株式会社グラッドキューブ『圧倒的強みの「解析力」で世界のプラットフォームとなるSaaS企業へ』
株式会社グラッドキューブ
証券コード 9561/東証グロース
代表取締役CEO 金島 弘樹
Hiroki Kaneshima

現在の広告宣伝の世界は、ウェブやSNSが主戦場となっている。ウェブ広告の代理店としては後発でありながら、独自の「解析力」を武器に広告出稿後の分析・改善まで含めたコンサルティングで急成長を遂げてきたグラッドキューブ。同社設立の経緯や主力ビジネスの概要、今後の成長戦略に関して金島弘樹CEOに話を聞いた。
取材・文/大西 洋平 写真撮影/和田 佳久
交通事故を機にオンラインの世界へ
――創業の経緯について教えてください。
かつて私は消費者金融で働いていたのですが、その現場では本当に資金を借りたい人と会社側がお金を貸したい人との間にミスマッチがありました。資金繰りに困って本当に融資を求めている人はすでに財務が悪化しているケースが多いため、会社側としてはお金を貸すことが出来ない。また一方で、働く側の環境も相当にブラックでした。「本当のビジネスの喜びとは、お客様に笑顔になってもらうことなのではないか。お客様にも、働いている人にも喜ばれる仕事がしたい」と考えていたある時、赤信号で停車中に背後から追突されるという交通事故に遭いました。最悪の場合は下半身不随に陥るような大怪我で、入院して車椅子生活を強いられていた時に書籍を通じて知ったのがインターネットです。
ずっとオフラインの世界で生きてきた私は、その日を境にオンラインの世界へ没入し、ひたすらインターネットやその関連ビジネスのことについて学び、2007年1月に合同会社としてグラッドキューブを設立しました。デジタルサービスを通じて、「喜び(glad)」を「カタチ(立方体:cube)」に積み上げていくのだという思いを込めてつけた社名です。
当初はEC系のサイトに出店して物を売るビジネスをしていましたが、物を売るには認知活動やブランディングが必要になってきます。今でこそ動画からSNSまで、幅広いインターネット広告が存在していますが、当時はグーグルやヤフーの検索連動型広告やバナー広告くらいしかない時代でした。そこで、私はそれらを研究し、コンサルティングサービスの提供を開始しました。当時、ウェブ広告の代理店はいくつか登場していましたが、コンサルティングをする人は一人もいませんでした。コンサルティングをしながら自分もさらに学ぶということを繰り返し、Eコマースの会社から広告のコンサル・広告代理店の会社へと転換したのが2011年のことです。
“解析力”を武器に3つの主力事業を展開
――現在展開しているビジネスについて教えてください。
2011年に始めたマーケティングソリューション事業は、現在は検索連動型広告、ディスプレイ広告に加えてSNS広告等の運用型広告の提供を主流とするサービスを手掛けています。大手企業から中小企業まで幅広いクライアントのニーズに対応する広告代理店事業を展開すると同時に、当社の2つ目の柱であるSaaS事業も連携し、包括的な提案ができるのが強みです。
2013年より開始しているSaaS事業では自社開発した『SiTest(サイテスト)』というツールによって、サイトを訪れたユーザーの行動データの収集から解析、さらに改善方法の提示までを一気通貫で実施できるオンリーワンのサービスをお客様に提供しています。
また、SaaS事業で培った解析力をスポーツの分野に活用したメディアサービスがSPAIA事業です。すでに様々なスポーツにおいてデータ解析が積極的に取り入れられていて、トレーニングや対戦相手のリサーチのためにデータ解析が必須となりつつあります。今後はスポーツの観戦においてもデータ解析は欠かせないものとなってくることを見据えて、2016年にスポーツにおけるビッグデータをAIが解析・予想するメディア『SPAIA(スパイア)』を、2019年に特に人気のあった競馬コンテンツをスピンオフした『SPAIA競馬』をローンチしました。
私はこの「解析」というものをものすごく重視していて、社内の事柄でも必ず解析をして、実行して、改善するというサイクルを徹底しています。起業した時からこのサイクルを回して17期目になりますが、徹底的に解析するという文化が根付いていることが、お客様のためになるサービスを生み出す土台となっています。

出所:同社説明資料より
――お話をお聞きすると、ずいぶん“理系的”な考え方をされる印象です。
たしかに理系的と言えば理系的かもしれません。創造したプロダクトに関しては常に柔軟に考えるようにしています。もともと広告代理店の事業を立ち上げた時も、他の代理店を見たことがなかったので、完全にオリジナル・独学でスタートさせました。今振り返ると、「広告はこうあるべき」というようなものがなかったことが逆に良かったのかもしれません。
独学ながらお客様のためになるサービスを突き詰めたことで、当社はグーグル広告の活用による優れた実績を表彰する『Google Premier Partner Awards』において、2017年より5期連続でファイナリストに選出されており、2022年は「見込み顧客の発掘部門」と「オンライン販売部門」で国内第1位を受賞しています。
ネット広告の運用において日本トップクラスの実績を獲得してきたことに加えて、自社開発のSiTestによる改善効果をクライアントの皆様にご満足いただけたことが評価されての受賞と自負しております。こうした客観的な評価に加え、マーケティングソリューション事業とSaaS事業との連携で企画から広告出稿、分析・改善に至るすべてのプロセスをワンストップで提供できることが、他社にはない当社の強みだと考えています。

出所:同社説明資料より
M&Aを通じて業界内での存在感を強める
――今後の成長戦略について教えてください。
ウェブ広告を実施する場合は、必ずその解析をすることになりますが、広告だけ、あるいは解析だけを当社でやっているお客様もまだまだたくさんいます。当社であれば、そうした別々に発注しているサイトの企画から制作、広告そして解析までを一本化できますので、まずは当社の最大の強みである広告と解析の連携を活かした、事業間のクロスセルによるシナジーを最大化させることで、継続的な売上高の成長を追求します。
今後はIPOを通じて獲得した資金を積極的に投入し、アジアを足がかりとするグローバル展開やM&A戦略も推進してまいります。現在、国内のウェブ広告の市場には事業体が約7,000社ありますが、最大手企業が市場規模の4分の1を持っている状況です。M&Aを通じて、内外の同業他社と力を合わせることで業界の強豪とも対等に渡り合える組織にしていかなければならないと考えており、今回上場を決意した狙いのひとつでもあります。
――株主還元についてはどのようにお考えですか?
多くのテック企業は配当を実施していません。そこを右に倣えとするわけでないですが、当面はキャッシュを貯めて投資していく段階だと考えています。まずはしっかりと利益を上げ、時価総額を上げていくことが最優先で、期待していただいている株主の皆様には成長をもって報いたいと思います。