マーケティングツールとしてプリペイドカードを売り込む──株式会社バリューデザイン 代表取締役社長 尾上 徹
株式会社バリューデザイン
証券コード 3960/東証マザーズ
代表取締役社長
尾上 徹 Toru Onoe
よく利用する店で「お得ですよ」とプリペイドカードを勧められることが増えた。実はその多くにバリューデザインが関わっている。導入企業にも店の利用者にもメリットのあるプリペイドカードには大きな可能性があるという尾上徹社長に、カードの仕組みと事業の現状、アジアを見据えた成長戦略を聞いた。
取材・文/山本 信幸 写真撮影/和田 佳久
プリペイドカードは強力な販促ツール
――事業内容としてサーバー管理型プリペイドカードシステム「バリューカードASPサービス」の提供による、企業のブランディング、プロモーション支援事業とあります。
尾上 サーバー管理型とは、プリペイドカードのお金の価値をカード本体ではなく、サーバーで管理する方式です。バリューカードASPサービスは、自社ブランドで発行するリチャージ式(繰り返し入金できる)プリペイドカード、商品券に代わる使い切り型ギフトカード、ポイントカードなどを一つのシステムで発行・管理する仕組みです。当社はバリューカードを用いた集客支援・プロモーション企画などの販売促進支援を行っています。
――事業はハウスプリペイドカード事業、ブランドプリペイドカード事業で構成されています。ハウスプリペイドカード事業とはどのような事業ですか。
尾上 ハウスプリペイドカードはお店(導入企業)が独自に発行する電子マネーで「マーケティングツール」や「販売促進ツール」になります。
ハウスプリペイドカードの利用は自社の店舗に限られますが、チャージや利用時に特典をつければ、お客さまに「お得感」を与えることができます。
例えばハンバーガーショップがハウスプリペイドカードをバーガー類とドリンク類に次ぐ「商品」と位置づけて、顧客が300円のハンバーガーを注文する時、「このカードに1,000円入金すると100円のおまけがつく」という特典を説明します。カードを手にしたお客さまが3度来店したころで残高を確認するとまだ200円あるので4度目も来ようと思うはずです。現金であれば3度の来店のところ、カードなら4度の来店が期待できる顧客囲い込みのマーケティングツールというわけです。さらに先にお客さまが入金するため、お店にはキャッシュがたまるという大きな特徴があります。
――マーケティングツールとしてはポイントカードが普及しています。
尾上 ポイントカードとは大きな違いがあります。ポイントカードの目的は来店したお客さまをつなぎ止めることにあり、発行したポイント分はお店側が引き当てをしなければなりません。
ポイントカードから当社のプリペイドカードに変更する例が増えているのですが、その理由は先ほどお話ししたようにカードが「商品」となるため、販売先は来店されたお客さまに限らず、法人向けに販売したり、ポイントの交換商品として採用してもらうこともできる。カードという形にすることで販売チャンネルが広がります。
国内首位の強みを生かし新規大口顧客を開拓
――ブランドプリペイドカード事業の特徴を教えてください。
尾上 ブランドプリペイドカード事業は、すでに(クレジットカード決済用に)普及している国際ブランド(VISAやMasterCard)のインフラを使って決済や資金移動を行うビジネスです。当社は残高管理のシステムを構築し、クレジットカード会社に提供しています。
ブランドプリペイドカードはクレジットカードと違い審査や銀行口座の確認などの手続きが不要で、子どもでも持つことができます。手軽に作ることができて、国際ブランド加盟店なら、クレジットカードと同じように世界中で使えるため、今後は決済手段として普及していくでしょう。また導入企業は自社以外の店舗で入金・利用が行われた時も手数料収入が見込めます。
――バリューカード全体ではどれくらい普及しているのでしょうか。
尾上 バリューカードの導入店舗数は、2016年11 月時点で海外を含め累計5万店舗を超えて、前年同月時点比118%の5万181店舗となりました。大型飲食チェーンや大規模スーパーマーケットなどでの導入が進んでいます。
ハウスプリペイドカード事業の取扱高(入金額)は15年6月期597億円、16年6月期723億円と増加しています。16年9月度は月間取扱高が105億4,200万円(前年同月比113.
3%)となりました。国内のハウスプリペイドカードでは推計40%を超えるトップシェアです。
ブランドプリペイドカード事業はカード発行会社3社へサービスを提供し、導入3期目の16年3月期の取扱高は345億円です。16年9月度は42億2,500万円(前年同月比138.5%)でした。
蓄積したノウハウをアジア展開に利用
――収益源はどこにあるのですか。
尾上 売上高は初期売上と月額売上に分けられます。初期売上はシステム導入時の初期設定料金や端末機器、カードの販売料金など。月額売上はプリペイドカード取扱高の一部から徴収するシステム利用料などです。
――今後はどのような分野の成長が期待できますか。
尾上 大きな成長が期待できるのはブランドプリペイドカード事業です。当社の顧客がブランドプリペイドカードへ移行する動きも出ています。米国では税金の還付の受け皿などに利用されています。銀行ATMにも対応しているので、日本でも給付金や税金の還付先等に使われるようになれば伸びていくでしょう。
当社は06年7月に創業して以来、こつこつと積み上げていくビジネスを続けて国内ナンバーワンになりました。国内ではさらなる拡大を図りつつ、蓄積したノウハウを使ってアジア(すでに中国、韓国、タイ、フィリピン、シンガポールに進出)での売上げを伸ばしていく計画で、その先にはインドやアフリカという巨大マーケットが控えています。