岩屋の大杉

写真・文/高橋 弘(巨樹写真家)
※この記事は2025年7月25日発行のジャパニーズインベスター126号に掲載されたものです。
勝山市の北西部、岩屋川をさかのぼった山あいに岩屋観音があります。大杉は本殿後方の崖に生長し、かつては12本の支幹に分かれて生長、壮大な樹形を持っていたとされます。現在は5メートルほど残っている主幹から伸びた枝が大木となり、親が子を支えているような樹形から「子持ち杉」とも呼ばれています。雪国のスギの特徴でもある枝が下垂している姿が特徴で、特に参道側に張り出した一本は印象的で、地面に接触しそうなほど垂れてから再び立ち上がっており、まるでマンモスが鼻を擡げてこちらに向かって突進してくるような迫力です。また、地元には興味深い伝説も語り継がれています。12本に分かれていた当時、不埒者が6本を伐ったところ、白竜が現れて残りの6本を命がけで守り、それ以上は伐らせなかったというのです。白竜はそれ以来、このスギの根元に住みついたと伝えられています。幹の太さは17mと、スギとしては全国でも最大クラスの太さを持っており、樹形は異なりますが屋久島の縄文杉と比較してもけっして引けを取らない迫力の持ち主です。岩屋地区も過疎化の波には勝てず、現在では無人の集落となってしまいました。誰も住まない集落の守り神となった児持ち杉、彼は何を思い集落を見つめるのでしょうか。
【DATA】
福井県勝山市北郷町岩屋
幹周/17.0m
樹高/33m
樹齢/伝承1200年
勝山市指定天然記念物
【著者プロフィール】
1960年山形県生まれ。巨樹を撮り始めて38年目。出会った巨樹の数は3,400本にのぼり、出版、写真展、ホームページなどにより、巨樹の魅力を発信している。著書に『巨樹・巨木をたずねて』(新日本出版社)などがある。
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