本格的でヘルシーな中華料理をお手頃に堪能できる東海の人気店――株式会社浜木綿 代表取締役社長 林 永芳
株式会社浜木綿
証券コード 7682/JASDAQスタンダード、名証2部
代表取締役社長 林 永芳
Nagayoshi Hayashi
気軽に入れる価格設定で本格的なコース料理を堪能できることから、地盤の東海エリアを中心にファミリー層から高い支持を獲得しているのが中華料理チェーンの浜木綿だ。上場を機に進出エリアの拡大を進めている林永芳社長に、店舗の魅力と今後の戦略を聞いた。
取材・文/大西 洋平 写真撮影/和田 佳久
家族で楽しむ健康志向の中華をリーズナブルに提供
―― 御社が手掛けているビジネスの概要についてご説明願います。
林 当社は中華料理店のチェーンを直営で展開しており、その内訳は2019年11月時点で「浜木綿」ブランドが30店舗、全席個室をコンセプトとした「四季亭」ブランドが3店舗、野菜と和食材を豊富に用いた新業態の「桃李蹊」ブランドが8店舗となっています。
創業は1967年のことで、名古屋市瑞穂区に中国料理「はまゆう(現在の浜木綿新瑞橋店)」を個人経営にて開業いたしました。以来、名古屋をはじめとする愛知県内のほか、三重、岐阜において、特定のエリアに集中出店するドミナント戦略で店舗網を広げてきています。あわせて、東京、神奈川、大阪などへの進出も図ってきました。
浜木綿ブランドにおいては、“四世同堂”、“癒食同源”、“ベジフルチャイナ”という3つのキーワードにこだわっています。“四世同堂”とは四世代の家族が一堂に会するという意味で、年齢や性別を問わず誰もが楽しめる店づくりを心掛けています。そして、癒しと食事はどちらも健康維持に不可欠であるという“癒食同源”の考えのもと、美味しいだけでなく体も喜ぶようなメニューを揃えています。さらに、癒食同源にも通ずるのが“ベジフルチャイナ”です。中華料理はこってりしていると思われがちですが、野菜が豊富で栄養バランスにも優れています。そのうえ糖質の控えめな料理が多く、実は非常にヘルシーなのです。ベジフルチャイナという言葉を商標登録しているように、当社では一般的な中華料理よりもさらに野菜の量を増やしているのが特長です。
セントラルキッチンに依存せずプロが料理を仕上げる
―― 他の中華料理店チェーンとの差別化ポイントはどこにありますか?
林 中華料理店のチェーンと言えば、いくつかのブランドを思い浮かべるかもしれません。しかしながら、当社のビジネスモデルは他社とは一線を画しており、ほぼ唯一の存在といっても過言ではないでしょう。まず、庶民的な中華料理店には一人や二人といった少人数で訪れるケースが多いのに対し、浜木綿は家族連れをメインターゲットとしています。
一皿を何人かで分け合いながら、少しずつたくさんの種類を召し上がっていただけるようなメニューを用意しており、少人数向けの中華料理店とはコンセプトが異なっているのです。現に、当社の店舗のいくつかが「餃子の王将」と至近距離に立地していますが、共存できているのがそのことを象徴しているでしょう。一方で、本格的な内容のコースメニューを一人当たり2,000円前後というリーズナブルな価格で味わえるのも浜木綿の特長です。
もともと日本の中華料理店は、二極化する傾向を示してきました。一つは先程も触れた少人数向けの庶民的な店で、低料金の単品料理を中心とした品揃えとなっています。これに対し、コース料理を軸としているのが高級中華料理店です。誰しもたまには味わいたいと思うでしょうが、最低でも一人当たり5,000円程度の予算が必要で、なかなか気軽には手を出せないのが実情です。そこで、浜木綿では価格を抑えながらも本格的な内容のコース料理をご提供しています。
―― どうして低価格で本格メニューが提供できるのですか?
林 浜木綿は15万人の商圏と目される住宅街の幹線道路沿いに的を絞って出店してきました。休日により多くの集客を見込めるため、平日の分を十分にカバーし、客単価2,000円を維持できるからです。加えて、当社は1989年からいち早くセントラルキッチンを開設し、可能な限り集中調理を図ってコストの削減と店舗の負担軽減を進めてきました。
ただ、すべての工程をセントラルキッチンで作業し、各店舗で加熱して提供するだけの方式では一般的なチェーン店と大差のない味になってしまいます。やはり、最終的な仕上げは各店舗に配したプロの調理師が手掛ける必要があります。セントラルキッチンで合理化を図りながらも、プロの仕上げにこだわることによって、よりリーズナブルな価格で本格的な中華料理を提供しているのです。
たとえば、シューマイのタネを皮で包んだり、中華パンの生地を成形したりする作業はセントラルキッチンで済ませれば、各店舗の負担はかなり軽減されコストも抑えられます。しかし、加工された材料を炒めたり、蒸したりする作業は店舗においてプロの調理師が担ったほうが美味しくなるのは当然のことでしょう。
進出エリアの拡大を図り関西圏・関東圏で進出を加速
―― 今回の上場の目的と今後の成長戦略についてお聞かせください。
林 進出エリアの拡大を図る方針を掲げ、東海圏から関西圏・関東圏を視野に入れ、出店を加速させたいと考えています。今回のIPOには、この戦略を進めていくうえで必要となる資金を調達する目的もありました。店舗網を拡大していくうえでは、より大規模なセントラルキッチンも必要となってきます。そこで、当社はIPOに関連して第三者割当増資も実施し、調達した資金で用地を取得して新たなセントラルキッチン建設の計画を進めております。
さらに先を見据えれば、これまで当社が視野から外してきた10万人程度の商圏においても、浜木綿とは別の業態でマーケットの開拓を図っていきたいと思っています。
このように当社は拡大戦略の途上にありますので、目下は収益の多くを再投資に回す方針です。一方で株主の皆様への還元策として、株主優待制度の導入を検討しております。配当につきましても、配当性向30%という目標値にできるだけ近づけられるように努めてまいります。