クライアントサイドに立脚した採用コンサルティング――株式会社ツナグ・ソリューションズ 代表取締役社長 米田 光宏
株式会社ツナグ・ソリューションズ
証券コード 6551/東証マザーズ
代表取締役社長 米田 光宏
Mitsuhiro Yoneda
アルバイト・パート市場を変えることを目指して創業
── 改めて御社のビジネスの概要についてご説明をお願いします。
米田 私が社会人になったのは1993年。人材マーケットで働きたいと考え、株式会社リクルートフロムエーに入社、アルバイト・パートの採用に関わる仕事に携わってきました。
リクルートは、求人広告を発行するメーカーです。しかし、自社メディアだけでは十分な質と量を確保することができません。さらにアルバイト・パートの採用を成功させるには、面接の導入準備や各々の店での働き方のアピール方法、また一番の課題である定着にも触れる必要があります。そこで私は、メーカーからお客様のそばにいるコンサルティングや業務代行というポジションを選択し、2007年に当社を創業しました。
我々が目指すのは、アルバイト・パートの採用マーケットを変えることです。従来の人材系企業のメディア提供や派遣による人材提供というセルサイドから、クライアントサイドに立脚したソリューションを提供する。創業時の有効求人倍率は、今日と同様に1倍を超えていました。特にアルバイト・パートを中心とした現場人材の不足感は、加速度的に企業の経営課題となってきました。そのような時代的背景が我々の成長を後押ししてくれたのは間違いありません。
ビッグデータを活用し最適化した採用代行が高評価を獲得
──御社の強みはどこですか?
米田 創業当初からスタートさせたRPO(リクルートメント・プロセス・アウトソーシング)が順調に拡大しています。このRPOは、正社員の採用領域ではすでに何社も事業化されていますが、アルバイト・パートの領域でスタートさせたのは日本では当社が初めてです。正社員の場合は本社人事部を代行するので、やりやすい面も多いのですが、アルバイト・パートでは、各々の店舗の店長が採用を担当しますので、国内500店あるチェーン店の採用業務の代行であれば、500人分の店長の採用業務の代行をしなくてはいけません。そこで徹底的な仕組み化とナレッジ、知見を積み重ねてきました。
当社のRPOの競争優位性は、クライアントサイドの目線に立って中立な目線で最も効果のある採用メディアによるベストポートフォリオを組んで発注代行をすることです。このポートフォリオ策定には、創業来のRPO実績をもとに蓄積された、媒体ごとの応募効果ビッグデータ「TSUNA-gram(ツナグラム)」を活用しています。年間18万件の出稿媒体データ、年間65万件超の応募効果データから、各メディアでの期待効果などを算出して、メディア会社との価格交渉を行い、掲載費の最適化を行います。例えば長野県の駅前に居酒屋をオープンさせるとします。ここでどんな求人方法を使って、いくらぐらいかければ何人くらい集まるのかというロジックが「ツナグラム」から確立できる。このデータベースを持っているのが、日本で当社だけなのです。さらに、ネットだけではなく、シニアの方を中心とした電話での応募も当社のコールセンターで受け付け「ツナグラム」に組み込んでいます。さらに、採用代行を通じて面接のアテンドまでデータ化できることで、「ツナグラム」を解析して確度の高いコンサルティングが可能になります。
働き方が多様化する労働市場の社会的要請に応えていく
── 今後の利益成長についてのビジョンをお聞かせください。
米田 現在アルバイトを500名以上雇用されている企業は、約3,000社あると考えています。当社のお客様はまだ280社程度ですので、RPO事業を拡大する営業活動に引き続き注力していきます。直近での課題は、2020年の東京オリンピックまでの採用需給逼迫への対応です。8万人ともいわれるボランティアによって、アルバイト・パート市場から一定期間だけ人がごっそりいなくなる。この危機的状況を乗り越えるよう、お客様をどんどん増やしていきたいと考えています。
2015年から当社はグループ経営という形で、メディア会社、人材派遣会社、定着支援の会社、店舗運営・研修の会社を設立し、採用から教育まで一気通貫のサービスを提供しています。RPOを主軸としてお客様の予算をプロジェクト的に管理していくことで、人が足りない時には人材派遣、やめさせないための定着支援や研修など、周辺・内包サービスの深耕ができる体制が整備されてきました。RPOサービスの水平展開による市場開拓と既存顧客の深耕の2つを軸にした中期的な成長戦略を描いています。日本の労働市場は、労働人口の減少に伴って、週5日1日8時間の労働形態から、多様な働き方、ダイバーシティへとシフトしていきます。当社はその多様な働き方に対して、蓄積した知見とサービスやスキルを競争力として、日本のマクロ環境の長期的な課題、社会的要請に応えていきたいと考えています。
── 株主還元についてはどのようにお考えですか?
米田 マザーズ市場にいる間は、利益を成長のための原資に使うということをやり続けたいと考えています。当社は労働集約型のビジネスモデルです。求人広告は法的な制約を非常に受けますので、労働マーケットに知見のある社員を取り揃えなくてはなりません。さらに価値を担保したまま生産性を上げるためのIT化やAI化の導入も必要です。
将来、次のステージに行った時に、きちんと配当をして株主の皆様への利益還元を実現し、長期的な視点で当社をご支援いただける関係性づくりを目指したいですね。