地域の未来をともに築く「伴走者」としての姿を意志ある行動で示す(株式会社京葉銀行 取締役頭取 藤田 剛)
株式会社京葉銀行
証券コード8544/東証プライム
取締役頭取
藤田 剛
日本経済の転換点に立ち、地域金融機関としての使命を改めて問い直す
頭取就任から、おかげさまで一年が経過いたしました。この一年間、多くのお客さまにご挨拶させていただく中で、改めて当行グループが地域の皆さまのご支援、ご厚情によって支えられていることを実感し、感謝とともに、それ故にこそ地域金融機関としての本分を全うしていかなければならないという想いを強くいたしました。
振り返れば、私が京葉銀行に入行したのは、バブル崩壊直後の1991年。それから“失われた3 0 年”とも言われるとおり、企業は投資よりも内部留保を優先し、イノベーション・マインドが失われていく様子を目の当たりにしてきました。しかし現在、“政策金利の引き上げ”が示すように、日本はデフレの縮小均衡から成長を目指す世界へと、少しずつではありますが確かに歩み出しています。
併せて私が今大変心強く思うのは、企業経営者の方々の意識の変化です。人口減少社会という目の前の現実を捉え、自社の利益にのみ固執することなく、地域社会とともに豊かになることが正の循環となって、自らの事業成長につながっていくのだという価値観をごく自然にお持ちの方々が増えてこられたように感じます。こうした新たな企業経営の担い手の皆さまが思い描く未来の実現に向けて、私どもも、地域のプレーヤーとして、また、金融・情報の仲介役として、その役割が一層大きくなっていることを深く感じています。
そして、さらなる大きな使命、取り組むべき課題が「中小企業における生産性の向上」です。わが国の一人当たり名目GDPは先進国の中で依然として低位に甘んじており、このことは、日本企業が“付加価値を創出できていない”“生産性を上げられていない”現実を表しており、中でも、日本の企業の99.7%を占める中小企業における生産性向上の課題が大きいことを物語っています。中小企業金融・ソリューションのメイン・プレーヤーである我々こそが、この課題に真正面から向き合い、解決に向けた取り組みを加速させなければならないと決意を新たにいたしております。
「敷居のない、日本一親切な銀行」を目指して
私は機会を得る度に「京葉銀行グループは、敷居のない、日本一親切な銀行を目指そう」と声掛けしています。銀行はお客さまとの相互の“信頼”のうえに成り立つ業態です。そこで、まず何よりも大切にしたいのが“人間力”です。私は常々「ありがとう」と「ごめんなさい」という気持ちを大事にし、それを相手にしっかりと伝えてほしいと自戒も込めてお話ししています。人間は決して一人では何事も成し遂げられませんし、必ず失敗もする動物です。だからこそ、していただいたことへの感謝と、自らの責任に背を向けることなく謝る気持ちを大切にし、それを素直に表現することが信頼関係を築く第一歩であると感じるからです。その信頼関係のうえに、深度あるコミュニケーションによってお客さまの目指すゴールを共有し、現状把握、原因分析、課題抽出、そして改善策を立て、PDCAを回しながら伴走していく。これが私どもの掲げる「オンリーワンの課題解決型営業」の真髄です。良識や礼節に加えて論理的思考力、さらに“お客さまのために”という情熱と、それを実行する行動力——これらを兼ね備えた人財こそが、京葉銀行グループが目指すプロフェッショナルの姿と考えています。
千葉県というマーケットの可能性を、最大限に引き出す
当行グループの主要マーケットである千葉県は、全国第6位となる約630万人の人口を誇り、転入超過数も全国第3位という恵まれた地勢にあります。農業・漁業から製造業・商業に至るまで、バランスのとれた産業構造を持ち、成田国際空港、千葉港をはじめ東京湾岸の港湾を擁し、人とモノが国内外に行き交う窓口として、大きなポテンシャルを秘めた地域です。私どもは、そうした千葉県を地盤とする地理的優位性についても、積極的に活かしていきたいと考えています。成田国際空港の第3滑走路新設と、それに伴う道路整備により、周辺地域の発展も期待されています。そうしたチャンスを活かすべく、自治体との連携強化を図りながら、私どもがハブとなり、事業者をはじめとした地域のプレーヤー同士をつなぎ合わせることで、企業誘致など、地域経済のパイそのものを拡大していくことが当行グループの描く「地域貢献」の具体像です。122拠点に及ぶ広大なネットワークによって、地域の隅々にまで根を張り続ける当行グループだからこそ実現できることがあります。
一方で、千葉県ならではの課題もあります。経営者の平均年齢は全国的に見ても高位にあり、間近に迫る事業承継問題のほか、CO2排出量は全国トップ水準で、世界的に要請が高まる環境保全への対応が急がれます。そして東京への一極集中は隣接首都圏と言えども、投資や消費の機会逸失を招きかねない構造的課題を浮き彫りにしています。
しかしながら、こうした課題の一つひとつが、当行グループのビジネス機会とも捉えております。事業承継を例にとると、中小事業者において、経営者の頭の中には精緻なビジネスプランが描かれてはいるものの、それが言語化、視覚化されていないということが間々あります。そうしたとき、私どもが経営計画書の策定をお手伝いし、経営者の頭の中を可視化しておくことで、後継者がビジョンとプロセスを共有でき、円滑な事業承継の実行に至った実例などは、大変感謝をいただいております。
こうした伴走型支援——社会課題の解決と当行グループの収益機会を両立する「ソーシャル・ソリューション」を提供することによって、地域社会の明るく豊かな未来を地域とともに、お客さまとともに築いてまいります。
何より大切なのは「人間力」。
良識や礼節、論理的思考力、情熱、行動力——
これらの要素を兼ね備えた人財を育てることが私のミッション。
第20次中期経営計画の確かな手応えを得て、さらなる「成長」へ
現在進めている第20次中期経営計画は、2032年度までの長期ビジョン「お客さま満足度No.1のソーシャル・ソリューショングループ」の実現に向けた「フェーズ1~挑戦と変革~」と位置づけています。
おかげさまで前期は過去最高の当期純利益を更新することができましたが、これは金利環境の追い風も然ることながら、それ以上に「オンリーワンの課題解決型営業」「営業改革」「人財改革」「経営基盤改革」という4つの基本戦略が、確実に機能し始めていることの証左であると受け止めています。
私どもは、「オンリーワンの課題解決型営業」を推し進め、お客さまのビジョンの実現に向けて伴走することで、京葉銀行をメインバンクとして選んでいただくお客さまが増えていってくれることを目指しています。そのために、法人のお客さまには「未来伴走シート※1」、個人のお客さまには「未来をともにシート※2」や「ライフプランシミュレーション※3」を活用し、お客さまと営業店、本部が何ごとも共有、可視化することを特徴としています。
※1 お客さまとの対話を通じて、強みや経営課題、目指すゴールを共有し、お客さまの将来像や事業計画に沿ったコンサルティング提案を行うためのツール
※2 資産状況やご家族への想いを「見える化」し、お客さまの課題解決に向けたコンサルティング提案を行うためのツール
※3 現在の収入や年齢等から将来の収支バランスを予測し、お客さまのライフプランに沿ったコンサルティング提案を行うためのツール
それを実現するため「営業改革」において当行グループが推進してきたのが、事務と営業の分離、そして営業の中でも、法個人の分離による各セクションのプロフェッショナル化です。一人が何役もこなすスタイルから転換し、それぞれが得意な分野に集中してお客さまに最高のソリューションを提供できる体制へと進化を続けています。また、2025年1月に稼働した新勘定系システムは、業務の本部集中化やAI活用を本格化させ「経営資源の次世代化」の大きな推進力となっています。そして、営業人員は現中期経営計画の期間中に250人の増員を目指しており、その実現に向けた取り組みは着実に前進しています。
「人財改革」においては、「営業改革」で述べた分業制を人事制度面で担保する「キャリアコース制」を導入し、コースごとに求めるスキルや評価の基準、キャリアモデルを明示して、職員一人ひとりがプロを目指して挑戦し、お客さまと銀行に貢献する意欲を体現しやすい環境を整備しています。また、こうしたプロ人財を育成していくには、OJTの担い手である管理職の能力をさらに高めていく必要があり、管理職に対して求める人物像と役割を再定義するとともに、評価制度、研修内容を見直し、「自律的な経営能力」を高めることで、組織全体の底上げを図っております。
さらに、私どもが重要施策として独自収集しているお客さまの“声”において、以前に増してお褒めの言葉を頂戴できるようになってきていることは、人財の量と質の向上を目指す当行グループにとって、大きな励みとなっています。そして、当行の千葉県内でのメインバンク・シェアが、調査※4開始以来、7年連続で増加しているということについても、確かな成果として実を結んでいる証ではないかと、私自身、大変うれしく感じています。
こうした手応えを背景に、「経営基盤改革」では財務KPIについて2度の上方修正を行い、現中期経営計画の連結ROE(株主資本ベース)を6.5%、連結当期純利益を190億円、2030年3月期計画でそれぞれ9.0%、300億円、さらに長期ビジョン目標でそれぞれ10%以上、350億円以上へと引き上げ、企業価値向上と、さらなる「成長」に向けて取り組んでおります。加えて、株主還元方針も変更し、従来の「総還元性向40%程度」から「配当性向40%以上」へと改めました。これは株価や資本コストを意識した経営のもと、利益成長を通じた1株当たり配当金の安定的な増加を基本としたものです。
今後も内部留保と成長投資、株主還元について最適バランスのアロケーションを追求してまいります。
※4 株式会社東京商工リサーチの「全国メインバンク調査」
ガバナンスの強化と、心理的安全性が確保された組織づくり
2026年6月の株主総会における承認を経て、私どもは監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行しました。この変革の狙いは、多様なバックグラウンドを持つ監査等委員が取締役として取締役会に加わることで、実効性の向上と監査・監督機能を強化する一方、結論に導くプロセスに議論の重点を置くことで、執行側に一部権限を移譲し、経営のスピードを高めることにあります。アクセルとブレーキ機能を同時に高めるこの改革が、激しく変化する時代への対応力を一層強固なものにするよう、しっかりと運用してまいります。
そうした制度面の充実とともに、組織運営において最も重要となるのが、「心理的安全性」の確保であると私は思っています。誰もが正しいと思うことを躊躇なく発信できる、自由闊達な風通しのよい組織風土を醸成すること——これが私の経営における優先課題の一つです。そのためにも、私自身、積極的に現場に足を運んで職員と膝を交え、より多くのお客さまからお話を伺い、IRなどを通じて株主の皆さまと対話を深めるなど、明るさを基調として、ステークホルダーの皆さまとの深度あるコミュニケーションに力を注いでまいる所存です。
『意志あるところに道は拓ける』
私が経営者として心に刻んでいる言葉が、アメリカ合衆国第16代大統領リンカーンが残した『意志あるところに道は拓ける』です。これは「強い意志があれば、困難の先にも道は拓かれる」という意味ですが、同時に「“ここに行くんだ!”という強い意志を持つこと」自体が、ビジョンを持つという意味で大事なのだという言葉だと思っています。
私どもが長期ビジョンで「お客さま満足度No.1のソーシャル・ソリューショングループ」という姿を掲げ、そこからバックキャスティングで戦略を立て、中期経営計画を策定し、PDCAを回していくというプロセスも、まさにこの「意志」の明示と内外へのコミットです。
京葉銀行グループが「敷居のない、日本一親切な銀行」として地域の皆さまにご相談いただきやすい存在であり続けると同時に、「いざ相談してみると、やっぱり京葉銀行に相談して良かった」と心から思っていただける、人間力とソリューション提案力を備えた組織作りに邁進してまいります。こうして、京葉銀行グループが地域の皆さまとともに成長の好循環を生み出し、企業価値の向上を果たすことでステークホルダーの皆さまからの信頼とご期待、そして負託にしっかりとお応えできますよう、誠心誠意、力を尽くしていくことをお約束申し上げます。
「京葉銀行に相談して良かった」
と心から思っていただけるだけの付加価値の高いソリューションを提供し続けます。
※本記事は、「株式会社京葉銀行 統合報告書 2026」より転載しております。
