現地に詳しいコンシェルジュがあなたの海外旅行を自在にアレンジ──株式会社旅工房 代表取締役会長兼社長 高山 泰仁
株式会社旅工房
証券コード 6548/東証マザーズ
代表取締役会長兼社長
高山 泰仁 Yasuhito Takayama

ウィンドウズ95が世界を席巻して大いに話題を集めた前年、早くもインターネットに着目した旅行会社が日本国内でも誕生していた。その会社こそ、今年4月に新規上場を果たした旅工房だ。やがてパッケージツアーの取り扱いを開始し、顧客のニーズに応じたカスタマイズによる差別化で高成長を続けている。
取材・文/大西 洋平 写真撮影/和田 佳久
販売をネットに特化しつつ、カスタマイズにこだわる
── まずは、御社のビジネスの概要について簡単にご説明願います。
高山 当社は1994年4月に設立し、1998年からインターネットを通じた格安航空券の販売を開始しました。そして、2003年9月には観光庁長官(旧国土交通大臣)登録旅行業第1683号(第1種)を取得し、パッケージツアーも取り扱うようになりました。インターネットの黎明期の頃から、その可能性にいち早く注目し、それに販路を特化した旅行業を営んできたわけです。
現在、当社グループは3つの事業を中核としています。個人旅行事業では国内の個人のお客様向けに、海外を中心とするパッケージ旅行の企画・販売と航空券やホテルの手配を行っています。法人旅行事業では国内の企業や官公庁、学校法人などに向けて、国内・外への業務渡航や団体旅行の手配を手掛けています。3つ目の国際旅行事業はインバウンド向けで、海外の企業や団体などのお客様に日本国内への業務渡航や団体旅行を手配。加えて、海外拠点を通じて3国間旅行の企画・開発も手掛けています。
── ネットを通じた旅行業と言えば、世界最大手のエクスペディアなどと競合することになります。独自の強みとしては、どんなことが挙げられますか?
高山 設立以来、一貫して心掛けてきたのは、「お客様一人一人の自由な旅づくり」のお手伝いをすることです。当社は販売チャネルをインターネットに限定しながらも、電話でお客様と「対話」することに力を注いでいます。旅行先の情報に精通したトラベル・コンシェルジュがお客様のご要望に応じて、個々にカスタマイズした内容のツアーを提案しております。オンライン予約の利便性を確保しつつ、「人」による柔軟性や温かみを組み合わせた「ハイブリッド戦略」こそ、当社グループの大きな強みです。
さらに、その強みを生かす方面別組織体制を採用することによって、商品企画やお客様対応への柔軟性や専門性を高めています。これは、それぞれの渡航先の方面別部署が旅行の企画から予約、手配までを一貫して行うという体制です。担当する方面を特定することでそのエリアにより精通し、お客様のニーズにきめ細やかにお応えする提案が行えるわけです。そうすることで、競合関係にある既存の店舗型旅行会社やオンライン旅行会社との差別化を図っております。

8つの施策を掲げた成長戦略でさらなる飛躍へ
── これまで、御社グループの業績はどのように推移してきたのでしょうか?
高山 当社グループは売上高、経常利益ともに持続的な拡大を続け、主要旅行事業者の伸び率を上回る成長を達成してきました。けん引してきたのは、収益性の高いアメリカ・欧州方面と、ハワイを中心としたビーチリゾートです。店舗型旅行会社のツアーの大半は定型化しており、オンライン旅行会社の多くは航空券とホテルの手配のみが中心です。しかし、相談しながら内容を決めたいと考えるお客様や、もっと自分好みの内容にカスタマイズすることを希望しているお客様は少なくないはずです。当社は方面別組織体制とトラベル・コンシェルジュを通じ、これらのニーズを満たすサービスを提供することで成長を続けてきました。
上場後初の発表となった2017年3月期決算につきましては、欧州で相次いだテロ事件などを受けて日本国内の海外旅行市場は全体的に伸び悩みましたが、当社グループの売上高は前年同期比で103.8%となっております。また、人件費増加や株式上場準備などに伴ってコストが拡大したものの、営業利益は前年同期比136%に拡大。経常利益も前年同期比132.5%を達成しました。当期純利益も含めて、いずれも過去最高を更新しております。2018年3月期につきましては、欧州や北米方面の回復を取り込むことによって、売上高は前年同期比106.8%、営業利益は同106%を見込んでいます。
── 今後の成長戦略として、どういったことに取り組んでいきますか?
高山 成長戦略として掲げているのは、「ハイブリッド戦略の拡大と深化」です。具体的には、①コア旅行商品の充実、②商品企画の強化、③法人・国際旅行事業、④システム投資、⑤マーケティング戦略、⑥人材の採用・教育・配置、⑦海外展開、⑧多言語化に注力してまいります。このうち、日本発の海外旅行ではすでに123カ国に対応していますが、さらに他の地域へも進出すると同時に、これまで当社が注力してこなかった韓国や台湾といった安・近・短の地域も強化します。法人・国際旅行も、株式の上場で当社に対する信頼性が向上したことも追い風に、積極展開を図る方針です。
インバウンドでは、より収益性の高い団体旅行の取扱いに注力します。当社グループは2016年12月にベトナム現地法人を設立しており、まずはここを拠点に同国の旅行客を獲得してまいります。そして、アジアにおいて需要が大幅に拡大しているのを踏まえて、ベトナムから第三国への旅行というニーズにも応えていきたいと考えております。
──株主還元策については?
高山 当社グループは成長過程にあり、今後も中長期のスパンで持続的に高成長を遂げていくための投資が不可欠です。併せて、経営の安定のために財務基盤をさらに強化する必要もあります。株主の皆様への利益還元は重要課題と位置づけながらも、当面は投資に経営資源を集中し、業績や事業計画などの推移を踏まえながら、利益還元について慎重に検討してまいりたいと考えております。一方、当社グループはB to C企業で、株主の皆様が当社の商品・サービスのお客様となるケースが少なくないと見受けられます。そこで、皆様が当社のサービスを利用したいと思っていただけるような株主優待の導入を前向きに検討中です。