ジャパニアス株式会社『最先端テクノロジーを身につけたデジタル人材の育成と供給を通じて日本の成長に貢献』
ジャパニアス株式会社
証券コード 9558/東証グロース
代表取締役会長兼社長 西川 三郎
Saburo Nishikawa
現在の日本経済が抱える課題の一つが、DXの推進をはじめとした取り組みにより拡大を続けるデジタル市場に対して、デジタル人材が圧倒的に不足していること。例えば、情報工学系大学の卒業生数は米国や中国、インドに比べて一桁も二桁も少ない。デジタル人材を企業に派遣する事業を展開するジャパニアスは、中途採用によって即戦力を確保するとともに、既存人材のリスキリング、女性の採用強化といった施策によって、日本のデジタル産業に貢献するとともに、持続的な成長を目指している。同社の西川三郎会長兼社長に会社の強みと今後の目標を聞いた。
取材・文/山本 信幸 写真撮影/和田 佳久
国内の大手企業に高い技術力を持つエンジニアを派遣
――ジャパニアスという社名に込めた思いと展開する事業の内容について教えてください。
当社は1999年12月に6名からスタートした会社で、「日本の明日」を考える会社にしたいという思いを込めてジャパニアスという社名にしました。
日本ではデジタル人材の不足が叫ばれておりますが、当社で大量に採用して育成した人材を市場に送り出すことで、人手不足の解消に寄与することを目的に事業を展開しています。
事業の主力となるのが、エンジニアを顧客拠点に派遣するオンサイト型開発支援で、先端テクノロジーを必要とする顧客企業に対して専門性の高い技術を提供しています。そのほか、受注案件を当社拠点で開発する受託開発も行っています。
――どのような領域で技術を提供しているのですか?
顧客企業の約8割が上場企業で、約6割の顧客と5年以上の長期取引があります。創業当初は機械系や電気系が中心でしたが、リーマンショックで製造業が大きく落ち込んだことを受け、「今後、世の中はITに大きくシフトしていくだろう」という予測のもと、当社もソフトウエアやITインフラの領域に舵を切りました。
現在はそれらの既存領域に加え、Salesforce、クラウド、AIという3つの新規領域において、技術力の強化と顧客開拓に注力しています。
中途採用を重視し即戦力となる人材を毎年300人採用
――急速に技術が進歩するIT業界で、最先端の技術を持った人材の採用は簡単ではないように思われます。
現在、当社には約1,300人のエンジニアが在籍しています。岸田政権が“リスキリング(学び直し)”を打ち出していますが、当社でも言葉だけではなく実際にリスキリングを行うことにより顧客の変化に対応していく方針です。例えばJavaのエンジニアにクラウドの知識を学んでもらう、あるいはSalesforceやAIに対応してもらうことで既存の人材を強化し、競争力を高めていきたいと考えており、そのための資格取得のサポートやスキルアップにつながる社内制度を設けています。
また、中途人材の採用力も当社の強みです。創業以来、リファラル採用(社員から友人や知人を紹介してもらう採用方法)によって人を増やして発展してきた経緯があり、現在も新規採用に力を入れる同業他社が多いなかで、当社は毎年300人規模の人材を中途採用しています。リファラル採用を活用し、即戦力の人材が多く入ってくることで、採用と教育にかかるコストを抑えることができています。
――それだけ多くの優秀な人材を獲得できる理由はどこにあるのでしょうか?
理由は4つあると考えています。まず1つ目が、最先端テクノロジーに挑戦できる環境があることです。他社の技術者は、必ずしも自分が任されている技術領域に満足しているわけではありません。そこで、最先端テクノロジーを学びたいエンジニアが当社に応募してくれるのです。
2つ目はスキルに応じた給与体系です。お客さまからいただいた単価に応じた給料をお支払いするという制度を採用しているので、自分の力を発揮したいというエンジニアにとって大きな魅力となります。
3つ目は転勤がないこと。当社も全国に拠点を構えていますが、私は社員を転勤あるいは単身赴任させても何も良いことはないと思っています。社員の金銭的な負担も増えますし、仕事というものはちゃんと家庭があってこそ安定するものです。今はテレワークも可能ですし、ますます転勤の必要性はなくなっています。こうした方針も当社を選ぶ一つのインパクトになっています。
最後に、当社は中途採用者が多く、入社する月もバラバラなため、社員にとって同期のつながりのようなものはほとんどありません。そのため、新たに入った社員も環境に溶け込みやすい、分け隔てのない社風が好感を得ているという点が挙げられます。
もちろん、エンジニアは転職市場での需要も多く、当社から他社へ移るケースもありますが、ある程度の新陳代謝は成長に必要なことだと考えています。結果として、当社の社風・体質に合った人が残り、エンジニア数も順調に増えています。
プライム市場への上場とデジタル人材1万人の会社を目指す
――今後、少子化が続く中で人材不足はますます深刻化しそうです。
機械系や電気系は基礎学問の知識がないとなかなか難しいですが、当社の柱であるIT分野はプログラミング言語ができて、感性が豊かであれば、文系出身者でも貴重な戦力になります。
その点で私は、相対的に女性の方が男性よりも感性が豊かであると考えており、女性の活躍に期待しているとともに、女性社員が働きやすい環境づくりを目指しています。家庭に入って扶養の範囲内で働いている女性も多いですが、そうした方も当社で働いてもらいたいと思っており、リモートワークなどを活用して家庭の事情に合った働き方を提供していくつもりです。現在、当社社員の中で女性の割合は20%程度ですが、この比率をもっと高めていきたいし、能力のある人には男女の区別なく管理職や役員になってもらいたいと考えています。
――長期的な目標を教えてください。
まずは、現在の年間300人の中途採用者数を400、500、600と増やしていきたいと思います。もちろん、吸収できる数には限りがあるため、すぐに増やせるとは思っていませんが、当社は人材の数が売上高に直結する典型的な業種であり、ゆくゆくはデジタル人材1万人の会社を目指しています。
現在の当社の時価総額は約80億円ですが、この規模がさらに大きくなったあかつきには、海外展開や相乗効果のある異業種のM&Aも検討していくことになるでしょう。日本は技術立国の国ですが、個人的には将来の成長産業は観光だと思っています。今後の日本の産業構造の変化にも対応しながら、“人材商社”として成長していきたいと思います。
今回、上場を決めた一番の目的は社会的信用を高めるためです。当社の社員にとっても、働きたいと考える人材にとっても、その家族にとっても“上場会社”であることは信用になります。もちろん顧客に対しても同様です。現在はグロース市場での上場ですが、その先のプライム市場を目指しています。
ステークホルダーの皆様に満足していただける経営を重視しており、株主還元についてはグロース市場の企業でありながら、プライム市場の同業他社と同水準の配当性向50%を目指します。利益をきちんと納税し、株主還元をして、日本に貢献しながらしっかりと成長していきたいと考えています。