のグローバル農業機械戦略を、地域別のニーズに即して描き出した。
講評と結果発表──求められるのは「印象」と「努力の裏付け」
審査員の阪本安生氏は全体講評で「プレゼンのレベルが極めて上がっている」と感銘を示した。IRの本質は個人投資家に「買ってもらうこと」であり、聞き手を惹きつける「掴み」の重要性を強調。また、企業訪問を重ねたチームの努力を「フェイス・トゥ・フェイスが大事だ」と高く評価した。
審査結果は以下の通りとなった。
【優勝】中央大学A×蝶理:明治からの沿革を丁寧に紹介し、8回に及ぶ企業訪問で得た深い理解に基づいた、誠実でオーソドックスな構成が勝利を掴んだ。
【準優勝】小樽商科大学×和田興産:動画や「白菜(8931)」の演出によるインパクトに加え、神戸への現地取材という行動力が光った。
【第3位】一橋大学×トレイダーズホールディングス:複雑なビジネスモデルを明快に整理し、リスクの定量的評価も優れていた。
【審査員特別賞】早稲田大学×データ・アプリケーション:寸劇による斬新な導入と、対照的な冷静な分析のバランスが評価された。
やはり「現場」での肌感覚が重要──4大学のコメントより
中央大学Aは「まさかもらえるとは思わなかった。企業と話し、調べた時間は貴重な機会だった」と喜びを語った。「突飛なアイデアは浮かばず、誠実さを前面に出したのが良かった」とも。蝶理の担当者は、「学生の強み・弱みの掴み方が鋭く、次の中期経営計画の参考にしたいほどだ」と最大級の賛辞を送った。
小樽商科大学は、「『神戸』の持つ高級感や存在感を実際に感じたことが大きかった」と面談の成果を語る。「白菜」の語呂合わせも企業から聞いて演出に結び付けたそうだ。
一橋大学は、顧客獲得戦略の具体性に伸び代を指摘されたが、「オーソドックスなスタイルを採ることで、FXへの興味を惹き分かりやすいプレゼンテーションができた」と言う。
早稲田大学は、「まず印象付けることを心掛けた。英語を使ったことで多国籍感も出せた」と語る。また、「EDIでのマネタイズをどう伝えるかについても頭をひねった」とのコメントを寄せた。
各大学で共通していたのが、「現場を訪れて担当者と会うことが重要」ということだ。それによってアイデアが生まれ、データを見ているだけでは掴みきれない肌感覚が新たな企業価値に気付くきっかけとなったようだ。
USIC代表・副代表コメント:運営側に回って見えた「大会の本質」
USIC代表の齋藤映斗氏は、昨年は参加者として壇上に立ったが、今年は運営として全体を俯瞰した。「各大学の努力や配慮を客観的に見られるようになり、視点が変わった」と語る。運営の課題はコミュニケーション管理であり、企業訪問数を採点項目に加えるなど、企業との密接な関わりを重視したという。
副代表の駒尺優一氏は、参加者とは異なる種類の緊張感を感じつつ、「11回以降は現状維持から脱却し、より多種多様な大学と企業の参加を促したい」と、組織の柔軟な変革への意欲を見せた。
『SPOCK』編集長に聞く――学生とIR誌の交差から生まれるパワー
USICが制作・発行している『SPOCK』は、学生に向けた金融・投資情報を掲載しているフリーペーパーだ。「金融とあなたをつなぐ」のキャッチフレーズで、学生目線での投資手法や最新の業界分析、著名人へのインタビューなどのコンテンツが並ぶ。発行は年1回、8,000部を発行し、累計では26万部にも及ぶ。現編集長の根岸理央氏が制作をほぼ1人で担っており、記事はUSIC加盟大学の有志がライターとして参加している。
『Japanese Investor』では、学生との協働に可能性を見る。「学生の視点は企業にとって非常に新鮮。社長インタビューのライティングを任せるなど、実務でのコラボレーションも可能だ」と編集長の伊藤知幸。投資家の声を吸い上げることを重視する本誌にとって、学生の率直な疑問は貴重なコンテンツとなる。SPOCK×Japanese Investor――両者が交差する地点で、次世代の言葉によるIRコミュニケーションが新しいパワーを発揮することを期待したい。
参加大学×企業一覧(登壇順)

