ダイトロン株式会社 『技術立社として グローバル市場での躍進を目指す!』
ダイトロン株式会社
東証プライム/証券コード :7609
代表取締役社長
土屋 伸介
Shinsuke Tsuchiya
1984年当社入社。2006年ダイトロン,INC.President、2013年当社執行役員 営業副本部長 海外事業推進部長、2018年当社海外事業本部長を経て2019年当社取締役 常務執行役員 就任。2021年より当社代表取締役社長(COO)就任(現任)。2023年より当社最高経営責任者(CEO)就任(現任)。
新中期経営計画「11M」を発表
世界中の優れたエレクトロニクス商品を取扱う商社機能と高収益な自社製品を開発できるメーカー機能を併せ持つダイトロンが第11次中期経営計画「11M」(2024〜26年)を発表した。
前の第10次中期経営計画「10M」では、コロナ禍にも関わらず、最終年度の23年12月期には3期連続過去最高の売上高921億円を達成したほか、ROA(総資産利益率)6.1%、ROE(自己資本利益率)14.5%、自己資本比率だけ目標の50%に届かず43.4%となったが、おおむね目標経営指標を達成し、長期ビジョン「2030VISION」に掲げる連結売上高1000億円が視野に入ってきた。
土屋伸介社長は、「全体的には満足のいく実績が出せた」と10Mを総括し、その主な要因は、国内の電子機器や電子部品の販売が伸びたことにあると言う。人手不足解消のための自動化、5G・6Gといった通信、IoTやAIなど、ここ数年でエレクトロニクスの需要があらゆる産業で広がり、新規の顧客の開拓に成功したことが背景だと語る。
そうした市場環境の中で、24年〜26年の第11次中期経営計画「11M」がスタートし、11Mの大方針として、「グローバル企業を目指すこと」を第一に挙げる。「グローバル市場で成長し、長期ビジョンで掲げる売上高1000億超の企業を目指すと同時に、エレクトロニクス業界の技術立社(技術で立つ会社)として、ハードとソフトのソリューションを展開できる企業にしていきたい」と話す。
11Mでは海外事業と新規事業に重点を置く
土屋社長は、売上高1000億円の維持には、海外事業の強化と新規事業の創出が必要と語る。海外市場については、「11Mの3カ年で、オリジナル製品も含めて電子機器及び部品関連の販売の強化を推進するため、海外営業拠点の拡充を加速させます。特に注力したいのは北米・欧州(EU)地域の強化です。すでに北米は2カ所、EUはオランダに拠点を設けていますが、広範囲な市場をカバーするため、出張所をつくっていきたい。中華圏のうち、中国については拠点ができてきたので、今後は出張所を設けて点から線、線から面へサポート体制を整備していきたい」としている。
中国は成長が鈍化しているといわれるが、「市場規模が大きく、内需は底堅い」と判断している。
北米・EU、中華圏には足がかりをつくったが、まだ空白地帯がある。インドだ。「さらなる成長が期待できるインドには拠点がないので、11Mでは駐在員事務所の設置を検討しています。また東南アジアについては製造拠点を造りたい」(土屋社長)。現時点ではベトナムが候補に挙がっているという。
そして、もう一つの柱である新規事業は、10Mでは目標の5%を超え5.5%を実現した。その原動力がデータセンター向けのUPS(無停電電源装置)事業と付随するメンテナンスなどのサービスだった。11Mで新規事業の比率を10%に引き上げる理由をこう説明する。「新規事業は当社の持続的な成長のために不可欠です。UPS事業に加えて、新規事業の中心に据えたいと考えているのは、ソフトウェア関連です。10Mからプロジェクトチームを組んでマーケティング調査活動を続けて来ました。かなりの情報が蓄積されてきたので、11Mではこれまでの調査から販促へかじを切りたい。画像関連機器やエンベデッドシステムといった既存のハードウェア商品にソフトウェアを組み合わせて提案することで、自動化・省力化、ヒューマンエラー防止といった生産現場で使われるようなソリューションを目指したい」
知財戦略と株主還元強化も11Mの重要課題
技術立社を掲げる同社には、貴重な知財が蓄積されている。そこで11Mでは、「知財戦略を強化していく」(土屋社長)という。コア技術の明確化と同社グループが保有する技術を棚卸して知財管理の基盤を整備し、特許出願・保有件数を中長期的に拡大していく。特許技術を開発したエンジニアに対する人事評価の仕組みも構築する。知財戦略によって社内のモチベーションを高め、外部からの守りを強固にし、最終的には知財から収益を得る形にしたいという。
土屋社長は、自社を応援してくれる個人株主を増やしたいと考え、株主還元にも積極的に取り組んでいる。その一例が11M期間中に配当性向を従来の30%から40%に引き上げるという目標だ。「成長投資とのバランスを取りながら、株主様に対する還元にも取り組んでいきます」
商社機能とメーカー機能を併せ持ち、着実に成長を続ける同社は、高度な知見と技術を強みとして、国内外の多くの顧客に重要な製品を提供している。
その代表例として近年、生成AI等で成長著しい半導体業界との関係性について聞くと、特に半導体製造装置メーカーとの取引が拡大していると言う。省エネ、省電力の世界的な流れの中で、高い電圧や大きな電流を扱うパワー半導体が成長産業として注目されているが、その材料のシリコンカーバイド(SiC)を加工できる装置をオリジナル製品として持っており、世界各国から受注が増えている。
今後も海外市場の開拓が進めば、さらなる成長が期待できるため、新NISAの成長投資枠を活用した投資に向いた企業と言えそうだ。