3.三事業の役割、主要KPI、2027年5月期計画
・テクノロジーソリューション事業
2026年5月期の売上高は35.79億円、売上総利益は10.34億円、売上総利益率は28.9%だった。生成AIを中心に案件が拡大し、売上高と売上総利益はともに前期比27%台で増えた。大手SIer向けの生成AIアセット開発を背景としたAIツール開発、次世代キャッシュレス決済プラットフォーム、既存顧客の体制拡大が牽引した。ServiceNowでは大規模案件が一巡したが、新規案件を獲得している。
企業価値形成における役割は、売上成長と高い売上総利益率の両立である。主要KPIは、生成AI売上、ServiceNow売上、新規案件数、既存顧客の体制人数、売上総利益率である。AI売上は2025年5月期1.18億円から2026年5月期4.16億円へ増え、ServiceNow売上は7.40億円から8.01億円へ増加した。生成AI案件が一社の特定プロジェクトに偏らず、複数顧客と複数用途へ広がるかが重要である。
2027年5月期計画は売上高41.13億円、売上総利益11.77億円である。売上高14.9%増、売上総利益13.8%増を見込み、売上総利益率は28.6%を計画する。会社計画には生成AI案件の拡大が織り込まれている。上振れ要因は、生成AIアセットの横展開、ServiceNowの大型案件、NTQ Solutionとの連携による供給力拡大である。下振れ要因は、大口顧客の開発計画変更、AI案件の終了、BP単価上昇、ServiceNow案件の谷間である。次回決算では、AI売上の前年同期比、ServiceNow売上、売上総利益率28%台の維持を確認する。
・ビジネスソリューション事業
2026年5月期の売上高は34.60億円、売上総利益は6.18億円、売上総利益率は17.9%だった。金融機関向け案件とU-Wayは堅調だったが、顧客都合による案件縮小、一部案件の長期化、ERP事業の人材育成とスキル習得の費用先行により、売上総利益は前期比11.1%減少した。前回期待した採算回復は実現しなかった。
企業価値形成における役割は、既存顧客との長期取引、運用保守、標準化サービスによる収益基盤の形成である。主要KPIは、ERP受注高、ERP売上、有資格者数、U-Way売上、金融向け案件の体制人数、不採算案件数、売上総利益率である。ERPは案件獲得までの営業期間が長く、資格取得と体制構築が先行するため、売上が立ち上がらない期間は利益を圧迫する。会社は2027年5月期にERP組織を変更し、オラクルとのアライアンスを活用して案件獲得を進める。
2027年5月期計画は売上高42.42億円、売上総利益9.75億円である。売上高22.6%増、売上総利益57.9%増、売上総利益率23.0%を見込む。全社の売上総利益増加額5.82億円のうち、約3.57億円をこの事業が担う計画であり、会社計画の達成を左右する。ERP大型案件、U-Way Liteの複数顧客展開、低収益案件からの撤退が進めば上振れが期待できる。一方、ERP受注の再遅延、立ち上げ人員の低稼働、金融案件の縮小、案件長期化が下振れ要因となる。次回決算では売上総利益率が20%台へ戻るか、ERPの受注と売上が具体的に増えるかを最優先で確認する。
・コンサルティング事業
2026年5月期の売上高は7.35億円、売上総利益は2.51億円、売上総利益率は34.2%だった。売上高は前期比0.6%減ったが、売上総利益は26.5%増加した。SES案件からエンドユーザーとの直接取引へ軸足を移し、医療、建設、製造業向けの上流案件を獲得したことが寄与した。
企業価値形成における役割は、売上規模そのものより、顧客課題の発見、直接取引の拡大、他事業への案件創出である。主要KPIは、プライム売上高、プライム売上比率、案件単価、コンサルティング案件から開発案件へつながった売上、売上総利益率である。プライム売上高は2024年5月期16.32億円から2026年5月期27.17億円へ増え、プライム売上比率は24.5%から35.0%へ上昇した。
2027年5月期計画は売上高9.21億円、売上総利益3.33億円、売上総利益率36.1%である。上流工程と直接取引の増加を前提とする。上振れ要因は、コンサルティング案件がテクノロジーとビジネスの開発案件へ広がることである。下振れ要因は、高単価人材の不足、案件の小規模化、営業期間の長期化である。次回決算では、プライム売上比率、売上総利益率35%前後の維持、他事業への案件展開を確認する。
4.成長戦略、供給力、M&A
会社は中期経営計画の基本方針として、エンパワーメントの促進とイノベーションの醸成を掲げる。五つの戦略は、事業基盤の強化、新たな顧客獲得による事業規模拡大、ソリューションの拡充による市場拡大、新たな需要創出に向けた提案力の強化、社会課題を起点としたビジネスの創出である。2026年5月期は、オラクルとの協業、NTQ Solutionとの連携、新規顧客への提案、生成AI案件、全社横断の提案体制で進展があった。一方、高度プロフェッショナル人材の採用、ERP受注、協業サービスの事業化には課題が残った。
人材面では、採用環境の悪化を受け、社内人材とビジネスパートナー(BP)を組み合わせて成長を支えている。CNS単体のエンジニア数は2025年5月期242人から2026年5月期238人へ減少した一方、BPの月間平均稼働人数は369人から396人へ増えた。BP活用は案件拡大に柔軟に対応できる反面、単価上昇、品質管理、知見の社内蓄積という課題を伴う。売上成長がBP人数の増加だけに依存すると利益率改善は難しいため、プライム案件、強化ビジネス、生成AIの社内活用による一人当たり売上総利益の改善が必要になる。
2027年5月期は、生成AIの全社活用による生産性向上、低収益案件から強化ビジネスへの人材シフト、ERP組織の変更、全社バリューチェーンの強化、SIで得た知見のサービス化を進める。生成AIの全社活用は、顧客向け売上だけでなく、開発、テスト、文書作成、提案準備などの内部生産性に効く可能性がある。会社計画の営業利益率10.4%を達成するには、売上構成の改善と内部生産性の両方が必要である。
M&Aは、余剰現金を企業価値へ転換する重要な手段となる。会社はM&A関連で20億円の投資枠を示した。対象として考えやすいのは、生成AI、Oracle ERP、ServiceNow、上流コンサルティングの人材と顧客基盤を持つ企業である。M&Aによって不足人材を確保し、既存顧客へ新たなサービスを提供できれば、採用だけに依存せず成長速度を高められる。反面、現在の事業規模に対して20億円は大きく、買収価格、のれん、統合、主要人材の離職がリスクとなる。会社には、対象領域、投資回収基準、想定ROIC、統合責任者を説明することが求められる。現金を使うことではなく、資本コストを上回る収益を得ることが株主価値につながる。
5.財務、キャッシュフロー、ROIC、資本配分
2026年5月期末の総資産は58.57億円、自己資本は43.32億円、自己資本比率は74.0%である。オフィス移転に伴い有形固定資産が増えたが、財務安全性は高い。現金及び預金は37.87億円であり、借入金はない。リース債務は流動分0.01億円、固定分0.04億円にとどまる。ネットキャッシュは借入金控除ベースで37.87億円、リース債務を含めた保守ベースで37.82億円である。2025年5月期末の保守ベース約36.59億円から約1.23億円増えた。
営業キャッシュフローは5.80億円、投資キャッシュフローはマイナス2.99億円、フリーキャッシュフローは2.80億円だった。本社移転に伴う有形固定資産取得4.05億円を行いながらフリーキャッシュフローを確保し、現金同等物は増加した。過去の同社は営業キャッシュフローを継続的に生み、設備投資負担も比較的小さかった。2026年5月期は移転投資で投資キャッシュフローの支出が増えたが、事業のキャッシュ創出力は維持された。
ROICは14.2%と試算する。分子は2026年5月期の親会社株主に帰属する当期純利益5.91億円、分母は期首と期末の自己資本と長期リース債務を合計した投下資本の平均約41.50億円である。純利益には税効果会計の見直しによる一時的な増益が含まれるため、14.2%をそのまま持続可能な水準とみなすべきではない。しかし、営業利益率の改善と資本回転を考慮すると、前年の約11%から資本効率が改善した方向は確認できる。2027年5月期は純利益6.79億円を計画しており、自己資本の増加を考慮してもROICは高い水準を維持する可能性がある。
配当は2026年5月期に普通配当55円と特別配当6円の合計61円となり、2027年5月期は70円を予想する。会社は配当性向30%以上を目安とする累進配当を続ける。予想配当利回りは4.1%であり、株価の下値を支える。もっとも、年間6億円前後の利益と37億円を超えるネットキャッシュを持つ企業として、配当だけでは資本効率の改善速度は遅い。成長投資、M&A、配当、自己株取得の優先順位と最低現金保有水準を次期中期経営計画で示すことが望ましい。
6.株主構成と株式流動性
株主構成は、創業者、経営陣、従業員持株会、取引先による安定保有が多い。FactSet データによれば、把握可能な株主の保有比率は66.4%、浮動株比率は33.76%である。元会長(現取締役)の保有比率は34.58%、社長は6.13%、従業員持株会は4.44%である。NTTデータグループやコープさっぽろも株主であり、取引関係と資本関係が重なる。
安定株主が多いことは、短期的な株価変動に左右されず、人的資本や新規事業へ投資しやすい点でプラスである。経営陣と株主の利害も一定程度一致する。一方、株式市場で売買可能な株式が少なく、一日の出来高も小さいため、機関投資家は大きな金額を投資しにくい。機関投資家保有は限定的であり、利益が伸びても新たな買い手が増えにくい。流動性の低さはPERとPBRの割引要因となっている。
会社は株主構成の最適化と流動性向上を検討する方針を示した。具体策としては、株式分割、IR対象投資家の拡大、主要株主による一部売出しなどが考えられる。株式分割だけで企業価値は変わらないが、最低投資金額を下げ、個人投資家の参加を増やす効果は期待できる。大株主の売出しは短期的に需給負担となる可能性がある一方、浮動株を増やし、長期的には機関投資家が参加しやすい市場をつくる。会社が流動性を経営課題として認識したこと自体は、評価見直しに向けた前進である。
