スポーツ経験者に特化した就職・転職支援事業を全国に展開――株式会社スポーツフィールド 代表取締役 篠﨑 克志
株式会社スポーツフィールド
証券コード 7080/東証マザーズ
代表取締役 篠﨑 克志
Katsushi Shinozaki

体育会系学生のための就職活動支援サイトを運営し、全国各地でセミナーやイベントを実施しているスポーツフィールド。求職者との深い関係性にこだわり、独自のビジネスモデルでマッチングを成功させている同社の篠﨑克志代表に事業の環境と今後の展望を聞いた。
取材・文/小椋 康志 写真撮影/和田 佳久
深い関係性を構築しスポーツ人財の就職をサポート
――御社の事業概要について教えてください。
篠﨑 当社は体育会学生や競技経験のあるスポーツ人財に特化した就職・採用支援事業を展開しています。スポーツを通じて培った素養は、ビジネスにおいても活かせるものだと考えており、求職者と最適な企業とを結びつけることに取り組んでいます。
具体的には、新卒領域では「スポナビ」、既卒領域では「スポナビキャリア」という就職・転職支援サイトを運営するほか、各種就職イベントを開催しています。企業が求める資質や企業の採用基準を満たす“ターゲット人財”の比率が高いスポーツ人財と企業をマッチングすることで、イベント出展料や成果報酬を受け取るビジネスモデルとなっています。
パナソニックの創業者、松下幸之助さんも「企業は人なり」と言われていますが、人は財産であり会社の中で最も重要な要素だと思っています。当社では、新卒者・既卒者の方々を大切にする気持ちを込めて、「材」ではなく「財」という字を使っています。
―― 競合他社との差別化ポイントを教えてください。
篠﨑 第一に、最初にお話しした通り、スポーツ人財に特化している点です。学生時代にスポーツに取り組むことで精神面と体力面が鍛えられるだけでなく、チームワークやコミュニケーション能力も備わりますので、その経験が社会に出てからの強みになるでしょう。社会人になると目標を立ててPDCAサイクルを回していくことが必要ですが、そういう習慣をスポーツの練習を通じて身につけている学生は大勢います。
第二に、人財とアナログな関係性を築いていることです。現在は全国に11のオフィスと6つのサテライトオフィスを設置し、160名超の営業社員を配置しています。当社は基本的にマンツーマンで担当をつけてアドバイスを行っています。履歴書の添削や面接対策の指導にとどまらず、時間をかけて濃密なアドバイスを実施することで、スポーツ経験の強みを社会で発揮し、活躍できる人財に育成している点が当社の特長です。
当社は、スポーツ自体の価値や可能性を高め、さまざまなフィールドでスポーツの価値が発揮されている状態を作ることを経営方針としています。スポーツ人財の活躍によって雇用する企業が活性化していくことで、その目標を実現していきたいと考えております。
昨年はラグビーワールドカップの盛り上がりもあり、さまざまな世界大会でスポーツの価値が認められていると感じます。今後も、東京オリンピック・パラリンピックを機に、あらためてスポーツの意義や価値が高まっていくことを期待しています。

――求職者の応募状況について教えてください。
篠﨑 2020年卒でいうと2万人以上の学生が当社の「スポナビ」に登録していますが、その7割以上が先輩や同期、指導者などからの口コミからの登録です。当社の営業社員がさまざまな関係者を含めて一人ひとりと真剣に向き合っているからこそ支持されているのでしょう。現在は情報過多の時代で、就活サイトには1万件以上の企業が掲載されており、会社説明会などではどこの会社も自社の魅力を強く押し出します。その中で自分に合う会社を見つけるのは至難の業で、就職をゴールにしてしまうと、後で理想とのギャップが生じると思います。
就職はあくまでも通過点であり、その先に何があるのかを考えて就職先を選ぶことが重要ですので、当社の担当者は求職者と一緒になって目標や価値観などの掘り下げをしています。そういった深掘りが「スポナビを使ってよかった」という満足感につながり、口コミへとつながっているのだと考えています。
一方、既卒領域においてはまだまだ認知度が低い状況ですので、既卒のスポーツ経験者の方々に幅広く認知していただくためにも、今後は広告宣伝に力を注いでいきます。
人員と拠点数を増強し事業の更なる拡大を目指す
―― 今後の成長戦略について教えてください。
篠﨑 既存事業においては営業社員を増やしていく計画で、採用を強化すると同時に教育も強化し、求職者に対するサービスレベルの向上を図ります。全国の体育会学生数は20〜50万人と推計されており、1学年では5〜12.5万人。スポナビ登録者は1学年当たり約2万人ですので、まだまだ掘り起こしの余地があります。すべての体育会学生にスポナビを活用していただきたいという思いがありますので、拠点数を増やして全国的に認知される状態を作り上げていきたいと考えています。
また、新規事業に関しては、現役アスリートの方々のデュアルキャリア(スポーツと仕事の両立)をサポートするための人財紹介・派遣事業を展開しているほか、今年の2月に高付加価値型のサッカースクール事業を開始しており、子供たちの競技力・人間力の向上と、専門性の高いスタッフや国内トップレベルの技術力を擁したコーチ陣を配置し、質の高い練習プログラムを提供しております。こうした事業を通じて、アスリートのセカンドキャリアの問題を解決するきっかけになればと思います。
―― 今回の上場の目的について教えてください。
篠﨑 社会的な信用の獲得が最大の理由で、早ければ早いほどいいという考えで準備を進めてきました。上場資金は採用の強化、拠点拡大、広告宣伝などに投資し、当面は内部留保を目的としていますが、中長期的には配当も考えていきます。今後もスポーツの可能性を広げる事業を展開していきますので、温かいご支援をいただければ嬉しく思います。