人的資本開示ワークショップ開催レポート 主催:宝印刷D&IR研究所・アデコ株式会社
2025年2月12日(水)、株式会社宝印刷D&IR研究所は、アデコ株式会社と共同で、人的資本開示に関する招待制ワークショップを開催しました。本ワークショップは、人的資本経営に関わる人事セクションと、経営企画セクションの“連携”が課題となっている中で、両セクションを集めた議論の場をつくることで、企業価値向上に資する人的資本開示への理解を深めてもらうことを目的に企画されました。

近年、ESG投資の拡大に伴い、人的資本開示の重要性が高まっています。特に、2023年3月期から有価証券報告書での開示が義務化されたことにより、企業の情報発信において人的資本の位置づけがより明確になりました。
しかし、現状では「開示のための開示」にとどまるケースも少なくなく、本質的な人的資本経営の実践には、経営戦略と人的資本施策の連携が不可欠です。
本ワークショップでは、他社の経営企画・人事担当者と意見交換を行いながら、価値創造ストーリーにつながる人的資本開示について活発に議論が交わされました。
ワークショップの冒頭では、宝印刷D&IR研究所 取締役 ESG/統合報告研究室 室長 片桐さつきが開会の挨拶を行い、「企業が持続的に成長し、投資家との対話を深めるためには、人的資本開示のあり方を進化させる必要がある」と強調し、コロナ禍を経て対面での立体的なコミュニケーションの重要性が再認識される中、本日のワークショップを通じて得た気づきを実務に活かしてほしいと呼びかけました。

人的資本開示のトレンド
宝印刷D&IR研究所 ESG/統合報告研究室 多田尋一主任研究員による解説が行われました。多田は、人的資本開示のトレンドについて、「無形資産の重要性の高まり」が企業価値評価の主軸になりつつある現状を説明しました。
さらに、投資家と企業の意識のギャップにも言及し、「企業は設備投資を優先する傾向がある一方で、投資家は人的資本への投資を重視している」と指摘。人的資本開示が企業の持続的な成長において不可欠であることを強調しました。

CHROになってミッションをクリアせよ
続いて、アデコ コンサルティング部 人的資本経営グループ シニアマネージャーの吉水 文哲氏より、ワークショップの進行方法について説明がありました。
本ワークショップでは、参加者が「企業のCHRO(最高人事責任者)」の立場となり、事前に設定された架空の会社を舞台に、人的資本の強化に向けた打ち手をどう企業価値につなげていくかを議論するワークを実施しました。

現在の職務が人事や経営企画セクションである参加者が4テーブルに分かれ、設定資料を読み込みつつ、それぞれの自己紹介で打ち解けあった後、架空の企業にとってどのような施策が有効なのかについて、熱のこもった議論が交わされました。ディスカッションの後、各チームの代表者1名が、2分間のプレゼンで、最も事業にインパクトを与える要素、重要と思われるケースを発表しました。


ワークショップを終えて、吉水氏は、「課題解決のための施策と、将来的な成長を促す施策のバランスが重要」であると述べ、単発の施策にとどめず、企業全体の価値創造プロセスの一環として継続的に取り組むことが求められると語りました。

インプット・アウトプット・アウトカムを意識した成長戦略
ワークショップの総評として、多田より人的資本開示において「インプット・アウトプット・アウトカムを意識した説明」が重要であると指摘しました。特に、人的資本への投資とそのリターンを明確にし、経営戦略と整合性のある形で開示を行うことが、投資家との対話において鍵となると述べました。
閉会にあたり、宝印刷D&IR研究所社長の鎌田浩嗣氏は『人的資本開示は経営において極めて重要な要素となる』と述べ、投資家への人的資本開示のあり方について言及しました。また、今回のワークショップの成果を社内に持ち帰り、活発な議論を続けることの意義を強調しました。

参加者の声
「人的資本に関する情報収集のためセミナーに参加しました。人事と経営企画が話せる場はユニークだと思いました。1回限りではなく、コミュニティなど継続的な関係を築けるとよいと思います」
「有価証券報告書におけるサステナビリティ開示の強化を検討しており、人的資本に関する投資家などの外部へのアピールをもっとする必要があるため今回参加いたしました。人的資本の適切な開示方法が分からなかったため、伝わる形で開示するためのヒントを得ることができました。」
「人的資本に関するビジョンをアップデートする必要があり、参加しました。今後は人的資本に関して成功している企業の実例や、担当者の方の話を聞ける場を作ってもらえると嬉しいです。」
まとめ
今後、人的資本開示の重要性はさらに高まることが予想されます。企業にとっては、人的資本の開示を通じて経営の透明性を高めるだけでなく、優秀な人材の確保や企業価値の向上につなげることができるメリットがあります。一方、投資家にとっては、企業の成長性や持続可能性をより深く評価できるようになり、投資判断の精度向上が期待されます。
宝印刷D&IR研究所では、こうした企業の人的資本開示の実践を支援するために、今後も継続的にワークショップやセミナーを開催してまいります。次回の開催情報も随時お知らせしますので、ぜひご期待ください。
宝印刷のセミナー情報は下記のURLからご確認ください。
https://takara-print.smktg.jp/public/seminar
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