川古のクス
写真・文/高橋 弘(巨樹写真家)
※この記事は2015年7月25日発行のジャパニーズインベスター86号に掲載されたものです。
武雄温泉で有名な武雄市は、巨大なクスノキが3本存在している地としても知られています。全国最大クラスの一本「川古のクス」、市街地にある「武雄の大楠」、「塚崎の大楠」の3本で、全国最大クラスの巨樹が3本も揃う町は全国でも武雄市のみで、全国最大のクスノキがある鹿児島県姶良市、6位のクスノキがある熊本市とともに、九州巨木物語と銘打って共同イベントを開催したこともあります。
川古の大クスは約1200年前、名僧行基の手によって生きている樹肌に直接仏像を彫られるなど、数奇な運命をたどってきたクスノキでもあります。ほぼ等身大の大きさの彫刻は、当然ながらこの樹の樹勢をも奪ってしまったであろうと想像され、昭和後期には枯れ枝も目立ち樹勢も衰えていました。クスノキの周囲も荒れ放題で訪れる人もほとんど無く、自由に木肌に触れることもできました。現在は水辺と大クスをテーマにした「川古の大楠公園」として綺麗に整備され、一躍武雄市の観光名所となりました。同時に大楠の保護も、以前とは比べものにならないほどの充実ぶりです。
樹齢3000年ともいわれる大クス、ひと頃は枝葉の量も減少し枯れ枝も目立つ状態でしたが、樹木医の手によって治療を施されてからは、以前とは見違えるほどの回復傾向を見せており、雄大な樹冠も復活したのは嬉しいことです。これからも私たちの目を楽しませてくれることでしょう。
佐賀県武雄市若木町大字川古
幹周 21 m
樹高 25 m
樹齢 3000 年
国指定天然記念物
【著者プロフィール】
1960年山形県生まれ。巨樹を撮り始めて36年目。出会った巨樹の数は3,400本にのぼり、出版、写真展、ホームページなどにより、巨樹の魅力を発信している。著書に『巨樹・巨木をたずねて』(新日本出版社)などがある。
著者ホームページ