Atlas Technologies株式会社『ペイメント(決済)を中心としたフィンテック領域のコンサルティングを手掛けるオンリーワン企業』
Atlas Technologies株式会社
証券コード 9563/東証グロース
代表取締役社長 山本 浩司
Koji Yamamoto
日本でも急速に進んでいるキャッシュレス化。それに伴ってオンライン上や店舗でのペイメント(決済)を円滑に行うためのフィンテックのニーズが拡大している。この分野のコンサルティング事業で急成長し、設立からわずか4年8カ月でスピード上場を成し遂げたのがAtlas Technologiesだ。同社の山本社長に創業の経緯と事業の強みを聞いた。
取材・文/大西 洋平 写真撮影/和田 佳久
異色の経歴を経てフィンテック特化のコンサルティング会社を起業
――はじめに御社の事業内容についてご説明をお願いします。
当社は決済(ペイメント)関連分野を中心としたフィンテック領域の独立系コンサルティング会社です。クライアントのフィンテック事業の課題解決のため、戦略立案からサービスイン後の事業運営までの各プロセスにおいて、当社のコンサルタントがチームを組成して様々なサービスをご提供しています。
――山本社長の経歴を拝見すると、宇宙に関わる仕事に従事していた期間が長かったようですね。
私は北陸の福井県出身で、地元の高校に通っていた18歳の頃、宇宙をテーマにしたテレビの特番を見て衝撃を受け、「将来は宇宙関連のビジネスで起業したい」と考えました。東京の大学に進学後はJAXA(宇宙航空研究開発機構)の前身であるNASDA(宇宙開発事業団)のサマースクールに参加したり、学生派遣プログラムでアメリカのヒューストンの国際会議に派遣してもらったりしていました。
大学卒業後も「宇宙+起業」をずっとテーマとして持っており、まずは企業経営者の近くで経験してみたいと思い、クレジットカード会社向けのマーケティングを手掛けるスタートアップ企業に入社しました。その後、今度は「宇宙+起業」の宇宙側ということで、日本で唯一、有人宇宙開発を手掛ける民間企業に転職。そこでは宇宙飛行士候補者選抜の設計と運営や、スペースシャトル・国際宇宙ステーションの管制官をやったり、JAXAに出向して産学連携施策をやったりと20代の頃はもっぱら宇宙に関わる仕事に携わってきました。
――そこからフィンテックのコンサルティング会社を起業した経緯を教えてください。
「宇宙+起業」をテーマに20代を過ごしてきたわけですが、30代を迎えて改めて考えた結果、ピボット(路線変更)することにしました。今でこそ民間企業が宇宙の分野に積極的に進出していますし、ベンチャーキャピタルの出資も活発化しています。しかし、当時はまだそういった土壌が培われておらず、アメリカの事例を見ても宇宙関連のビジネスで起業するには、まずは莫大な個人資産がないと難しいのではないかと思ったのです。
宇宙というテーマを一旦あきらめてどの分野で起業しようかと考えたときに、「価値の移動と交換」に関して非常に興味を抱き、ペイメント(決済)という領域に辿り着きました。ファイナンスとテクノロジーの融合を意味するフィンテックという言葉が海外では用いられ始めていたものの、まだ日本ではほとんど聞かれなかった頃のことです。
「フィンテック+起業」を新たなテーマに見定めて、転職先を検討していた際にソフトバンク・ペイメント・サービス(現 SBペイメントサービス)が新たな事業を立ち上げていることを知りました。組織を立ち上げるというフェーズであれば、フィンテックの知識や経験のない自分でもこれまで培ってきたプロジェクトマネジメントのスキルが活かせると考え応募したところ、受け入れていただけました。
当時はまだPayPayができる前の、日本におけるフィンテックの黎明期とも言える時期でしたが、事業企画の人間として様々な新規事業の立ち上げや運営に関わることでノウハウを蓄積し、2018年1月に当社を設立しました。ただ、起業した時点で所有していたのは、SBペイメントサービスに1.5万円で払い下げてもらった中古のノートPC1台と資本金の50万円だけで、社長の私一人だけで切り盛りするという非常に地味なスタートでした。
競合のいない環境で大手企業からの受注を積み重ねる
――現在の規模にまで成長できた理由はどこにあるのでしょうか。
きっかけは、NTTドコモ様のdカードプロジェクトの支援をさせていただく機会を得たことです。創業の数日後に前職時代から旧知の企業から、dカードのプロジェクトについて支援してほしいという話があり、再委託という形で参画し、約10カ月間にわたって全力で取り組みました。その後NTTドコモ様から当社と直接契約を結んでパートナーとしてともに取り組んでいきましょうと声をかけていただきました。
NTTドコモ様という日本を代表する大企業で、フィンテックにも積極的に投資を行っている会社から信頼を獲得できたのを機に優秀な人材が当社に集う一方、他の大手通信キャリアや大手総合商社、国際カードブランドの案件も獲得するという好循環が生じました。
現在、通信キャリアをはじめとして様々な企業が自社のサービスにフィンテックを取り入れる動きが活発化していますが、一方でフィンテック領域のコンサルティングを手掛ける会社は当社以外にほぼいないと言えます。そのため、企業がフィンテックの導入に向けてコンサルティング会社に依頼をする際、サービス品質や実績の伴っている当社が第一想起に入ってくる状況です。直接的に競合する会社が非常に少ないということも、当社が成長してきた大きな要因ではないかと思っています。
――今後の目標について教えてください。
2020年代が終わるまでにアジアでナンバーワンのフィンテック・コンサルティング会社になりたいというのが今描いている目標です。これを実現するため、コンサルタントをはじめとしてまずは優秀なメンバーを採用していくことが必要だと考えています。今回のIPOで約13億円の資金を調達しましたが、そのうち約12億円は人材への投資に積極的に使うつもりです。
当社のコンサルタントは、主にフィンテック関連の事業会社やコンサルティング会社の出身で、多様なバックグラウンドや知見を有しています。今後も、優秀なコンサルタントの数を増やし、新規のクライアントの獲得や既存クライアントとの取引拡大につなげて実績を積み重ねていくことで、事業を継続的に成長させていきたいと考えています。