出店希望者の物件探しと初期費用の軽減を支援──G-FACTORY株式会社 代表取締役社長 片平 雅之
G-FACTORY株式会社
証券コード 3474/東証マザーズ
代表取締役社長
片平 雅之 Masayuki Katahira
東証マザーズに上場したG-FACTORYは不動産業に分類されているが、実は飲食店のような店舗型サービス業に対する経営サポート事業と、鰻料理専門店の運営という飲食事業の両輪で業績を伸ばしている。上場後は二つの事業をどのように成長させていくのだろう。片平雅之社長に成長戦略を聞いた。
取材・文/山本 信幸 写真撮影/和田 佳久
店舗運営で経験した「困難」の解消を事業化
――G-FACTORYという会社は、別会社から買い取った鰻料理専門店「名代 宇奈とと」の経営を目的として設立された会社ですね。
片平 2003年5月に4店舗で始まりました。現在は東京と大阪に直営14店舗と、スピンオフ業態第1号店となる「二代目 宇奈まろ」の計15店舗を運営しています。
――なぜ鰻料理専門店とは直接関係のない飲食店や美容室等を対象とした経営サポート事業を始めたのでしょうか。
片平 当初は「名代 宇奈とと」を全国展開するつもりでした。ところがいざ経営してみると、私自身が店に入っているため、いい物件情報を得ても見に行けないことが分かりました。また創業したばかりの会社で信用がなく、物件を貸してもらえないこともありました。小規模なため、店舗開発や財務の専門家を雇うこともできません。その時に感じたのは、同じようなことで困っている経営者が多くいるのではないかということです。
私は以前、飲食店の経営サポート会社に勤めていたこともあり、「名代 宇奈とと」を100店舗、200店舗作るよりも、経営者の困りごとをサポートする事業のほうが確実で社会的な意義もあると考え07年10月、「物件情報サポート」を始めました。出店希望のお客さまは、当社のサービスを利用していただくことで業態開発に専念することができます。
――経営サポート事業に含まれる「物件情報サポート」は店舗物件のサブリースから収益を得ているのですか。
片平 「物件情報サポート」では退店希望のお客さまから店舗物件の賃貸契約を引き継ぎ、出店希望のお客さまとサブリース契約を結びます。店舗の内装・造作・設備の買い取りもして「居抜き」で出店希望者に販売します。サブリース時の礼金等や中古設備の販売代金がフロー(一過性)型の売上となり、毎月の受け取り賃料がストック(継続)型の売上になります。
――どのような物件を手がけているのですか。
片平 店舗物件は原則として需要の多い「好立地の30坪程度の地下1階・1階・2階」に限っています。そのことがビジネスの安定性を高めています。
また当社の強みは、中規模チェーンの顧客基盤を持つことです。中規模チェーンにはのれん分けや社内独立、フランチャイズ支援、店舗移転といったニーズが常にあります。
――不動産オーナー側にはどのようなメリットがあるのでしょう。
片平 コンプライアンス(法令順守)意識が高まっている中で、出店希望者と直接契約を結ぶリスクを避けたいと考える不動産オーナーが増えています。当社とサブリース契約を結ぶことで家賃を確実に回収でき、さまざまなトラブルも回避できます。
内装設備資金調達の手間をリースで解消
――その後「内装設備サポート」と「まるごとサポート」を始めています。
片平 居抜き物件であっても、内装設備の購入や工事が必要になります。その費用を金融機関から調達する場合、多くの労力を割かなければなりません。「内装設備サポート」を利用すると、お客さまは月々一定額のリース料を支払うだけで什器・設備が導入できます。「内装設備サポート」には、お客さまが必要とする設備等を当社が購入してリース会社に販売しお客さまに貸し出す「リースサポート」(購入額と販売額の差額がフロー型の売上となる)と、当社が貸し主となる「GFリース」があります。
「まるごとサポート」はお客さまの出店に伴う仲介手数料・礼金・保証金・内装造作・設備といった費用をパッケージ化したワンストップサービスです。
――15年3月にシンガポールに子会社を設立しています。海外の飲食業者を対象とした事業を展開するのですか。
片平 シンガポールの子会社は国内のお客さまの海外出店サポートが主な目的です。これまで接点のなかった国内の有力な飲食業のお客さまとのリレーションも構築できると考えています。
鰻専門店は深掘りし、インバウンド需要を取り込む
――「名代 宇奈とと」はワンコイン(税込み500円)うな丼が主力商品です。毎年「土用の丑(うし)の日」が近づくとウナギの高騰がニュースになりますが、利益を確保できているのですか。
片平 当社のウナギは、年間での一括購入により安定した価格で仕入れることで、原材料価格の高騰の影響を抑えています。
また東京・上野など観光立地の店舗では、言語変換機能の付いたタブレット型オーダー端末を設置するなど、インバウンド需要を取り込めるような施策を行っています。
――「名代 宇奈とと」「二代目 宇奈まろ」を今後、積極的に増やしていく計画ですか。
片平 現時点で店舗数を大きく増やす計画はありません。できればこの事業も伸ばしていきたいのですが、まずは経営サポート事業に集中します。また店舗拡大が経営サポート事業に影響を与える可能性も否定できないのです。つまり良い物件を自社で獲得してしまっているのではないかと、お客さまに誤解を与えかねないということです。
ただASEANを中心とした海外からも引き合いが来ているのでライセンスについては是々非々で検討しています。
――業績の推移を教えてください。
片平 売上高は15年12 月期は20億9,900万円でした。16年12月期は26億6,700万円を予想しており、内訳は17 億5,100万円が経営サポート事業、9億1,600万円が飲食事業になる見込みです。