オンリーワンのプラットフォームを他分野にも活用し、多角展開で業績を拡大中――株式会社オークネット 代表取締役社長 藤崎 清孝
株式会社オークネット
証券コード 3964/東証1部
代表取締役社長 藤崎 清孝
Kiyotaka Fujisaki
信頼性・透明性が高く、公正で公平なBtoBのネットワーク型リアルタイムオークションを多角展開。インターネットが普及し始める10年も前から、当時の最先端だった情報通信技術を駆使して、中古車の電子商取引をスタートさせたのがオークネットだ。同事業で構築したオンリーワンのプラットフォームを他の分野にも活用し、多角展開で業績を拡大中の同社が満を持して再上場した。
取材・文/大西 洋平 写真撮影/和田 佳久
情報通信技術を活用したオークションの先駆者
── 御社グループは情報通信技術を駆使したオークションの先駆者だとうかがっていますが、具体的にどのようなビジネスを展開されているのでしょうか。
藤崎 当社グループは情報流通プラットフォームを通じて、ネットワーク型のリアルタイムオークションを開催しているBtoBの企業です。通常のオークションは、会場に商材が集められて出品者と落札者がその場に出席し、競りが行われます。これに対し、当社グループのオークションはオンライン上で商品情報と競り値のみがやりとりされる仕組みになっており、人やモノが動きません。つまり、通常のオークションよりも効率的で出品企業と落札企業は流通の手間とコストを削減できます。一方で当社グループはオークション参加企業からの手数料や会費などを収益源としています。
その出発点は1985年で、まだインターネットが存在しなかった当時に世界で初めて、電子商取引の「中古車TVオートオークション」を事業化しました。以来、最先端のネットワーク技術を駆使し、独自のオークションを展開して市場を開拓してきました。そして現在は中古車のみならず、中古バイク、花き(切花・鉢物)、中古デジタル機器、ブランド品、中古医療機器などに取扱商材を拡大しています。当社グループのプラットフォームは水平展開が可能で、多方面へ柔軟に進出できるのが強みです。
いずれの商材においても共通しているのは、第一に情報の信頼性が求められており、大前提として公正かつ公平で透明性の高い取引であること。一般的なネットオークションでは出品者から発信された情報しか得られず、落札者はその内容や過去の評価(出品者の評判)で判断するしかありません。商材が高額であるほど落札者は大きなリスクを負うわけです。そこで、当社グループは創業以来「情報の信頼性」を最重視し、会員企業が現物を見なくとも安心して取引できる環境を提供してきました。
たとえば中古車・中古バイクでは、検査専門子会社のAISを設立し業界スタンダードとなった車両検査基準を他に先駆けて定め、全国の検査員が一台一台チェックをしています。中古デジタル機器ではブランコ社と業務提携しデータ消去ソフトを使用するとともに、独自の検査・グレーディングを採用しています。さらにブランド品でも厳しい検品基準を設け、会員企業が安心して取引できる情報を提供しています。
事業構造の改革により成長基盤を強化
──MBO後の状況はどうだったのでしょうか。
藤崎 当社は2000年5月に東証1部市場に上場しましたが、2008年10月にMBO(経営陣による自社の買収)によって非上場化に踏み切りました。MBO前までは中古車TVオートオークションを主とする四輪事業が売上高の78.6%、セグメント利益の89.9%を占め、同業界の成熟化が進んできたことを踏まえて、思い切った構造改革が必要だと考えたからです。MBO後は事業の多角化を推進し、2013年から本格展開を始めた中古PCや中古スマートフォンを扱うデジタルプロダクツ事業が第2の柱として急成長を遂げました。2016年12月期には同事業が売上高の27.4%、セグメント利益の44.4%を占めるようになっています。
構造改革の結果、セグメント利益率は大幅に改善し、高収益体質への転換を達成できました。MBO前の数年間は伸び悩んでいた営業利益も、その後は急拡大を遂げています。特に中古スマートフォンのオークションは海外市場でも積極的に展開しています。「情報の信頼性」が整っていない国々では、当社グループのプラットフォームに対する潜在的ニーズは非常に高いものと推察されます。
── さらに今後については、どのような成長戦略を練っているのでしょうか。
藤崎 柱となる3つの戦略として、①メイン事業を核とした流通事業の拡大、②その他情報流通事業の拡充と新規事業分野の開拓、③グローバル戦略を掲げています。①で推進するのはメイン事業である四輪事業において、成約率の高い良質車の出品比率を高めるため、集積ヤードであるバリューアップセンター(VUC)を軸としたBPO(業務外部委託)サービスの確立・収益化などを図ります。デジタルプロダクツ事業では、海外バイヤーの新規獲得や中国で新規事業も展開。国内でもメーカー認定再生品の流通・補償サービス事業や国内スマートフォン流通を本格展開していく方針です。
②について、その他情報流通事業につきましては、中古バイクで会員別営業の徹底による流通台数の拡大と小売支援サービスの利用促進強化による会員数の獲得を推進。花きでは、物流サービス強化による流通量の拡大を図り取引相場安定化のための新流通形態も確立。 ブランド品では、国内外で流通量拡大に注力します。新規事業の分野においては、メーカーや小売店が抱える余剰在庫の換金などの「リ・マーケティング事業」を計画しています。さらに独自のプラットフォームの他分野への展開も進め、不動産分野において公募テナント物件の仲介事業に進出します。残る③については先程も少し触れた通り、すでに東南アジアなどに進出しておりますが、地域・国のニーズに応じて一層の拡大を図ります。
──株主還元についてはどうですか。
藤崎 まずは成長戦略を遂行して収益の拡大を図り、そのことが株式市場で評価されることが株主の皆様への何よりの還元ではないかと考えております。そのうえで、配当性向30 %を目標に定め、株主の皆様に継続的な配当をお支払いすることを基本方針としております。こうした考えに基づき、当初は未定としていた2017年12月期の1株当たりの年間配当予想を26円に修正しました。