長期で成長する「いい会社」を見つける! 長期投資家がチェックする「決算」で見るべきポイント
※この記事は2025年4月25日発行のジャパニーズ インベスター125号に掲載されたものです。
株式投資で「良い企業」を発掘するには、企業の決算を読み解いて、その成長力を評価したり、経済指標をチェックして市場環境を分析したりすることが必要不可欠だ。長期投資で「良い企業」とは、長期的(持続的)な成長を続けていける企業のことを指している。とはいえ、投資初心者の中には決算のどこを見ればいいのかわからないという人もいるだろう。そこで、今回は数字や経済指標などのデータを解読するためのポイントを紹介したい。
取材・文/岩切 徹
4月中旬~5月中旬は上場企業の決算発表が集中する
決算発表は投資家にとって重要な判断材料であり、市場に大きな影響を与える材料です。上場企業の決算内容は株価に大きな影響を与えるため、投資家にとって、企業の決算発表日を把握することは重要な情報収集だと言えます。上場企業では3月31日を決算期末とする会社が多く、その時期に合わせて決算発表が行われます。2007年3月の発刊以降、隔年で発刊している「東証上場会社コーポレート・ガバナンス白書2023」によれば、東証(プライム・スタンダード・グロース)上場企業全社の61%が3月期決算を採用しているものの、この割合は2006年の76.4%から年々減少していると記されています。
上場企業は、株主や投資家に対して決算結果や経営状況を公開するため、決算短信を作成し開示する義務があります。そして、決算期末後の45日以内に開示される必要があります。このルールは、上場企業が適切に市場への情報開示を行うために重要な役割を持っています。そのため、4月中旬〜5月中旬にかけて、多くの3月期決算企業の決算短信が開示されます。
事前に発表日を把握しておけば、適切に投資判断やポートフォリオのリバランスなどをはかることができます。上場企業の決算発表日は、日本取引所グループのサイトや取引をしている証券会社の決算スケジュールコーナー、日経新聞電子版サイトなどで確認することができます。最近では、決算発表スケジュールを簡単に確認できる専用アプリなども増えてきているので、昔に比べて比較的容易に情報を入手することが可能です。

決算短信では今期の売上高と営業利益をまず確認しよう!
決算発表時に公開される決算短信は、投資家にとって貴重な情報源です。決算短信はサマリー情報と添付資料からなります。1枚目には、今期の売上高や利益と前期の比較のほか、来期の業績予想や配当金などが記載されています。
様々な数字が記載されているため、初めて見る人にはどこを見ればいいのか戸惑う人もいるかもしれません。まず注目したいのが今期の売上高です。売上高は商品やサービスなどを提供して得た金額で、売上高が大きければ大きいほど、その企業の商品やサービスが売れているといえます。次に注目するのが営業利益です。営業利益は、原材料費や人件費・広告宣伝費など、売り上げを得るために要した費用を売上高から差し引いたもので、「本業で稼ぐ力」を示しています。さらに資金運用のもうけなど本業以外で得たお金や、銀行に支払う利息など本業以外で支払ったお金を足し引きしたものが経常利益です。これに臨時に発生した収益や損失をここから足し引きし、税金を支払った残りを、純利益(最終利益)または税引き利益といいます。これが、設備投資や株主に支払う配当の原資になります。
一般的には、企業が通常行っているすべての業務で得た利益である経常利益が企業の業績を示していると言えますが、企業の持続的成長を重視する長期投資では、本業で稼ぐ力を示す営業利益に注目します。