ゴールドを買い続ける世界の中央銀行と上昇し続ける金価格! いま世界中で金への投資が注目されている理由

この記事は2025年7月25日発行のジャパニーズ インベスター126号に掲載されたものです。
今年4月22日、スポット価格で1オンス当たり3,500ドルを突破し、史上最高値を更新した金(ゴールド)。2008年のリーマン・ショックに端を発した世界金融危機以降、世界の中央銀行がゴー
ルドの購入を継続し続けており、それに伴って投資家からの注目も高まっており、金価格も急上昇している。今回は、※ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント(ステート・ストリート)のゴールド・ストラテジストであるアーロン・チャン氏と同社常務執行役員である稲寛彰氏に、いま世界でゴールドへの投資に注目が高まっている理由について伺った。
※ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントは、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社が行う資産運用関連業務のブランド名です。
取材・文/岩切 徹 写真撮影/和田 佳久
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社ゴールドストラテジスト
アーロン・チャン
2024 年 6 月にステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社に入社。グローバルの SPDR(スパイダー)・ゴールド・ストラテジー・チームに所属する日本拠点のストラテジスト。金(ゴールド)とETFプロダクトの専門家として、日本における機関投資家ビジネスおよびファンドや ETFを担当するインターミディアリービジネスのセールス活動をサポート。それ以前は、外資系証券会社等で勤務。ICBCスタンダードバンクでは金を含む貴金属分野で、ビジネスの推進や顧客リレーションの開拓を担当。ボストン大学経済学学士およびマギル大学大学院経営学修士を取得。また、慶応義塾大学にて日本語プログラムを修了。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社 常務執行役員
稲 寛彰
2023 年 10 月にステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社にシニア ETF セールス・マネージャーとして入社、その後現職。同社のETFビジネスを日本で牽引。それ以前は、2016 年に UBS アセット・マネジメントに入社し(その後 UBS 証券に出向)、東証上場及び海外上場のETF 関連業務を担い、同社の ETFビジネスの発展に貢献した。また、東京、ロンドン、香港にて日米欧中の証券会社、運用会社及び金融情報会社にて機関投資家向け営業関連業務に従事。早稲田大学にて修士号(国際経営学)取得。
ドル離れとリスクの高まりから世界の中央銀行で金準備が進む
ーー2023年以降、史上最高値更新がずっと続いている金(ゴールド)価格ですが、金価格が上昇を続けている背景にはどのような要因があるのでしょうか?
チャン:2023年以降、急激な価格上昇をした金価格ですが、その背景には米国短期金利の低下や米ドルの下落、期待インフレの上昇、不透明性・ボラティリティの上昇など、多くの要因が挙げられます。中でも私たちは、2008年のリーマン・ショックに端を発した世界金融危機以降、新興国を中心に世界の中央銀行が金の購入を継続している点に注目しています。直近では2022年2月、ロシアのウクライナ侵攻以降、地政学的リスクの高まりが顕著となり、大きく買い越していることがわかっています。また、金融市場の不安定さやトランプショックの影響もあり、金に対する新規投資家の関心が高まってきていることも挙げられます。
稲:過去50年間を振り返ってみた時、金の価格はほぼ一貫して年率8%以上の上昇を見せており、継続的な価格上昇トレンドを示しています。また、金の投資方法が多様化し、金のETF(上場投資信託)や投資信託が普及したことも、金価格の上昇の要因の一つに挙げられます。近年では個人投資家のラップ口座やロボアドバイザーでの金資産組み入れも進んでおり、オンラインブローカーで簡単に取引できるようになっています。 元々、金は地球上で限られた資源であり、地上在庫の総量(2024年12月末時点)は21・6万トン(公式競技用プールの約4・5杯分)、確認されている埋蔵量は5・4万トン(公式競技用プールの約1・1杯分)と推定されています。こうした希少性の高さから、古くより金は通貨の代替として使用されており、長い歴史の中でその価値を保持してきた資産であるといえます。また、過去10年間における金の需要のほぼ半分は宝飾品ですが、景気や市場と異なる値動きをする金を分散投資の重要な選択肢の一つとする投資需要が29%、外貨準備としての構造的な保有をする中央銀行の需要が15%を占めています。
外貨準備として、世界の中央銀行が金の保有を進めている要因には、何があるのでしょうか?
チャン:外貨準備とは、政府や中央銀行が預金や証券、金などで保有する外貨建て資産を指し、これらは主に国際的な取引に使用され、国家の経済の安定性を支える重要な役割を担っています。貿易や投資を支えるために必要な流動性を確保することで、国内の通貨と外貨とのバランスを保ち、安定した経済を維持することができます。また、外貨準備が大きいほど、国際的な信用が高まるといわれており、他国との関係が円滑になります。 世界の中央銀行が金の購入を進めている背景には、それまで強力な基軸通貨であった米ドルへの依存を減らし、外貨準備の分散が進んでいること。そして、地政学的なリスクへの対応として、特にポーランドや中国、トルコといった新興国では顕著な動きがみられます。
稲:チャンが今話したとおり、地政学的リスクへの対応や自国通貨の安定性を確保するための戦略的行動といえます。ワールドゴールドカウンシルが6月17日に公表した最新の中央銀行の調査では、76%の中央銀行が「5年後に金が総準備金のより大きな割合を占めると考えています」と答えました。それは昨年の69%から増加しています。金購入が顕著な新興国以外にも、アフリカ諸国で金による外貨準備を増やす可能性があります。
