プロフェッショナルカンパニーとして人、企業、業界の価値を最大化――株式会社エル・ティー・エス 代表取締役社長 樺島 弘明
株式会社エル・ティー・エス
証券コード 6560/東証マザーズ
代表取締役社長 樺島 弘明
Hiroaki Kabashima
人と企業を変えるプロフェッショナルサービス事業と、人と企業をつなげるプラットフォーム事業という2つの柱を武器に急成長を遂げているエル・ティー・エス。IT・コンサル業界の動向が俯瞰して見えているという樺島弘明社長に事業内容の強みと今後の展望を聞いた。
取材・文/小椋 康志 写真撮影/和田 佳久
プロジェクト予算だけでなく、定常業務予算で仕事を受注
── プロフェッショナルサービス事業とは、どのような事業でしょうか。
樺島 プロフェッショナルサービス事業は、企業の働き方改革やデジタルシフトによる企業変革を支援する事業です。具体的にはコンサルティング、デジタル活用サービス、BPM(ビジネスプロセスマネジメント)という3つのサービスを提供しています。
一般的なコンサル会社やテック系の会社は、プロジェクト予算で仕事を受注していますが、当社の場合は、プロジェクト後もお客さまの企業に残って、経営や業務の支援をし続けます。そこで課題が見つかったときに、大規模なIT投資をするのか、RPA(ロボティクス)やAIを活用するのか、あるいはSS(シェアードサービス)やBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)を導入するのか、はたまた外部は使わずに社内で改善活動を行っていくのかなどを判断し、最適な解決策を提案しています。すると、コンペもせずに新たなプロジェクトが立ち上がります。そして、その案件ごとに外部の優れた企業と協業して、各プロジェクトを成功させてきたという歴史があります。ですから、他のコンサル企業やテック企業とは競合というより、協業関係というポジションを築いています。
また、一過性のプロジェクト予算ではなく、定常業務予算で仕事を受注できるので、景気に左右されません。実際に主な顧客企業とは、十数年という長期的なお付き合いをさせていただいています。毎年いろいろなテーマを掲げて、持続的な業務改革を実現しているのです。
事業会社の案件情報とそれを解決する企業や個人をマッチング
── プラットフォーム事業とは、どのような事業でしょうか。
樺島 プラットフォーム事業は、企業の人材不足を解消するために立ち上げた事業です。これまで一社一社の支援をしていたのですが、どこも人材不足で事業の成長や企業の変革に必要な体制を作れないと悩んでいました。この問題を解決するためには、課題を抱えている企業と解決手段を持っている企業や個人を結びつけていくことがベストであろうと考え「アサインナビ」という独自のプラットフォームを作りました。これにより企業と企業、案件と人材、企業と人材のマッチングが可能になりました。現在IT・テクノロジー企業会員が約3,000社、フリーランス人材のプロフェッショナル会員が3,000名近く会員登録をしていて、毎日のようにマッチングがなされています。
世の中のクラウドソーシングサイトは登録数が数十万人とされていますが、当社のサイトは量ではなく質にこだわっています。当社からプロフェッショナルサービスの提供を受けている顧客企業や協業関係にある企業が会員になっていますので、会員の質は非常に高いです。この事業は会員からの会費収入をベースとしていますが、昨年やっと黒字化できました。そこで今年から強化しているのが会員向けのサービスです。いろいろな会員のニーズや課題は既に見えているので、そこを支援していこうと思います。
そのひとつが教育で、データサイエンティストやRPAのエンジニアを育成したり、エンジニアに対してコミュニケーションやロジカルシンキングのスキルを向上させたり。そういう教育をきちんとサービスごとにフィーをいただいて提供し始めています。また、採用支援も行っており、フリーランスの人たちがこのプラットフォームで仕事の情報を検索して応募をします。そのフリーランスの人を採用した場合は、企業から成約報酬をいただくという仕組みです。
デジタル活用サービスを拡大採用や教育にも力を注ぐ
── 御社を取り巻く事業環境と、今後の展望について教えてください。
樺島 どこの会社も、とにかく必要な体制を作れないという問題を抱えていますから、「いい会社、いい個人、いい製品、いい技術を見つけよう」ということには貪欲です。我々としては両事業にとって追い風だと感じています。近年「働き方改革」や「RPA」などという言葉がバズワード化していますが、我々からすると、もう何年も前からやっている話。ですから今までやってきたことをそのまま継続していくことで、3年くらいは増収増益が見込めます。
今後の展望ですが、プロフェッショナルサービス事業は、前年比15~20%の成長を目指しています。今後はコンサルタントの頭数に依存せず、一人当たりの営業利益額や付加価値額が大きく取れるデジタル活用サービスの割合を上げていこうと考えています。
さらに長期的な展望としては、大企業だけでなく中堅・中小の企業に対しても、このデジタル活用サービスを展開していこうと考えています。
── 事業を推進していくためには、優秀な人材が不可欠です。御社自身の採用や教育について教えてください。
樺島 2008年に初めて新卒を採用して以来、採用と教育には相当の資金を使ってきました。その結果、若手を採用する力と、その若手を短期間で一人前のプロフェッショナルに育て上げていく力は業界でもトップクラスだと思っています。事実、弊社の研修プログラムを外資系のIT・コンサル企業が軒並み採用しています。また、そのプログラムをアサインナビの会員にも比較的安く開放する試みを実施していますが、本当にあっという間に満席になってしまいます。
これからも優秀な若者を採用し、プロフェッショナルな人材に育て上げていくことで、日本国籍でありながら世界に通用するグローバル企業にするという夢があります。そしてこれからも一社一社の成長をお手伝いしながら、業界全体のお役に立ち続けていきたいと思います。