納期と品質へのこだわりを重視し、ネット印刷業界でシェアを拡大――プリントネット株式会社 代表取締役社長 小田原 洋一
プリントネット株式会社
証券コード 7805/JASDAQスタンダード
代表取締役社長 小田原 洋一
Youichi Odawara
きめ細かな応対と製品品質へのこだわりで、ネット印刷通販業界で評価されているプリントネット。常にお客様目線で、改善・前進をしてきたという小田原洋一社長に事業の概要や今後の展望を聞いた。
取材・文/小椋 康志 写真撮影/キミヒロ
ネット印刷通販に着手し10年先を見据えた事業を展開
――これまでの経緯についてお聞かせください。
小田原 当社は1968年に私の父と母が鹿児島県で個人創業した会社です。2004年に私が代表になり、今後の事業展開を考え、県外受注に力を入れることにしました。鹿児島という地域だけで戦っていてもたかが知れていると思ったからです。まずはカタログ印刷通販から始め、2005年に楽天ビジネスとネット印刷通販に着手しました。軌道に乗り始めたのは2007年からです。試行錯誤を繰り返しながらWebサイトを構築し、発送事務の女性を1名雇用して運営したところ、2名の営業マンの売上を超えました。それを機に、ネット印刷通販でやり抜こうと決めました。
やがて関東からのお客様が増え、製造も追いつかなくなったので、関東に工場を建設しようと計画しました。土地を買って、工場を建設して、設備を導入するには資金が必要です。そこで中小企業金融公庫に顧問税理士と一緒に行ったら、所長さんからこう聞かれたのです。「小田原さん、10年先のビジネスを考えていますか?」と。それから2週間くらい必死で考えました。それで辿り着いた答えが、まさに現在当社で行っているビジネスです。お陰様で資金調達に成功し、2008年から東京西工場を操業開始させることができました。
――具体的にはどのようなビジネスモデルなのでしょうか。
小田原 従来型の印刷業者は顧客からの依頼に基づき企画提案を行い、打合せをして制作をします。何度も校正や修正をしてデータを完成させてから、やっと印刷工程に入ります。それに対して当社は、顧客から完全データをいただいてから業務をスタートします。企画・制作工程もやっていると機械が何度も止まりますが、印刷工程のみをやっていれば機械は回りっぱなしです。当社では現在、鹿児島と関東に3つの工場がありますが、年間360日近く稼働しています。このように印刷工程のみに特化することで、高品質の印刷物を低価格で、効率よく提供することができるのです。
ユーザーの声を取り入れ高品質・低価格を実現
――御社の強みを教えてください。
小田原 競合他社に勝つためには、印刷資材を安く仕入れなければなりません。海外の紙は品質が悪いので国内紙のみですが、多くのパートナーと共同で大量に仕入れているため、一般的な価格に比べてかなり安い価格での取引が可能となっています。また、システムの構築では、パートナーや業務受託先に当社と同じシステムを使っていただくことで、すべての業務をスムーズに連携させることができますし、システム代も安く済みます。
一方で、ただ低価格で製品を提供するだけではなく、自社工場や全国にある提携工場からの製造発送業務において、高品質な製品を確実に納品することで顧客との信頼関係の構築に努めています。当社では天候不良等も視野に入れながら、常に前倒しの発送を心掛けています。
――昨年の4月からプリントプロという新サービスを開始したようですが。
小田原 従来の「プリントネット」はサービス重視のサイトです。既に登録件数が10万件を超え、90%以上がリピーターですので、サービスにはご満足いただけていると言えるでしょう。実は、プリントネットはお客様の声をできる限り足を運んで吸い上げてできたサイトなのです。当社ではその声を基に商品開発やシステム開発を進めてきました。例えばお客様がメンバー登録をされても、問合せをしないと解決しないことが多々あります。そのため当社ではコールセンターによるカスタマーサポートを充実させて、きめ細かな応対をしています。また、前回と今回で色合いが違うなどというバラつきがないように、自社の全工場でジャパンカラー認証を取得しています。
しかし一方で、そういうきめ細かなサービスよりも価格を安くして欲しいという声もあります。そこで応対をネットのみで完結させることにより、業界最安水準の価格で提供するサービスが「プリントプロ」なのです。プリントネットと同じく自社工場で印刷していますので、製品はジャパンカラー認証の高品質なものですが、従来とは異なる価格重視の顧客層が開拓できると見込んでいます。
強固な経営基盤を築き着実な成長を目指す
――売上高が順調に伸びていますが、今後の見通しはいかがでしょうか。
小田原 短期の売買で考える投資家の方々は、やはり目先の利益を気にされるようですが、長期で考えている投資家の方々は成長性を重視されるということが機関投資家回りをしてみてわかりました。今期と来期は利益重視ではなく、成長性重視の方針です。成長性を重視するということは売上を伸ばすということですので、広告宣伝や設備投資をしなければなりません。
一時的には利益を圧迫するかもしれませんが、長い目で見たら競合他社に負けないようにシェアを拡大していくことができます。すると、さらなるスケールメリットが生じ、自ずと利益率は上がっていくはずです。上場によって得た資金を有効に活用し、今後の成長のための強固な経営基盤を構築していきたいと思います。
――今年は元号が変わりますが、その影響はありますか。
小田原 元号もそうですし、消費税率が変われば、いろいろな書類が変わってくるため、当社のビジネスにとってはプラスの影響が期待できます。統一地方選挙と参議院選挙もありますので、選挙ポスターの受注も見込めます。さらにその後は東京オリンピックがあります。当社にとってかなり大きな追い風となる状況が続くのではないでしょうか。