王子ホールディングス株式会社 業績V字回復に向け構造改革を加速 製紙の枠を超え、新たな成長基盤の構築へ
王子ホールディングス株式会社
東証プライム/証券コード 3861
代表取締役 社長執行役員
磯野 裕之
Hiroyuki Isono
1984年、慶應義塾大学経済学部卒。91年、カナダ・マギル大学MBA修了。84年に王子製紙(現・王子ホールディングス)に入社し、グループ経営委員やオセアニアのグループ会社会長
などを経て、2022年4月から現職。
※本記事は127号をご覧になった読者のみなさまから寄せられたご質問にお答えします。
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Q1 製紙会社から大きく事業構造が転換していて驚きました。同業他社に対する御社の強みや成長戦略について、もう少し詳しく教えてください。
「木を使うものには、木を植える義務がある」との思想の下、当社は100年以上前から植林事業に取り組み、国内外に東京都の約3倍にも達する面積の森林資源を保有しています。この再生可能な森林資源こそが当社グループの力の源泉です。国内同業他社に先行して注力してきた海外展開とともに、中長期的視点で取り組んでいる事業ポートフォリオの転換においても、大きな強みを発揮します。
将来的な成長事業の柱の一つに位置付けているのが木質バイオマスビジネスで、森林資源からのアウトプットを、紙だけでなく、糖液やバイオエタノール、さらには医薬品や半導体用バイオマスレジストなどの高付加価値製品に広げていく取組です。現在事業化に向け、開発・実証を進めています。この糖液やエタノールは、環境配慮型のプラスチックやSAF(持続可能な航空燃料)の原材料にも活用されます。また、トウモロコシなどの食料資源を原料としたバイオエタノールとも違い、食料問題と対立することなく安定的に資源を確保できます。
もう一つの成長の柱と見込んでいるサステナブルパッケージ事業では、世界的な環境意識の高まりを背景に需要が拡大している紙素材へのプラスチック代替に注力しており、従来の化石資源由来の使い捨て包装から、環境負荷の低い持続可能な包装資材への転換を進めています。
当社グループはこれら2つの事業への取組をグローバルな規模で加速させる手段として、M&A(企業買収)も積極的に用いています。溶解パルプとバイオエタノールの製造販売を手掛けるオーストリアのオーストロセル社買収や、サステナブル包装資材に特化した加工会社であるフィンランドのワルキ社買収などが具体例で、買収会社とのシナジーを発揮することで、ポートフォリオ転換をより一層加速してまいります。
Q2 4期連続減益で2025年度も業績予想を下方修正していますが、その要因及び今後の展望について教えてください。
ここ数年の業績低迷については、激変する外部環境への対応スピードが不十分であったと真摯に受け止めております。特に世界的なインフレに伴う急激なコストアップに対し、製品価格の修正が後手に回ったことが大きく影響しました。
その上で、今期の下方修正につきましては、トランプ関税の影響による不透明感により、海外での紙・パルプ市況が想定以上に著しく悪化したことに加え、国内での需要動向の変化に伴う数量減少などが影響しています。
こうした状況を踏まえ、足元では印刷・情報用紙や段ボールをはじめとする主力製品の価格修正に力を入れています。また、市況の回復傾向も当社グループに追い風となり、2026年度の業績はV字回復を見込んでいます。
昨年発表した中期経営計画では2027年度に営業利益1200億円、純利益800億円、ROE(自己資本利益率)8%の達成を目標としています。当社グループは、先述した主力製品の修正・市況回復に加え、ニュージーランドの段ボール原紙事業撤退、豪州パッケージング事業売却、国内家庭紙2工場の閉鎖、新聞用紙生産設備1台の停止など構造改革も推進しております。さらに、高付加価値品への転換に注力することで、収益力の強化を図ります。
ROEに関しては、収益力の回復で分子を増やすとともに、分母である自己資本の適正化も進めてまいります。具体的には、政策保有株・賃貸用不動産の売却や株主還元の強化により、資本効率を高めていく方針です。
業績が厳しい中でも当社グループの株価は、1年前と比べ大幅に上昇しています。これは、中期経営計画の発表や株主還元の強化、投資家の皆さまへの発信の強化などを通じて、当社グループの変革に対する強い意志を評価いただいてのことだと受け止めております。こうした高い期待に応えるべく資本効率を重視した経営へのシフトを推し進めるとともに、木質バイオマスビジネスとサステナブルパッケージを中核とする事業ポートフォリオの転換に取り組んでまいります。
これら施策を高く評価いただいている一方で、東証要請のPBR(株価純資産倍率)1倍は依然として達成できておりません。今後もPBRの改善に向け、様々な取り組みに注力する所存です。
Q3 今期、来期以降も36円という配当は維持されるのでしょうか?
当社は長期にわたり安定配当を堅持しており、リーマンショック以降は一度も減配を行っておりません。今期は発表の通り36円の配当を見込んでいます。来期以降の配当は決定しておりませんが、基本的には従来の配当方針を維持する考えです。
Q4 国内社有林の経済価値が年間5500億円に達するとのことで、詳細を教えてください。
当社は林野庁の手法をもとに、国内社有林の経済価値を試算しました。森林は木材原料としての価値に留まらず、適切な維持管理がもたらす土壌保全や水源涵養、生物多様性の保全など多くの公共的価値があり、これらを広く知っていただきたいとの思いもあり経済価値の可視化を進めています。さらに世界の森林保有企業とも協力し、自然資本を経済価値として評価する「自然資本会計」のルール作りにも積極的に参画しております。
【お問い合わせ先】
王子ホールディングス株式会社 広報IR部
〒104-0061
東京都中央区銀座四丁目7番5号
TEL 03-3563-4522
※なお、当該IR広告は2月の取材に基づき作成されたものであり、4月現在の未公表の決算数値を反映したものではありません。
