大規模国際イベントの受注でさらなる飛躍を目指す――共栄セキュリティーサービス株式会社 代表取締役社長 我妻 文男
共栄セキュリティーサービス株式会社
証券コード 7058/JASDAQスタンダード
代表取締役社長 我妻 文男
Fumio Azuma
大規模イベントや施設警備で積み上げた実績と上場による信用により、2020年東京五輪をはじめとした国際イベント警備業務の受注を目指している共栄セキュリティーサービス。人的警備とシステムのハイブリッドを志向する我妻社長に成長戦略を聞いた。
取材・文/山本 信幸 写真撮影/和田 佳久
マンパワー警備で法人顧客の「ラストワンマイル」を守る
―― 警備業界における御社のポジションを教えてください。
我妻 警備業界の市場規模は約3兆5,000億円、警備業者数は約9,500社と言われていますが、当社は売上規模で44番目の位置にいます。4年前にIPOを目指すと決めてから上場までは、規模の拡大よりも、しっかりとした組織を作り上げることを優先してきました。3月18日にJASDAQ上場を果たすことができましたので、現在は飛躍のための取り組みを始めています。これからは9月のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピック、2025年の大阪・関西万博といった国際的なイベントが続くため、当社だけでなく警備業界全体が拡大基調に入っていくと思います。
大手警備会社では、カメラやセンサーを使った機械警備に注力していますが、BtoBが中心の当社は、約1,700人のマンパワーを生かした人的警備にシステムを組み合わせた“ハイブリッド警備”の導入に向けて検証を行っております。
―― ハイブリッドでも警備の主役は人になるのですか。
我妻 その通りです。機械警備とは、警備員の代わりに各種センサーを設置し、建造物侵入や火災を機械が察知し、警備員を現場に急行させる形態の警備業務です。このような機械警備であっても、最後の「ラストワンマイル」は警備員の急行が必須であり、警備員という「人」が全て確認し終えるまでが業務となります。警備員が駆けつけるまでのレスポンスタイムは25分以内と法律で定められていますが、当社は警備対象施設に警備員を常駐させることで、即座に対処することが可能です。それが当社の強みであり、お客様に評価いただいている点だと思います。
また、火災をはじめとした防災に強いことも特徴です。IT化が進んだことでオフィス内に現金が置かれなくなり、情報もクラウドに格納されています。そのぶん、お客様の関心は防災の方に向いています。
顧客から高く評価される警備力と機動力
―― 警備業務にも様々な区分がありますが、御社の主力はどういった業務になりますか。
我妻 売上高比率では、施設・巡回警備分野が67%を占めています。その中で特徴的なものとして、レセプション・コンシェルジュという業務があります。一般の受付要員ではなく、警備員教育を受けた女性警備員を企業の受付スタッフや商業施設のコンシェルジュとして派遣しています。
次いで、雑踏・交通誘導警備分野が27%を占めています。その中で増えているのはハイウェイ・セキュリティーです。高速道路上で停車している故障車の後方を警戒し安全を確保する業務で、交通誘導警備業務検定2級の資格が必要なため誰でもできるわけではありません。
その他の業務分野では、例えば国内外の要人の身辺警護では英語が話せて格闘技に精通しているスタッフが対応します。また、マンション代行管理では65歳以上のアクティブシニアに活躍していただいています。
当社は北海道から大阪まで13営業所に、24時間以内に機動的に動ける人員をそれぞれ5人ほど配置しています。当社の強みである機動力を表す事例として、昨年7月に発生した西日本豪雨で道路や鉄道網が寸断された際、鉄道会社様から駅構内の警備、代替バスへの誘導などを行う警備員を派遣して欲しいという要請が地元の警備会社にあったのですが対応できず、関西の警備会社でも十分な人員が確保できませんでした。そこで東京に本社がある当社へご用命をいただきました。翌日30人を送り、その後も人員を増やしていったところ、大手警備会社にはない機動性の高さを評価していただきました。
―― 事業環境について教えてください。
我妻 都心では再開発ラッシュが続いていますが、再開発工事現場の警備が評価されると、その後のビル警備の受注につながります。再開発はまだ続く見通しなので、受注拡大の機会は引き続き増えるでしょう。
今後はカバーエリアを大阪以西、九州にも広げていく計画ですが、当社のお客様がいない地域に営業所を構えても軌道に乗せるまでには時間がかかるため、地域で認知され、お客様を持っている会社のM&Aを考えています。国内の警備会社の90%は中小零細企業のため、事業承継に関連して良い話があれば検討します。
―― 人材の採用と教育についてはどのようにお考えですか。
我妻 新卒を対象に正社員を募集していましたが、通年で行っている中途採用でも正社員を募集し人材を確保していきます。今後は、採用の場面でも上場会社という信用力が生きると思います。警備員のキャリアアップには各種資格取得が欠かせません。そこで基本的な救命講習から始め、経験を積んだ後に警備員を指導する警備員指導教育責任者を取得する3年ないし4年のキャリアアッププランを作成しています。
―― 業績も好調ですね。
我妻 19年3月期の連結業績は売上高56億8,200万円(前期比6.3%増)、営業利益4億300万円(同30.2%増)でした。20年3月期はそれぞれ64億9,400万円、4億7,200万円を予想しています。
―― 株主還元についてはどうお考えですか。
我妻 マンパワー会社なので機械警備会社ほどの設備投資は不要です。そこで内部留保は適正額にとどめて、株主様に積極的に還元していく計画です。今後配当性向は50%を目標とします。株主様にはぜひ当社のファンになっていただきたいと考えています。