糸井の大カツラ
写真・文/高橋 弘(巨樹写真家)
※この記事は2025年4月25日発行のジャパニーズインベスター125号に掲載されたものです。
日本最大級の幹周を持つであろうと思われる雄株のカツラの巨樹です。朝来市最北部の糸井川源流近くに位置しており、糸井渓谷のもっとも奥にある竹ノ内集落から、車で4kmほど糸井川をさかのぼると大カツラに出会うことができます。カツラの巨樹というと深い山中に生育し、見るにはアクセスも大変と考えがちですが、これだけの巨大なカツラに手軽に出会えるという意味では貴重な存在といえそうです。
主幹はすでに朽ち果てており、80本ともいわれる多数のひこばえが成長し、樹形を保っている状態です。ひこばえは太さが皆ほぼ同じに揃っており、しかも等間隔に真っ直ぐ生長しているため非常に端正な樹形を保っています。その主幹が存在したであろう中心部には、ぽっかりと空間が存在し、上を見上げると多数のひこばえが高さを競う様が目に入ってきて、不思議な気持ちにさせられる空間が存在しています。
根元近くを流れる糸井川の度重なる氾濫にも耐え抜き、根元の土は洗い出されて根が高く露出。下流側に10メートル以上も伸びている様は、まるで巨大なヘビでも見ているかのようです。近年では雲海の上に浮かぶ天空のお城として知られることとなった竹田城も併せて訪問可能な場所にあります。
【DATA】
兵庫県朝来市和田山町竹ノ内
幹周/19.55m(実測)
樹高/36m
樹齢/伝承2000年
国指定天然記念物
【著者プロフィール】
1960年山形県生まれ。巨樹を撮り始めて38年目。出会った巨樹の数は3,400本にのぼり、出版、写真展、ホームページなどにより、巨樹の魅力を発信している。著書に『巨樹・巨木をたずねて』(新日本出版社)などがある。
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