企業を内側と外側から強くする独自のソリューションを提供──株式会社オロ代表取締役社長 川田 篤
株式会社オロ
証券コード 3983/東証マザーズ
代表取締役社長
川田 篤 Atsushi Kawata

企業の基幹業務システムをパッケージとして提供するビジネスソリューション事業と、ウェブ制作などを通じて大企業のコミュニケーションを支援するコミュニケーションデザイン事業の2本柱で1999年の創業以来19年連続増収・黒字を達成。「世界に通ずる一流企業」を目標に据える川田篤社長に成長戦略を聞いた。
取材・文/山本 信幸 写真撮影/和田 佳久
クラウドを通じて柔軟な基幹業務システムを提供
―― 事業領域を「クラウド型統合業務システム ZAC Enterprise(ザック エンタープライズ)」の提供と「デジタルマーケティング支援」と定めていますが、どのような事業なのでしょうか。
川田 前者をビジネスソリューション事業、後者をコミュニケーションデザイン事業と呼んでいます。ビジネスソリューション事業は「企業の内側を強くする仕事」と位置づけ、業務効率化、損益管理、経営上重要な数字の見える化を可能にする統合業務ソリューションを提供しています。主力商品は統合型基幹業務パッケージ(ERP)の「ZAC Enterprise」で、販売管理、経費管理、購買管理、勤怠管理といった各管理業務に必要な複数のシステムをクラウドで一元管理することで、内側の仕事の効率を飛躍的に高めたり、いままで手が回らなかった事業の収支管理を見える化します。クラウドを通じて提供するため、お客さま側のサーバーは不要で、メンテナンスの手間もかかりません。また企業の成長に合わせて、システムを必要な分だけ使っていただくことができる点も好評です。スタートアップ企業やベンチャー企業のような小規模な企業さまには低価格の「Reforma(レフォルマ)PSA」を提供しています。

―― 企業の基幹業務に関わるシステムは、自社運用にこだわる企業が多いのではないですか。
川田 自社運用にこだわる理由は大きく2つあります。まずセキュリティのリスクを回避するため。大切な情報資産を扱うため、外部に委託したくないということです。もう一つは独自性で、各企業が持つ独自性を基幹業務システムにも織り込みたいという要望です。
クラウドが一般的に利用されるようになって5、6年が経過し、セキュリティが担保されていることが広く認識されるようになりました。そのため厳重なセキュリティを求める大手金融機関でさえ、クラウドにシフトしている時代です。一般企業においても社内にサーバーを置くよりもリスク管理が徹底でき、アクセスコントロールの面から見ても優れていることが実証されつつあります。
独自性についても真摯に対応しています。お客さまから「独自機能を用いて使いたい」というお言葉をいただいた時、「パッケージ(汎用)ソフトだからできません」とは言わず、お客さまに必要な機能であれば実現する方針です。結果としてソフトが磨き上げられ、機能群が多種多様になり、その機能群を組み合わせることによって自社で開発しなくても独自性を実現できる。それなら「作る」よりも「使う」方が安いという認識が出来上がりつつあります。すでに400社(稼働ライセンス数10万以上)を超えるお客さまに使っていただいていますが、その多くのお客さまに磨かれたソフトに成長していることが強みにもなっています。
―― ERPパッケージライセンス市場の成長は2015年1,111億円から16年は1,200億円(矢野経済研究所調べ)という予測ですが……。
川田 市場としては堅調な成長を維持しています。また、費用の低減とデータの安全性の観点から、多くの企業で社内システムをクラウドにシフトする動きが活発になってきており、これが追い風となっています。さらに、私たちのターゲットとしてリストアップしている中堅・中小企業は日本全国で4万5,000社もあることを考えると、今後もシェア拡大の余地は非常に大きいと考えています。
大手企業を顧客に持ちウェブやSNSを開発運用
――コミュニケーションデザイン事業は「企業の外側を強くする仕事」ですね。
川田 簡単に言うとウェブやウェブシステムの構築・運用が主な仕事で、大半が大企業のお客さまです。インターネットの利用は大きく変化しています。企業のプロモーション、広報・IR活動は、さまざまなデジタル端末や、ウェブサイトやSNSなどの仕組みを使ったコミュニケーションへシフトしていて、大企業であっても最先端のデジタルを本業にどう活かしていくのかという点に苦労しています。その苦労を解決するパートナーとして、私たちは設計・実装・運用支援までのワンストップサービスを提供しています。
―― 中国やASEANの開発拠点、営業拠点の拡大も進めています。
川田 オフショアとしての拠点づくり以外にも、日本企業の海外進出に伴い、海外の顧客に対する企業のブランディングやコミュニケーションが重視されていることから、中国とASEANで海外拠点作りをすすめています。特にコミュニケーションの仕事は、現地の人の感性や文化を理解している現地スタッフによるより良いサービス提供が重要と考えているからです。まずは日系企業のお手伝いから始め、当社の創業以来の目標である「世界に通ずる一流企業」を実現するため、ビジネスソリューション事業やチャンスがあれば新規事業も海外展開していくつもりです。
20年連続増収・黒字を目標に売上高と営業利益を重視
―― ビジネスソリューション事業とコミュニケーションデザイン事業の売上比率は47対53でした。この比率は今後、変わっていくのでしょうか。
川田 どちらかを縮小していくつもりはなく、むしろ「どちらも成長させていく」と強く思っています。限界利益の高いビジネスソリューション事業が結果として業績の柱になるでしょうが、コミュニケーションデザイン事業は、大企業のお客さまからの受託が多く、高いクオリティ、高い技術スキルを求められます。それが社員のやりがいとなり、また新たなソリューションやサービスを生み出す原動力になっているので、積極的に伸ばしていきたいと考えています。